Vクラスベース、メルセデスのキャンパー「マルコポーロ」は意外や走りが楽しい快適ツアラーだった
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office、ダイムラーAG 44
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office、ダイムラーAG 44
毎年6月に開催される世界三大レースのひとつ、「ル・マン24時間レース」はあまりにも有名だが、過去にル・マンに参戦した貴重なヒストリックなレースマシンを一堂に集めて、7月に同じサーキットで2年に一度開催される「ル・マン・クラシック」も、本番に勝るとも劣らない人気のイベントである。私はこれまで中々取材するチャンスに恵まれなかったが、今年はメルセデス・ベンツ・クラシックが1952年に「300SL」がダブル・ウィンを成し遂げた70周年を記念して取材チームを募ったのである。
「募った」と言うのはシュトゥットガルトからル・マンまでキャンパーの「マルコポーロ」で往復するという条件があったからである。元々ル・マンは交通の便が悪く、さらにクルマだと駐車場が広大なので個人取材は中々難しい。そんなわけで私は即座に参加表明を行い、さらにメルセデス・ベンツはキャンピングカーの使い勝手を正しく評価させるためにコドライバーに私の妻が同行することも認めてくれた。
使用車両の「マルコポーロ エディション300d」は「V300d」をベースにしたキャンピングカーで、長さ5.4×幅1.93×高さ1.88m、ホイールベース3.2mである。オプションで搭載されているキャンピング装備は冷蔵庫、プロパンガステーブル、洗面台、38リッター飲料水、プロパンボンベ、消火器、そしてポップアップルーフとルーフベッド、さらにトランクルームにはピクニックテーブルと折り畳みチェアが組み込まれている。
総重量は3.2トンだが、実はドイツでは3.5トン以上になると普通免許では運転できないので、この重量に抑えたのだろう。クルマの引き渡しに際しては特にリアの左側にあるプロパンタンクのバルブの閉じ方など、扱い方法を注意深くレクチャーされた。
>>メルセデス・ベンツ Vクラスのカタロググレードをチェックする一方、フロントに搭載されているエンジンは直列4気筒2リッターツインターボディーゼル(OM654)で最高出力237馬力、最大トルク500Nmを発生、9速ATを介して後輪を駆動する。参考までにダイナミック性能は0-100km/hが7.2秒、最高速度は220km/hとキャンパーとしては驚きのパフォーマンスをもっている。
このフル装備のマルコポーロのドイツでの価格は19%の付加価値税込みで9万5665.29ユーロ(約1310万円)となっている。
さて、ホテルから出発する際に、我々のようにツーリストが持ち歩く旅行カバンをどこに収納するかちょっと問題になった。このクルマのオーナーであれば必要なモノを車内の引き出しなどの収納場所にしまっておくのだろうが、カバンを持ち込んだ我々は仕方なくフロアに置くことにした。ただしここで問題はなのはカバンを留めておくストラップなどは無いので、仕方なくシートの間に挟んで出発することにした。
>>メルセデス・ベンツ Vクラスのカタロググレードをチェックする出発は午前9時、セレモニーとしてメルセデス・ベンツ博物館前で記念撮影を行う。金曜日の午前中にも関わらずシュトゥットガルトからの脱出はうまく行ったが、事前にセットしたルートを変更するようにと、ナビゲーションから指示が入る。アウトバーン上で渋滞が発生しているというのだが、私は数日前にこのルートを走っており、渋滞は工事中の片側車線通行が原因で大した事はないと思っていたので、無視しようと決めた。
ところが何度も警告してくるので仕方なしにナビ通りに進むことにした。結局、最初の設定よりも80kmも長い距離を走って、渋滞を通過したルートで計算したのとほぼ同じ時間にフランス国境にたどり着いた。というわけでダイナミックナビは余計な燃料を消費してしまったわけで、将来的に大きな課題があることを露呈してしまった。
一方、マルコポーロの走りは横綱級の重量と決して低くはない重心にもかかわらず、アクティブにダイナミック走行を楽しむ余裕ができるほど優等生であった。加えて、大きなボディにも関わらず死角アシストのお陰で安心してレーンチェンジが可能だ。また、Cd.値0.32のワンボックスミニバンなので横風や、トラックの追越しなどでの走行安定性が不安だったのだが、クロスウインド(横風)アシストが非常に効果的に直進安定性を確保してくれた。
860kmの行程でもっと大きな役割をしたのはエアマチック(エアサスペンション)で、長いホイールベースの効果もあってピッチングは皆無、非常に快適にツーリングを続けることができた。また、サービスエリアでの駐車では360度カメラによって5.4メートルの巨体を持てあますことなく、周囲のクルマの間に潜り込ませることができた。
こうして出発してからおよそ10時間後、約束の午後7時にはル・マンの集合場所に到着することができたのである。
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