「電気屋さんで買ってきて」まであと〇歩? 三菱EVを売るヤマダデンキの本気
掲載 carview! 文:山本 晋也/写真:三菱自動車 56
掲載 carview! 文:山本 晋也/写真:三菱自動車 56
電子制御が増えて構造がシンプルになったり、似たような製品が増えたり、低価格化が進んだりすることを「クルマの家電化」と言うようになって久しく、EVシフトによってさらに進むという見方が優勢です。そんな中、大手家電量販店のヤマダデンキがEV販売に打って出ると発表しました。
同社と三菱自動車工業は2023 年 7 月から、ヤマダデンキの神奈川県及び埼玉県の 5 店舗で、三菱自動車の軽 EV「eK クロス EV」と軽商用 EV「ミニキャブ・ミーブ」の法人向け新車販売を始めたのです。
>>eKクロスEVってどんなクルマ? 価格やスペック情報はこちら
>>ミニキャブ・ミーブってどんなクルマ? 価格やスペック情報はこちら
「自動車は家電と異なり定期的なメンテナンスや車検が必要。家電のように売りっぱなしというわけにはいかないから家電店さんで扱うのは難しい」といったネガティブな意見も聞かれますが、ヤマダデンキには実績があります。
同社は2010年に三菱自動車が世界で初めて量産したEV「アイ・ミーブ」の販売を手掛けたほか、自動車整備事業の「ヤマダ車検」を運営するなど、自動車販売に本格参入する準備を着々と進めてきました。
今回はJARWA(一般社団法人日本自動車車体補修協会)と共にヤマダデンキが構築している整備ネットワークがメンテナンスを担当。ヤマダデンキの自動車販売は本気というわけです。
もっとも、今回のEV販売は“法人向け”が基本で、一般ユーザーがヤマダデンキでEVを買って“お持ち帰りする”といったシーンが見られることはありません。
そもそも軽自動車は書類だけでナンバーを取ることができますが、その場で届出を済ませてナンバーが交付される仕組みはまだありません。車検証のデジタル化やマイナンバーカードの活用を考えると、将来的には完全オンラインでのナンバー交付が可能になるかもしれませんが…。それはさておき、ヤマダデンキのEV販売の注目点は「EVのワンストップサービス」を目指している点です。
EVユーザーならご存じのように自宅に普通充電用設備を用意する必要があります。ヤマダデンキはEV用充電器・太陽光発電システム・V2H (Vehicle to Home)機器の販売・設置といったEVを利用する上で必要な設備工事もセットで請け負うことで、事業規模をスケールする戦略なのです。
自動車販売店の場合も専門業者を紹介するなどのサービスはありましたが、電気工事のネットワークに強い家電量販店がこの部分を担ってくれるのは心強いでしょう。
ひとまずは法人向けにスタートするとして、このワンストップサービスの経験は、一般ユーザー販売が始まったときにも活かされるはずです。
ガソリン代や電気代が高騰する中で、太陽光発電など自給自足のエネルギーでEVを走らせたいというユーザーマインドや、災害時の電力供給手段としてV2H導入を検討している一般家庭は今後も増加することでしょう。
ヤマダデンキの目指す「EVのワンストップサービス」はこうしたニーズに適合するビジネスに成長する可能性があります。今後は三菱自動車以外の自動車メーカーも、ヤマダデンキとコラボレーションしてEV販売を進めたいと考えるのではないでしょうか。
「クルマの家電化」は自動車の家電化とともに、家電量販店の自動車ディーラー化という面でも語られることになるのもしれません。
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