日本では長きにわたり、輸入車といえばドイツ車という感じで一強状態が続いているが、1980年代以降、日本は欧州車ブームとなり、いろいろな国のクルマが人気だった。
その国々に有名なチューナーが存在していた。レースで名を馳せたブランドもあれば、市販車で有名になったブランドもある。
恩恵ありまくり…でも意外なデメリットも クルマは軽いほうがいい圧倒的な理由
そのような欧州チューナーが手掛けたモデルは、人と違ったモデルが欲しいという要求を満たしてくれ、いろいろ日本でも手にすることができた。
コンプリートカーやアフターのチューニングだけでなく、自動車メーカーがそのチューナーの名を冠したモデルを販売するケースもあり、おおいに盛り上がりを見せていた。
しかし、現在はあまり名前を聞かなくなったものも少なくない。欧州の有名チューナー&メーカーは現在どのようになっているのかを見ていく。
文/ベストカー編集部、写真/FORD、SUBARU UK、HONDA、ISUZU、IRMSCHER、BMW、LOTUS
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コスワース(COSWORTH)
フォードがグループAツーリングカーレースのホモロゲ取得のために、シエラRSコスワースを登場させた。写真はエボリューションモデルのRS500
コスワースの名を世界に広めたのは、1960年代後半に登場し、その後のF1を席巻したフォードDFVエンジンで、F1では通算155勝をマーク。
そのほかグループAツーリングカーレースのフォードシエラRSコスワース、WRCのフォードエスコートRSコスワースもファンの心を熱くし、ル・マン24時間、アメリカのCART、IRLのエンジンを手掛けるなどモータースポーツ界のビッグネームに君臨。
フォードとの関係があまりにも有名だが、メルセデスベンツ190E 2.5-16、その後のエボI、エボIIなどのエンジンも開発している。
ブルーバードSSS-Rは1.8L、直4DOHCターボのCA18DETを専用チューンしたCA18DET-Rを搭載。コスワース製の鍛造ピストンが採用されている
日本メーカーでは、競技ベース車の日産ブルーバードSSS-Rにコスワース製鍛造ピストンが採用されていたほか、スバルUKとコラボしたコスワースチューンのスバルインプレッサWRX STIがイギリス限定で販売されて人気。
スバルBRZ、トヨタGT86(86の欧州名)もコスワースがエンジンチューニングのプログラムを用意していたし、現行モデルではホンダNSXの3.5L、V6ツインターボエンジンはコスワースが開発・生産を担当している。
そのほかでは、GT-RのVR38DETTの初期開発をコスワースに委託したという噂は根強く存在しているが、この件について日産は公式に発表していない。
そのコスワースのレースエンジン部門は2022年にF1に復帰といううわさも流れているように健在だ。
いっぽうレース以外を手掛けるコスワーステクノロジーは、フォルクスワーゲングループを経て、マーレグループ傘下となり、マーレ・パワートレインと名前を変えている。
NSXの3.5L、V6DOHCツインターボ(507ps/56.1kgm)はコスワース製。高性能エンジンを少量生産するのはコスワースの十八番
イルムシャー(IRMSCHER)
イルムシャーはドイツのチューナーで、オペル車のチューニングで有名で、市販車のチューニングだけでなく、レース、ラリーのマシンにも大きく関与していた。
日本でイルムシャーが有名になったのは、1980年代にいすゞ車のチューニングを手掛けてから。
1985年10月にイルムシャーシリーズ第1弾がアスカに設定され、その後設定車を拡大。ボディ同色のフルホイールカバーがアイデンティティ
アスカ、初代&2代目ピアッツァ、2代目&3代目ジェミニ、初代&2代目ビッグホーン、PAネロにイルムシャーが足回りをチューニングしたイルムシャーモデルが登場。
いすゞとオペルは同じGMグループとして結びつきが強かったことが、イルムシャーのチューニングを採用するきっかけとなったのだ。
ジェミニ、ピアッツァ、ビッグホーンには、同じくGM傘下となったビッグネームのロータスがチューニングしたハンドリング・バイ・ロータスも設定されていたが、イルムシャーとともにスポーツモデルとして認知されていた。
そのイルムシャーはオペルの衰退とともに影が薄くなっていて、韓国のKIAのチューにニングなども手掛けていたが、オペルがPSAグループ入りしてから復活したのを機に、オペル車のチューニングモデルを積極的にリリースしている。
2021年から日本再上陸するオペル。コルサは日本導入が確実となっているが、イルムシャーの導入にも期待したい
ロータス(LOTUS)
ロータスヨーロッパは当時の子供たちに大人気。特異なプロポーションのライトウェイトスポーツカーだった
ロータスの名前はF1でも有名だし、イギリスのライトウェイトスポーツカーメーカーとしてマニアから根強い支持を受けていたが、日本では池沢早人師氏の『サーキットの狼』の主人公、風吹裕矢が駆るヨーロッパにより一般に認知されたと言っていいだろう。
いすゞ製1.6Lターボを搭載した2代目エランが登場したほか、前述のいすゞ車の足回りをチューニングしたハンドリング・バイ・ロータスは、ブランドイメージも抜群によく人気モデルとなった。
1990年にデビューした2代目ロータスエランは、同じGM傘下のジェミニの1.6Lターボを搭載。駆動方式がFFだったことが不評だった
1991年にデビューした2代目ピアッツァは、ロータスが開発に関与。クルマは販売面で苦戦したが、ハンドリングの評価は高かった
ちなみに1991年にデビューした2代目ピアッツァは、ロータスが開発に関与していたことでも有名だ。
ロータスはマニアックなクルマ作りをするがゆえに、常に経営難との闘いで、1990年代に入り、経営難が深刻化していたロータスだったが、ライトウェイトスポーツのエリーゼが1995年にデビューして世界的に大ヒット!! 一躍救世主となってから勢いを吹き返した。
GM傘下に入った後も、親会社は変わり、エリーゼのヒット後の1996年にマレーシアのプロトンに買収され、独自のクルマ作りができるようになった。そして2017年には中国の吉利(ジーリー)が親会社となっている。
親会社は変わっても、ロータス=スポーツカーのイメージは今も昔も不変。
ロータスの存続の危機を救ったのが1995年にデビューしたエリーゼ。ライトウェイトスポーツカーとして世界的に大ヒット
ハルトゲ(HARTGE)
ハルトゲの代表作のひとつであるH6SはベースがBMW635CSi。ボディサイドのハルトゲストライプ、11本スポークホイールがアイコンだった
BMWの有名チューニングメーカーはいくつもあるが、1980年代にその双璧として認知されていたのがアルピナと今回取り上げるハルトゲ。
アルピナ、ハルトゲともチューナーであると同時にドイツでは自動車メーカーとして認可されていることが共通している。
しかし現在もBMW本社公認で、BMWの保証が受けられる存在のアルピナに対し、ハルトゲはあまり名前を聞かなくなった。
ハルトゲは、BMWのクーペである635CSiのチューニングで日本で人気となったが、バブル時代の1980年代後半から1990年代初頭にかけてが最盛期。
BMW3シリーズ(E30)が六本木カローラと言われていた頃、ボディサイドに貼られたハルトゲストライプが誇らしげだった。
日本で大ヒットしたBMW3シリーズ(E30)もハルトゲは手掛け、2ドアクーペ、4ドアセダンとも憧れの対象となっていた
ハルトゲは1986年からトミタ夢工場が正規代理店として日本で輸入販売をしていたが、2001年にハルトゲジャパンが設立された。
残念ながらドイツのハルトゲは、2019年に会社をたたんでいるが、日本ではハルトゲブランドのアルミホイールなどが2020年現在も販売されている。
ハルトゲはコンプリートカーのほかパーツ販売も積極的だったこともあり、ハルトゲ仕様も多数存在した
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みんなのコメント
その名も“カゲムシャー”(笑)
マジです!