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RBは今やレッドブルの”ジュニアチーム”ではなく”兄弟分”に? ファクトリー移転でレッドブルのリソースを効率的に活かす未来

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RBは今やレッドブルの”ジュニアチーム”ではなく”兄弟分”に? ファクトリー移転でレッドブルのリソースを効率的に活かす未来

 レッドブルがミナルディを買収し、2006年からF1への参戦をスタートさせたトロロッソ。その後はアルファタウリと名を変え、今季からはビザ・キャッシュアップRB(以下RB)とさらに名称を変更してシーズンを戦っている。

 トロロッソは2008年のイタリアGPで初優勝。この勝利は、レッドブルよりも早い初優勝達成だった。しかしあくまでレッドブルの”ジュニアチーム”としての立場。2009年からレッドブルがトップチームの仲間入りをするとその役割はさらに明確となり、レッドブルの育成ドライバーをF1にデビューさせ、レッドブルのマシンを走らせるに足るドライバーへと”育て上げる”役割を担った。

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 RBはこれまで、レッドブルが開発したパーツの中で流用可能なモノは使いつつも、マシンの基本的なデザインはチーム創設当初こそレッドブルの”コピー”とも言えたが、レギュレーションでそれが許されなくなると自社開発の部分が増えていった。

 2023年(アルファタウリ時代)は厳しいシーズン序盤となったが、レッドブル製のリヤサスペンションを投入するとAT04のパフォーマンスが急上昇。ポイントを積み重ね、コンストラクターズランキング最下位から脱出することに成功した。

 この成果によりRBは今季、レッドブルの2023年型マシンRB19のクローンとも言える車両を登場させるのではないか……そんな噂もあった。しかしRBは独自の開発路線を採ることを選択した。レッドブルRB20とRBのVCARB01の特性の違いからすれば、それは明らかだ。

 レッドブルは今季も昨年に続いて高速区間で強力なパフォーマンスを発揮する。一方でRBのVCARB01は、低速コーナーとトラクションに優れている。

 とはいえ許される範囲で、共通のパーツを使う2台。しかし一方のRB20は今季も勝利を収め、VCARB01は入賞を狙うのが精一杯……この違いは、フロアを最大のパフォーマンスを発揮する”位置”に保つため、より硬いサスペンションをうまく使えているかどうかによるものであると言えそうだ。

 舞台裏でRBは、今もレッドブルの技術の恩恵を被っている。イギリス・ミルトンキーンズにあるレッドブルのファクトリーの隣には、RBが独自の施設を構え、開発に活かそうとしている。一方でミナルディ時代から使い続けているイタリア・ファエンツァの施設も、そのまま使い続けている。

 RBのテクニカルディレクターであるジョディ・エジントンは、これまで使ってきたイギリス・ビスターの施設が手狭になったことが、ミストンキーンズに施設を構えることにした理由だと語った。

「現在ビスターには、100人以上のスタッフがいる」

 そうエジントンはmotorsport.comに対して語った。

「満員なんだ。ビスターの施設は満員になっている。手狭になってしまった。そのため移転する必要があった」

「それに加えて、ビスターにある風洞はもう3年間使っていない。我々は(レッドブルが所有する)60%の風洞を使っているからね(※ビスターの風洞は50%スケールの風洞モデルまでしか対応できない。レギュレーションでは60%スケールの風洞モデルまで使うことができるとされている。実車のサイズに近ければ近いほど正確な風洞実験を行なうことができるため、ビスターの50%風洞では力不足なのだ)」

「現在、チームは技術面である程度成長段階にあるため、より広いスペースが必要だ。施設間の移動の自由度も高めている。チームとして、そういった自由度を大いに享受しているところだ」

「現時点では実際に人がやってこられるようなデスクスペースがもうない。そういうことを、思うようには行なえないんだ。そのため、より大きな施設に移転することは、我々にとって有益だ。チームの成長を後押ししてくれるだろうし、拠点間の交流も改善できる」

 RBのピーター・バイエルCEOも、ミルトンキーンズに移転するのは、ビスターの施設の契約期限が迫っているからだと説明する。バイエルCEOが説明するには、ビスターの施設が建っている土地はリース契約であり、その契約期限が切れることから地主が土地の購入を打診してきたという。しかしその広さは不十分であるため、その申し出を断ったようだ。

「ビスターで働くすべてのスタッフに、そして彼らの忍耐と献身に敬意を表さなければいけない。彼らは本当に、偶然出会ったのだ」

「昨年地主から電話があり、賃貸契約が切れそうなのでこの物件を売りたいと考えているのだが、興味はあるか……と尋ねられた。我々はノーと答えたんだ。実際この土地は、我々にとっては狭すぎるからね。駐車場は十分ではないし、近くにスーパーマーケットもない。何かを食べる所もないんだ。小さな古いジムがあって、そこをみんなで使っている」

「我々としては、レッドブルがミルトンキーンズに新しい風洞を建設しているので、行動を起こそうと言う絶好の機会だった。みんなの生活を楽にするためには、これが絶好のチャンスだと思った」

 バイエルCEOによれば、ミルトンキーンズのレッドブルの施設に併設されるRBの新施設はゼロから建設されており、ビスターの2倍の広さになるという。そして2025年から始動する予定だそうだ。

 この施設の移転により、RBはF1チームとして次の大きなステップを踏むことになるかもしれない。

 前述の通り、ミナルディを買収して創設された当初、トロロッソはレッドブルの完全なるジュニアチームとして運営されてきた。1年目の2006年には、前年レッドブルが走らせたRB1を、STR1として走らせた。この年からF1のエンジンはV8とすることが定められていたが、トロロッソは特例として回転数が制限されたコスワースのV10エンジンを使うことが許された。

 2009年までは同じように、レッドブルが前年使っていたシャシーを流用する形を取ったトロロッソ。しかし2010年以降は独自のシャシーを作ることを強いられたため、レッドブルはファエンツァのファクトリーに対して投資を行ない、F1マシンの開発に不足がないように整える必要があった。

 現テクニカルディレクターのエジントンがチームに加入したのは2014年。当初チームは下位に留まることが多かったが、レッドブルが送り込んでくるジュニアドライバーの質が上がり、さらに開発するマシンのパフォーマンスも上がったことで、ランキングの順位も上がっていくようになった。

 そして独自開発のパーツが増えていったが、エジントンがこのやり方を一変。以前のようにサスペンションやギヤボックスなど、レッドブルが開発したパーツを流用する方向性に変えていった。これはコスト削減のためだけではなく、これらの開発リソースを他の開発に割けるようにして、より効率的にパフォーマンスを手にすることを目指したのだ。

 そしてバイエルCEO、新チーム代表のローレン・メキーズの下で、本格的なチームになることを目指している。

「チームに深く関わっていると、進化もあるが、大きな成長と進展があった。チームとしてのパフォーマンスも向上したと思う」

 エジントンは現在のチームで働いてきた10年間を振り返り、そう語った。

「最近では首脳陣が交代し、組織の構造を強化するために、多くの人材が迎え入れられた。私は、すべてをポジティブに捉えている」

「F1の方向性は、進化しなければいけないということだと思う。10年前、15年前のF1と今のF1を比べると、比較にならない。成長なくして競争力は保てない……常にそういうことになるだろう」

 RBは技術面ではレッドブルと知識を共有しながらも、独自の道をしっかりと歩んでいる。しかしRBには、レッドブルのためにドライバーを育成するためのチームという印象がまだある。

 現在RBは、35歳のダニエル・リカルドを起用している。そしてレッドブルではセルジオ・ペレスが苦戦しているものの、リカルドもチームメイトの角田裕毅も、ペレスよりも大幅に優れているとはみなされていないようだ。そういう意味では、”育成のためのチーム”としてはうまくいっていないように思える。

 しかしバイエルCEOは、特に角田に関しては、時間をかけて成長するための場所がRBだと語る。角田は現在F1で4年目のシーズンを戦っているが、一気に評価を上げている。

 そしてシートを狙う若いドライバーも数多くいる。すでにF1の実戦も経験済みであるリアム・ローソンがその筆頭だろうが、F2で活躍するアイザック・ハジャー、昨年F2で活躍し今季はスーパーフォーミュラを戦う岩佐歩夢もいる。さらにF3での1年目を戦うアルヴィッド・リンドブラッドも有望株である。

「多くの人たちは、君たちはジュニアを育てるためにここにいるんだねと言う。でも我々にとってのジュニアの定義は、最終的にレッドブル・レーシングのマシンに今すぐ乗れる準備ができているドライバーという意味だ」

「ドイツ語では”一羽の燕が夏を連れてくるわけじゃない(『吉兆も、長く続くとは限らない』というような意味)”という言葉がある。つまりユウキがこのレベルのパフォーマンスを続けていけば、レッドブル・レーシングのシートに考慮されるということだ。そうすることが、我々の使命だ」

「それは株主から与えられた使命でもある。彼がダニエルの隣でもう1シーズン戦う必要があるということを意味するのであれば、それは選択肢になるかもしれない。逆に彼の準備が整ったと信じることができれば、リアムと話をするという選択肢もある」

「我々は急いでいない。みなさんはそうは思っていないかもしれないが、我々は全ての選択肢を手にしているんだ」

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