トラック業界で「2024年問題」が大きな社会問題となっている中、清掃業務に携わる業界でも少子高齢化や労働力の不足などの課題に直面している。そうした課題解決に向けて、街路や施設内などで静かな走行音と清掃作動音で自動走行する車両が登場した。
完全自動での自動運転EV
ZMPが最新型の自動運転バス「RoboCar Mini EV Bus」を発表。独自OSと独自クラウド管理システムを採用、価格は5台まとめてオーダーで2億円~
路面清掃車の国内シェア約9割を誇る豊和工場(本社:愛知県清須市)と、自動運転等の先進技術開発企業のZMP(本社:東京都文京区)が共同開発プロジェクトを発表した。
ZMPが御茶ノ水女子大学で開催した自社イベント「ZMPワールド2023」で、同学内の私有地を無人自動走行してみせた。
車両スペックは、全長2,570mm×全幅1,680mm×全高2,270mm、車両重量は1,860kg。
1回の走行中に清掃できる幅は、1,680mmで清掃能力は1時間あたり5,040平米。
動力は電動で、リチウムイオン・バッテリーを搭載する。試作車のため電池容量や満充電での航続距離や航続時間は未公開とした。
量産モデルでの想定としては、使用者が計画した経路を自動で走行して清掃。その際、清掃するエリアを指示して、いわゆる”塗つぶし清掃”を可能とする。
自動運転のために装着するのは、自社周辺の状況を把握する3D-LIDAR、衛星測位のためのGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)関連機器、またカメラ等を併用するセンサーフュージョン方式を採用する。
これにより、建物や塀などの壁際や、道路の路肩へ追従し、また障害物や人・自動車などとの接触を回避する。
不具合が発生した場合、自動走行を停止し、使用者へ通知する機能を搭載する仕様を想定している。
豊和工業の関係者によると、日本国内ではこれまで、屋外での自動運転清掃車両が社会実装された事例はないという。
IZACのOEM供給へ
EVロボスイーパーには、ZMPが独自開発した自動運転OS(オペレーティング・システム)の「IZAC(アイザック)」を搭載している。
IZACは、車両やロボットの走行・移動における「認知」「判断」「操作」を担い、自動運転EVバスのような人が乗車する公共的な利用シーンから、EVロボスイーパーのような社会における”縁の下の力持ち”としての活動シーンまで、幅広く対応する。
「ZMPワールド2023」では、IZACをOEM(他社向け)に供給することも合わせて発表した。
ZMPの自動運転開発者によれば、EVロボスイーパー等のZMP自社開発製品ではIZAC専用で設計されている。
自動運転開発OSといえば、オープンソースの「AUTOWARE」があり、学術的な研究開発を中心に普及している。
ZMPとしては、仮に顧客がAUTOWAREを使いたいとの要望があれば対応は可能だ。
ただ、実際のところ、業務用での自動運転の場合、ZMPが独自開発し信頼性を高めてきているIZACを使用する。現在、社会実証、社会実装、また量産しているZMPの製品はすべてIZACを使用している。
自動運転トーイングトラクターも登場
このほか、空港などでの運搬用自動牽引車「Carrio Tractor 25T」も展示された。
全長3,175mm×全幅1,596mm×全高2,185mmとコンパクトな設計。
車両重量は4,000kgで牽引能力は25トン。最高速度は牽引している状態で15km/h、牽引していない状態では25km/hとした。コントロールセンターで遠隔監視する。
EVロボスイーパーと同じく、センサーフュージョンによって自車位置を推定して走行する。周辺のインフラ環境を変えることなく社会実装が可能な点がポイントだ。
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