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複雑系にモノ申すファニー·マッドネス──シトロエンのハイドロが形を変えて復活 !?

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複雑系にモノ申すファニー·マッドネス──シトロエンのハイドロが形を変えて復活 !?

フランスの路上には、歩道の手前や街の入口など、強制的に車速を抑えるためのスピードバンプがしょっちゅうある。徐行~30km/hの低速域で通過しても、サスペンションが不用意に固いクルマだと「ボゴォッ」といった盛大な衝撃音が前輪側ホイールハウス全体から伝わってくる。ところがシトロエンC5エアクロスのガソリン仕様ときたら、このバンプをそれこそスイッと柔らかく吸い込み、乗員の身体のブレをカドのない緩やかな上下動バウンスで受け止めてしまう。まるで生きもののようにヌメッと路面をなぞる動きは、往年のハイドロニューマティックもかくや、の印象だ。

ブレーキやステアリングと油圧回路で連動していないながら、C5エアクロスの足回りには「PHC(プログレッシブ·ハイドローリック·クッション)」という、ダンパー·イン·ダンパーのシステムが入っている。特にフロント側は伸び·縮み両方に用いられ、フルバンプもしくはフルリバンプの限界域でも、筒内のオイルを閉じ込めるようにして流入速度を遅らせ、穏やかな特性を得ている。ダンパーの筒内にすべて収められたとはいえ、電子制御による最適化に頼るのでなく、液体の粘りという物理的特性にこだわったという意味で、ハイドロニューマティックのもっとも今日的な形といえるだろう。

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これは近頃、ハイエンド車で流行っている「アダプティブシャシー機能」、つまりスポーツ、エコといった任意の走行モードに応じて足回りの硬軟やステアリングやペダル類、シフトの変速スピードやスケジュール設定を変化させるのとは、まったく逆の考え方といえる。SUVならではのストローク長を活かして、中間域はなるべく自由に動かし、限界域近くのクリティカルな場面では正確性を増すという、ひとつのコンフィギュレーションですべてをカバーする、そんな方向性だ。これが単機能どころか冒頭で述べた通り、街中のスピードバンプを越える際も快適至極だし、ワインディングでもロール感は大きいがロードホールディングもしなやかで、じつに楽しめるハンドリングに仕上がっている。

ドライバーは状況に応じた選択で迷う必要もないし、帯に短し襷に長し的な中途半端さに失望させられることもない。ちなみにディーゼル2LターボのBlueHDi 180は、鼻先の動きこそガソリン版よりどっしりと落ち着いているものの、高速巡航での安定感とリッター20km近い燃費では優位にある。いずれも組み合わされるトランスミッションはアイシンAW製の8速ATで、変速機のスムーズさもペダル操作に対する反応も、申し分なかった。

久々のビッグ·シトロエンらしい余裕あるストローク、そして傾いてからもキチンと粘るハンドリングはC5エアクロスの美点だが、この動的クオリティに貢献しているのはシャシーだけではない。アドバンス·コンフォートと呼ばれる機能&装備パッケージを備えたシートにも注目したい。こちらも座面の沈み込みストロークは大きいが、水平方向は適切にホールドし体重を巧みに分散、シートヒーターやマッサージ機能も備え、乗員を包み込むようにその疲れを軽減する。車内での「ウェルネス」は、最近のシトロエンが強く掲げるテーマでもある。

フルデジタル表示のメーターパネルとそのグラフィックが醸し出す近未来的な雰囲気とは裏腹に、ドライバーが選ぶべき電子制御は、レベル2の先進的運転支援システムと、ドライブトレーンと操作系を切り替えドライブモードのほかには、路面に応じてトラクションを最適化するグリップコントロールのみ。

いわばC5エアクロスは、「アナログ力」でも魅せる1台といえる。デザインは確かにボリューム大で、そびえ立つフェイスはSUVそのものだが、どこかSUVのパロディでさえある。だが独立3座でリクライニングもスライドも可能な2列目シートは、育ち盛りのファミリー用途も楽々こなすし、ミニバン的ですらある。

3列目シートこそグループ内のプジョー5008に譲って設定されないが、5名乗車でも1630ℓ容量のほぼ立方体に近い荷室を確保しているし、2列目シートを如何ようにでも倒せる収納モジュール性も高い。

いわば「本格派オフローダー」が小馬鹿にしたがる、FFのSUVクロスオーバーながら、エゴ·セントリックなドライバーをもじつは満足させる走りと、乗員を納得させるコンフォートをも併せもち、ファミリーカーとしての使い勝手にも欠けるところがない。

思い起こせば、シトロエンは世界初の量産FF車をトラクシオン·アヴァンで1934年に初めて世に問うたが、創業100年目の今年、FFのパッケージ効率や可能性を極限まで引き出した今日的な1台が、たまたまSUVクロスオーバーの形をしていたようにも思えてくる。

一見、道化のようにファニーなデザインだが、それだけではない。複雑化とインテリジェント化が進んで分かりづらくなる自動車に対するきわめてクリアなアンチテーゼというか、年季の入った止まらないファニー·マッドネスがC5エアクロスにはある。だからこそ、乗るならいっそ蛍光色アクセントのトッポいカラーリングを選びたい。哲学もセンスもないクルマや造り手が真似すると、途端に痛いディテールになること請け合いだ。

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