ボディパネルは基本的に従来と共通。内装とメカニズムは全面刷新
新型N-ONEは、新たなモデルチェンジスタイルで注目を集めている。厳しさを増した歩行者保護要件に対応するため、中央部分の盛り上がりが増したフロントフードを新採用。しかし、それ以外のボディ外板はすべて従来と共通。その一方でボディ骨格やパワートレイン、そしてシャシー/サスペンション、安全装備を最新にアップデートした。8年ぶりにモデルチェンジした2nd・N-ONEだが、すでに見慣れた印象が強い。
改良版ホンダN-BOXが市場デビュー。N-BOXの世界観の幅を広げるコーディネートスタイルを新たに設定
実際そのエクステリアデザインは代わり映えしないというよりも、「ウリふたつ」。開発初期には実寸大クレイ(粘土)モデルまで制作して新たなデザインを模索したという。だが、それは「当初目指した[Nワンらしさ]を表現していない」と判断されたという。「結局スタイルは[変えない]のではなく[変える必要がない]と考えた」と開発者は説明してくれた。
実車を前にすると、バンパーなどの樹脂部分やライト類のグラフィックが変更されて、遠目にも新しさが感じられるのが興味深い。
これまで「半開き」のように感じたフードとフロントグリル間のエアインテーク造形は、リファインによってきちんと閉じた状態に見えるようになった。ヘッドライトユニットは、外周部分のリングがデイライトとして機能する一方で、ウインカー/ハザードランプ使用時は、それが消灯して内周リングが点滅する新意匠。さらに入念にデザインされたことを連想させるフルLED式リアランプなどが、従来型とは一線を画した雰囲気を演出している。
インテリアは全面刷新。新造形のダッシュボードを中心としてフルモデルチェンジを実感する。
人を中心とした「ミニマル=最小限」を意識したというデザインは、従来型と比べて、とくにダッシュボード下部のボリューム感が抑えられた。乗っていて圧迫感が少ない。フロントシートをセパレート型に変更し、左右シート間に小物入れやドリンクホルダーをレイアウトしたことも、新たなデザインが実現できたポイントという。
ターボ+6速MTはゴキゲン! 速い、痛快、足がいい_
試乗は、軽自動車初のターボエンジン+6速MTの設定が話題のRSからスタート。「従来型でも意外なほど要望が多かった」という事情から、S660用ミッションをリファインして搭載に至った。現在では稀有なMTを採用するRSの走りの実力は、あらゆる点で期待を超えるものだった。
「圧迫感の少なさ」や「『N360』がそうであった」ということから採用されたという「インパネシフト」の使い勝手は、やや脇が開く感覚はあるものの良好。操作量は少なくないが、各ギアがセレクトされた感触は明確。
意外に「踏みごたえ」があるクラッチと相まって「MTをしっかり操っている感覚」を味わわせてくれる。多少注意深く操作すれば、アイドリング状態からアクセルペダルに触れずにスタートできる力強さも好印象だ。
エンジンスペックは64ps/104Nm。車両重量はS660と同等の840kg。したがって、加速力は同レベルというのが理屈。だが、実際にアクセルを踏み込むと「こちらのほうが速いかも」と感じた。さしたる加速力を期待させないルックスゆえの「役得」というところだろうか。
思いのほか高いボディの剛性感や、しなやかさが期待以上のフットワークの仕上がりには驚いた。このあたりは「中身」が刷新された効果がしっかり発揮されている。
RSから、自然吸気エンジン(58ps/65Nm)にCVTを組み合わせたモデルへと乗り換えると、加速力が見劣りするのは当然。とはいえ、街乗りシーンでは動きの敏捷さに大きなハンディキャップは感じなかった。首都高速に乗り込むまでは、「あまり差がないかな……」と思えたほどだ。
N-ONEは「10年通用するクルマ]を目標に開発。Nのイメージリーダー
N-ONEは、いわゆる「廉価グレード」が廃止された関係もあり、スタート価格は約160万円と「軽自動車としては割高感が漂う」という指摘はあるだろう。メーカー自身も「N-WGNやN-BOXとの競合を避けるためもあり、あえてやや高めの設定とした」と認めている。
Nシリーズの中にあって、パーソナル性、嗜好性を重視したのがN-ONEだ。いわばNシリーズのイメージリーダー的なキャラクターである。外板デザインを1stモデル(さらにはN360)から受け継ぎつつ、「10年は通用する仕上がりを目指した」という開発陣の言葉に、その狙いどころが集約されている。
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