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空力面の自信と、ロングホイールベースゆえの不安。“秘密兵器”の準備も進むapr LC500h GT

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空力面の自信と、ロングホイールベースゆえの不安。“秘密兵器”の準備も進むapr LC500h GT

 2022年12月末のシェイクダウンを経て、1月13日の東京オートサロン2023で正式発表されたapr製作のレクサスLC500h GT300。『apr LC500h GT』としてゼッケン31を付け、2023年のスーパーGT・GT300クラスに投入されるこのマシンは、どんな乗り味を持つのだろうか。

 長年、コンストラクター兼チームとして自社制作のGT300規定車両で参戦してきたapr。近年もプリウス、GR86での参戦に加え、GRスープラの製作も担うなど、GT300クラスにおけるオリジナル車両製作のノウハウを積み上げてきた。

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 オートサロンのレイズブースで行われた発表会でaprの金曽裕人代表は「今回発表する(次期GT300)車両は、噂では『新型プリウスか?』とも言われていました」と2022年まで走らせたプリウスPHVに代わるベース車両選定の経緯を説明した。

「我々も新型プリウスでの参戦も考えたのですが、ご存知のとおり、新型プリウスが発表されたのは先日のこと。開発の時間、設計・風洞(試験)を考えると、どうしてもその(時間的な)問題があったことで、『次のステップに入ろう』という結論になりました」

 ベース車両として新たにLC500hを選定した理由について、金曽氏はボディフォルムと前後重量配分の良さを挙げる。

「まず、世界でも最高峰のボディデザイン。非常に妖艶で、そこに惚れ込んだというのが一番。2番目は重量配分で、もともとのクルマ持っているディメンションが、レーシングカーに適しているだろうということでLC500hにしました」

 金曽氏はLC500hのストロングポイントとして、空力面を挙げる。LC500といえばかつてGT500にも投入されていたが、3メーカーの車両性能をそろえるための“スケーリング”により、ベース車両のディメンションが必ずしも反映できない部分があるGT500と比較すると、GT300規定の方がベース車両の空力性能がレーシングカーに直結する度合いが高いとも言える。

 この利点をさらに突き詰めるため、aprでは400回以上の風洞試験を敢行。その結果「aprが作るクルマのなかで、過去最高値を出しているのも事実」と金曽氏はその空力性能に自信をのぞかせる。実際、東京オートサロンに展示された車両のディテールには、空力面での工夫の一端が見てとれた。

 ただし、2870mmというapr史上最大となるホイールベースについては、金曽氏も未知なる部分が多いと感じているようだ(プリウスのホイールベースは2750mm)。

■「プリウスよりも柔らかいタイヤが履けるかも」
 長年aprのプリウスをドライブし、2023シーズンからこのLC500hのステアリングを握ることになる嵯峨宏紀は「まだ転がしただけなので、速い・遅いを語るレベルにはありませんが、大きなトラブルもなく終えられてホッとしています」とシェイクダウンを振り返った。

「aprはここ3年ほど、毎年のように新車を作ってきているおかげでノウハウも分かっていますから、新車ではなかなか難しい『年内のシェイクダウン』ができたことは、まず良かったです。乗り味的には……不思議なもので、プリウスやスープラ、GR86と同じようなシャシーなのですが、このボディを被せるとどことなく“ラグジュアリー感”があるんですよね(笑)」

 嵯峨も金曽氏と同様、空力面での手応えを感じつつ、ロングホイールベースとなることへの不安を口にする。

「今回、空力がものすごく良くて、プリウスと比べると雲泥の差というか……実際、風洞にかけるとGT500並みの性能がすでに出ているんです。そこがやっぱり強みですね。反対に、ホイールベースが長いので、小さいコーナーでどうやって曲げるかという部分については、若干苦労するかもしれません」

「ただ、その部分に関してはこれまでやってきたノウハウもありますし、このクルマは重量配分が限りなく50:50に近いので、小回りという部分でも少なくともプリウスよりは良かったという印象です。もちろんレースでは、他のライバルと比べてどうかという話になりますので、これからのテストで走らせてデータを取って……という作業を、僕も楽しみにしています」

 タイヤに関しては、31号車としてはプリウスから継続となるブリヂストンを履くが「(クルマが)欲しがっているものは、プリウスとは少し違うかもしれない」と嵯峨はシェイクダウンで感じたという。

「とりあえずプリウスのタイヤで走ったのですが、もしかしたらもっと柔らかいタイヤを履けるかもしれません。(ブリヂストンを履くGRスープラもいるが)スープラよりも重量配分は50:50に近いですし、スープラよりもダウンフォースが出ているので、それが参考になるかどうかも、もっと走ってみないと分からないですね」

 そして、ホイールにも“秘密兵器”が用意されていると嵯峨は言う。

「今回の展示車両には間に合わなかったのですが、現代のGT300車両とタイヤに合いそうなホイールを作ってもらいました。4年くらい前から僕がレイズさんにリクエストして、剛性の部分を変えてきたものです。GT500での先行開発ではおおむね良好な反応を得られているようで、僕らには今回先行で入れてもらえるので、それも楽しみですね」

 なお、コクピットに座った状態では、ホイールベースの長さというよりは車両全体の大きさの方が気になるそうで「車両感覚がまだちょっとつかめていない。タイヤの位置がどこなのかっていうのは、僕も小高(一斗)もうちょっと乗って慣れないといけませんね」という。

 aprのフロントエンジン車両としては、プリウス、GRスープラ、GR86に続き、LC500hが4車種目。これらFR車両はレースでの優勝こそあれど、まだシリーズチャンピオンには手が届いていない。金曽氏は「(GRスープラ、GR86とともに)“トヨタ軍団”として、3車種で今年のチャンピオンを狙えたらと思っています」と意気込む。

 デビューイヤーとなる2023年、果たしてLC500hはGT300クラスの“台風の目”となることができるだろうか。少なくとも、注目すべき一台であることは間違いない。

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