軽トラは規定が決まっており差別化することができない
日本独自のレギュレーションである軽自動車が、世界のカーマニアから注目されている。とくにアメリカなどで軽トラック、いわゆる「軽トラ」が遊びクルマのベースとして改造されたり、悪路を走ったりする動画などが公開され、話題となっているようだ。
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そんな軽トラだが、日本国内ではシュリンク傾向にある。過去にはスバル・サンバー、三菱ミニキャブは独自モデルを開発していたが、いまではスバルはダイハツから、三菱はスズキからOEMを受けるようになった。さらにホンダ(アクティ)も2021年を持って生産終了になることが発表されている。つまり、実質的にはスズキ・キャリイ、ダイハツ・ハイゼットトラックの2モデルに絞られることが既定路線だ。
それすらも将来的には統合されてしまうのではないかという噂が定期的に流れることがある。なぜなら、軽トラというのは荷台のサイズが実質的に規格となっており、差別化することができないカテゴリーといえるからだ。ボディサイズが軽自動車という規格で決まっているのだから当然だろうと思うかもしれないが、スズキとダイハツの軽トラについては荷台長1940mm、荷台幅1410mmとなっていてメーカーによる違いはない。
サードパーティー製のアクセサリーやワンオフの道具入れなどさまざまなユーザーの使うツールが、このサイズを基本に設計されているため、むしろ同サイズを守ることがユーザビリティにつながるというのが実情。実際、かつてスバルがオリジナルの軽トラとしてサンバーを生産していた時期のモデルでもあおり(荷台三方の壁部分)はスズキと共用していたこともあった。それもこれも荷台サイズが同じだからできることである。
というわけで、軽トラにおいて積載能力に差をつけることは基本的にNGとなっている。スズキでいうとスーパーキャリイ、ダイハツではハイゼットジャンボといってキャビンを多くして、シートをリクライニングできるようにするなどパーソナルユースを考慮したグレードも用意されているが、あくまでも特殊なグレードであって、メインであるモデルについては、差別化ポイントとなるのは燃費くらいのものとなっている。それについても、市場は燃費よりはフル積載状態での発進性を求める傾向にあり、燃費を稼ぐためにハイギアード化するといったことは考えられない。逆にいうと付加価値をつけづらいカテゴリーとなっている。
商用車は一台あたりの利幅が少ないカテゴリーだ
さらにメーカー希望小売価格を見ればわかるように、非常に安価であることも求められている。スズキ・キャリイは73万5900円~、ダイハツ・ハイゼットトラックは69万3000円~という価格設定になっている。こうして廉価グレードにはエアコンやパワステが装備されていないほどだ。その価格帯を見ればわかるように、はっきりいって軽トラは一台当たりの利幅(儲け)が非常に少ない。単純にビジネスとしてみれば積極的に参入しようと思うカテゴリーとはいえないのだ。
ご存じのとおり、いまや軽トラは前輪の上にシートがあるキャブオーバースタイル、軽1BOXバンはタイヤが鼻先で、エンジンの上に座るセミキャブオーバースタイルとなっている。つまり軽トラと軽1BOXはそれぞれ別のボディを用意しないといけない別設計となっているのだ。
こうした違いは軽トラがとにかくあぜ道での小回りを重視されるためショートホイールベースであることが求められ、軽1BOXには高速走行での安定性が要求されるためといえる。
具体的には、農業や漁業といった一次産業のユーザーをメインターゲットに考えて作られているのが軽トラだ。軽1BOXバンは宅配などの物流を支え、また工事現場などに活躍する職人の相棒となっているという違いがある。いずれにしても、こうした軽商用車がなくなってしまうと、現在の社会は回らなくなる。儲けが少ないからといってなくなってしまうと困るジャンルのモデルといえる。
スズキとダイハツが軽トラを用意しているのは、これまでも軽自動車という国民の足となるクルマを作り続けているという自負によるものといえる。ブランディング的にいえば、軽トラを作り続けていることで軽自動車ユーザーからの信頼を得ているともいえるだろう。
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