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【レースフォーカス】完ぺきな週末で初優勝を飾ったバニャイア。そしてM.マルケスが取り戻したい武器/MotoGP第13戦アラゴンGP

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【レースフォーカス】完ぺきな週末で初優勝を飾ったバニャイア。そしてM.マルケスが取り戻したい武器/MotoGP第13戦アラゴンGP

 23周のレースのうち、最も劇的な瞬間は終盤の残り3周に訪れた。先頭を走り続けてきたフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)と、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)による、手に汗握るような優勝争いだ。激しい攻防を繰り広げる二人。しかし、バニャイアはマルケスの猛攻を振り切ってトップでフィニッシュラインに飛び込んだ。バニャイアにとって、最高峰クラス参戦3年目にしてついに手にした初優勝だった。
 
 MotoGP第13戦アラゴンGPの決勝レースをポールポジションからスタートしたバニャイアは、そのグリッドポジションから後退することなく先頭で走り続けていた。そして、その背後にはスタート直後からマルケスが0.3秒以内の差を守って追走していた。ラップタイムもほぼ同じ二人は、緊迫の差を保ってレース終盤に入っていく。
 
 レース中、バニャイアはこの日の己の敵がマルケスだけだとわかっていた。そしてまた、彼がレース終盤に勝負を仕掛けてくるだろうことも想定していた。
 
 残り3周から、マルケスはぐっとバニャイアとの差を詰め、7度ものオーバーテイクを仕掛けた。マルケスがブレーキングでバニャイアの前に出ようとするも、バニャイアはクロスラインでマルケスに先行してコーナーを立ち上がる。
 
 最後の勝負は最終ラップの12コーナーだった。マルケスがバニャイアのイン側に位置取りブレーキング。わずかにマルケスが先行したかに見えたが、このときバニャイアはハードブレーキングでコーナーに入っていた。「彼はきっとラインを外す」。バニャイアはマルケスを見てそう思ったという。そしてその通り、マルケスは曲がりきれずにはらんでいき、結果的にこれがバニャイアの優勝を決定した。

「(レースが終わって)まず思ったのは、『ああ、終わった』ということだったよ。長いレースだった。ずっとサインボードは『+0』だったんだ。僕は、ずっと強く、速かったとは思う。でもその度にチャンスを失ってきた。そういうことが、今日の優勝をすごく甘美なものにしてくれた」

MotoGP第13戦アラゴンGP:バニャイアが最高峰クラスで初優勝。最終ラップまで続いたマルク・マルケスの猛攻を退ける

「今日の優勝は、僕の中でも最高のものだよ。子供のころからMotoGPを見ていて、大きくなってからはバレ(バレンティーノ・ロッシ)や(ダニ・)ペドロサ、(ホルヘ・)ロレンソが戦うのを見ていた。そして僕がMotoGPに昇格してからは、マルクやドビ(アンドレア・ドヴィツィオーゾ)、ロレンソのバトルを見続けていた。MotoGPで優勝するのは夢だったんだ」

 バニャイアは決勝レース後の会見のなかで、そう語った。2021年シーズンはドゥカティのファクトリーチームに移籍し、今季これまでたびたび速さを見せていたのは確かだった。第12戦イギリスGPまでには、4度の表彰台を獲得している。ただ、優勝には手が届かなかった。
 
 しかし、この週末のバニャイアは「完ぺきだった」。ついに成し遂げた優勝に、バニャイアはパルクフェルメでのインタビューで笑顔で白い歯を見せていた。また、このバニャイアの優勝は、ロードレース世界選手権の最高峰クラスにおける、イタリア人ライダーの250度目の優勝となった。
 
「(マルケスがオーバーテイクを仕掛け始めたとき)僕はいいポジションにいたと思う。レース終盤、タイヤのグリップがなくなってきたときには、守るほうが楽だ。オーバーテイクしようとすれば、すぐにはらんでしまうからね。マルクが僕を攻め始めたとき、自分のブレーキングがすごく強いとわかっていた。だから、ブレーキングでそうそうオーバーテイクされることはないと思っていたよ。オーバーテイクのたびに、彼はワイドになっていた。リヤタイヤがそういうブレーキをするのに、もうきつい状況だったからだ。もし僕が2番手だったら、やっぱりオーバーテイクは難しかったと思う」

 冷静なバニャイアは、レースについてそう分析している。ともあれ、アラゴンGPのバニャイアは、パズルのピースがはまるようにすべてが強くまとまっていた、というところだろう。
 
 一方、猛攻が報われずに2位だったマルケスも、「ペッコ(※バニャイアの愛称)のブレーキングは深くてバイクをうまく止めていた。特に、加速のときにすごく速かった。今日はできることをやったよ」と、バニャイアのこの日のレースを認めていた。
 
■マルケスの懸念
 マルケスにとってはドイツGPの優勝以来の、表彰台獲得だった。久々の表彰台獲得だと考えれば、そう悪い結果でもないようにも思える。ただ、マルケスにとっては現在、速さが安定していない、そのことが懸念事項になっている。
 
「僕は一つのサーキットで速く走りたいわけじゃない。どのサーキットでも速く走りたいんだ。だから、まだ改善していかないといけないんだ」

 一つには、バイクの面での問題だ。ご存知のとおり、ホンダ全体として苦戦が続いている。そしてもう一つには、マルケス自身がまだ万全の状態ではないということだ。決勝レース後の会見で、マルケスはこう述べていた。
 
「今季は僕のキャリアの中でも最も厳しいシーズンかもしれない。フィジカル面でも、精神的にも、多くのものごとについてもね。ポルティマオで復帰した時の期待値は小さなものだったけれど、もっと早く体の状態がよくなるだろうと思っていたんだ」

「僕の以前のライディングスタイルは、フロントタイヤをかなり酷使して限界で走り、間一髪のところをひじで転倒を回避するものだった。今はそれができない。だから、今季は転倒が多いんだ。過去には何度も転倒を回避してきた。でも、今季はフロントを失うと、もうあきらめることになる」

「以前のような走りができない。いいラインを辿り、うまく走るだけだ。今はライバルより抜きんでたものがない。ほかのライダーと違うことができなければ、彼らと同じということだ。あるサーキットでは速く、あるサーキットでは苦戦する。僕の目標は、今後、体の状態をもっと回復させることだ」

 マルケスだけが持っていた武器は、現在その手にはない。ホンダの不調があるにせよ、今後、優勝やチャンピオンを獲得するために必要なマルケス自身の“奥の手”を欠いている、ということだろう。だからだろうか、少なくとも会見場でのマルケスの表情は、久々の表彰台に満足しているようには見えなかった。
 
 果たしてマルケスがその武器を取り戻すのはいつになるのか……、それを最も待ち望んでいるのは、おそらくマルケス自身だろう。

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みんなのコメント

5件
  • マルケスの果敢なアタックはバニャイヤのMotoGP初優勝を引き立ててくれた。
     生涯一度の初優勝なのにファイナルラップまで本当に素晴らしいレースになったと思う。
  • 手負いで彼しかプッシュできないマシン。
    レギュもCPUもドカに寄りまくったさなかで遅かった初勝利。
    マンパワーは圧倒的にマルケスなんだなと思わせた一戦。
    ペッコはポイントリーダーかな?違ったかw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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