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2.2Lにボアアップで250馬力 ジェンセン・ヒーレー 一緒に過ごして半世紀 後編

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2.2Lにボアアップで250馬力 ジェンセン・ヒーレー 一緒に過ごして半世紀 後編

キャブレターから燃料インジェクションへ

エンジンがリビルドされたジェンセン・ヒーレー。「2.2Lになりトルクが太くなりました。0.78:1のギア比の5速に入れても、充分に加速できますよ」。ロータス907ユニットの第一人者である、マイク・テイラー氏が説明する。

【画像】2.2Lにボアアップで250馬力 ジェンセン・ヒーレー 同時期のスポーツカー 240Zも 全131枚

初期のエンジンが抱えていた、シリンダー間で圧縮が抜ける問題も解決できた。バランス取りした軽量ピストンとコンロッドも組まれるが、オイルサンプはオリジナルのままだという。

同時にトランスミッションも交換され、大きいトルクを受け止めるべく、クロスメンバーが追加してある。クラッチケーブルは、ロータスの部品を加工して利用している。

プロペラシャフトとスピードメーター用ケーブルも、マイクが用意したもの。クラッチペダルの位置が変更され、インプットシャフトにも手が加えられた。

実はこのトランスミッションの載せ替え用に、彼は2800ポンド(約45万円)でコンバージョン・キットを提供している。既に10台分が売れたという。

乗りやすさを求めたオーナーのロバート・ヒックマン氏の要望へ応えるように、キャブレターから燃料インジェクションへアップグレードもされた。これも、3500ポンド(約56万円)でキット化されている。

気筒毎に点火コイルが組まれ、ディストリビューターは不要に。オルタネーターは大容量化され、スターターはギア駆動で効率を高めた。軽量なフライホイールへ交換され、鋭いコーナリングに備えてガソリンタンク内部も改良を受けている。

数枚の補助メーターが並ぶダッシュボード

ロバートは足回りへ手を加えるつもりはなく、180馬力程度で充分だと考えていたが、最終的に250馬力へ上昇。ステアリングラックとブレーキも、アップグレードされることになった。

今後、さらに年齢を重ねるロバートのために、電動パワーステアリングの追加も可能らしい。この状態へ仕上げるまでに、半年を費やしたそうだ。
アルミホイールはオリジナルをマイクが探し出し、細身のピレリが組み合わされた。13インチの185/70というサイズがラインナップされる、クラシックカー向けのCN36タイヤを履く。

新車時から、味気ないとか特徴が薄いと批判されてきたジェンセン・ヒーレーのスタイリングだが、確かにフロントマスクは個性的とはいえないだろう。ホイールアーチの隙間も大きい。それでも、斜め後方からの容姿には魅力を感じる。

大きなリアデッキの内側には、余裕のある荷室が広がる。ヒルマン・ハンターのものが流用されたテールライトの収まりは悪くない。

全体がブラックで仕立てられたインテリアも、造形的には目立った特徴がない。オースチン・ヒーレー3000の後継モデルとして、新しさが狙われているように感じる。空間は広く、操作系のレイアウトも考えられている。

ダッシュボードには、電圧や油圧の補助メーターが並ぶ。警告灯だけで済まされる時代が訪れていたなかで、スポーティに感じたドライバーは多かったはず。ただし、シートベルトの警告灯は付いている。

瞬間的に目覚めるロータス907ユニット

ボンネットを開くと、4基並んだスロットルボディが美しい。余裕のあるエンジンルーム内は整然としており、高さを抑えるため傾けて搭載された姿を眺められる。

燃料インジェクション化されたロータス907ユニットは、瞬間的に目覚めた。3枚のペダルには充分な間隔があり、滑らかで、特に慣れが必要な部分はない。

走り始めると、目前に広がる長いボンネットが上下に揺れる。視覚的に柔らかい乗り心地であることを強調するが、1970年代のオープン・スポーツとして考えれば快適だ。

ステアリングラックのレシオは低く、軽すぎず、バランスの取れた身のこなしと調和している。コーナーへ突っ込むと、発生している負荷をロールで教えてくれる。限界が迫ると徐々にアンダーステアへ転じる。

トルクは太く、エンジンのレスポンスは良好。アクセルペダルの加減で、穏やかにオーバーステアへ持ち込める。トヨタ製の5速マニュアルはスムーズ。ギア比はエンジンのトルク特性にピッタリで、流暢に加速できる。

同時期のアルファ・ロメオのツインカムほど、エンジンは心地良いサウンドを鳴らさない。しかし深呼吸するような吸気音が好ましく、チューニングで得た排気量当たりの馬力には唸らされる。

1.0t弱のジェンセン・ヒーレーは、ロケットのように加速はしない。だが、低回転域からのピックアップはたくましい。オリジナルより扱いやすく、確実にパワフルだ。

ロマンスを感じさせない雰囲気が最大の弱点

誕生から半世紀を経たジェンセン・ヒーレーだが、多くは今でも恵まれた境遇にはない。オースチン・ヒーレー3000とは異なり、ラリーで優勝したような栄光もない。

決して設計は悪くなかった。いくつかの弱点を許せそうな、ロマンスを感じさせる雰囲気を備えていなかったことが、最大の弱点だったのかもしれない。

ロータス・エランのように、ジェンセン・ヒーレーは多くの人の心を捉えることはできなかった。しかし、人生の半分以上を一緒に歩んできたロバートは例外だった。

オリジナルの見た目を巧みに残しながら、適度にモダナイズされた仕上がりは素晴らしい。1人の男へ47年間も大切にしたいと思わせる、確かな魅力がここにはある。

ジェンセン・ヒーレー(1972~1975年/英国仕様)のスペック

英国価格:1810ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:1万926台
全長:4115mm
全幅:1605mm
全高:1219mm
最高速度:197km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:965kg
パワートレイン:直列4気筒1973cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/6500rpm
最大トルク:17.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル

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