凄みを利かせた4代目RS6
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アウディ・スポーツのフラグシップモデルとなる、最新のRS6。長年に渡って、成功を収めた人物の、忙しない日常のクルマとして選ばれてきたモデルだ。
アウディRS6のオーナーの中には、ガレージにエキゾチックなスーパーカーを納めている人も少なくない。運動性能と快適性とのバランスに優れた4輪駆動のステーションワゴンを、毎日の足として選ぶことに疑問はない。
前回RS6に試乗したのは初投入となる北米だったが、今回は英国の一般道。先代のRS6は控えめな見た目だったものの、最新RS6のデザインなら、他のA6に紛れることはないだう。
フロントには巨大なグリルを備え、その両端にも目立つ大きさのエアインテークが開けられた。リアビューミラーに映る姿はかなりの迫力だ。RS6の定番といえるブリスターフェンダーは、標準のA6と比べて80mmも全幅を広げている。
ボディパネルで標準と同じものは、フロントドアとルーフ、テールゲートのみだという。視線を集める眼力を持つLEDヘッドライトも装備し、ドアを開場するとストロボのように点滅。極太な楕円形のマフラーカッターが2本、リアエンドで凄みを利かせる。
試乗車は、ナルドグレイと呼ばれるボディカラーと22インチホイールによって、さらに威勢が良い。オプションのカーボンセラミック・ブレーキを納めるには、このサイズが必要なのだという。おかげで試乗車の価格は13万5000ポンド(1930万円)にまで吊り上がっていた。
599psの4.0L V8ツインターボ
搭載するエンジンは、お馴染みの4.0L V8ツインターボ。599psの最高出力を聞けば、制動力も強力な方が良いと思える。最大トルクは81.4kg-mで、ティプトロニックを備える8速ATを介して4輪を駆動する。
トルセン式の4輪駆動となるクワトロは、最大で85%のトルクを後輪へ伝えることが可能。トルクベクタリング機能を持つスポーツデフも組み合わされる。
英国仕様車の場合、4輪操舵のダイナミック・オールホイール・ステアリングが標準装備。低速域ではフロントタイヤと逆向きにリアタイヤが切られ、高速域では同じ向きに制御される。
エアサスペンションを採用し、車高は標準のA6より20mm低い。さらに119km/hを超えると10mm低くなる。
だが試乗車の場合はオプションのRSスポーツ・サスペンション・プラスが付いており、エアサスではなくスチール製コイルに置き換わっていた。アダプティブダンパーは、ダイナミック・ライドコントロールと統合され減衰力を調整する。
今のご時世、車重2t、600psのステーションワゴンを、環境負荷を意識せずに走らせることは難しい。RS6にも、気筒休止機構や電圧48Vのスターター・ジェネレーターを備え、燃料効率を高めている。
エンジンは、低負荷時に最大で40秒ほど自動的に停止。赤信号などでの減速時に、20km/hを下回るとアイドリング前にエンジンを停止する機能も備える。
インテリアはA6で見慣れた雰囲気が残る。インテリアの設えは美しく、ダッシュボードには大きな液晶モニターをレイアウト。メーターパネルのモニターには、RSモードの選択時に、レースカーのような棒グラフ式のレブカウンターを表示することも可能だ。
車内空間も変わらず大きい。荷室容量は565Lもあるが、メルセデスAMG E63 Sエステートには及ばない。
上質でありながら圧倒的な走行性能
確認はこのくらいにして、英国の道を走ってみよう。ちなみに試乗車は季節がら、スタッドレスタイヤを履いていた。ハンドリングの印象には少なからず影響があるはず。
RS6は今まで通り、スーパーカー・キラーでありながら上質。スチール製スプリングであっても、メルセデスAMG E63やBMW M5よりも乗り心地は滑らか。舗装の剥がれた大きな窪みでは、流石に大径ホイールが振動するのがわかるものの、荒れた路面も上手に処理してくれる。
中回転域までは静かで穏やかに回るエンジンも同様。リラックスして走っている限り、トランスミッションはスムーズに変速を繰り返す。豊かな最大トルクは2050rpmから発生する。
そこからアクセルペダルを深く踏み込んでも、期待するほど即時的で野性味溢れる加速を見せることはない。0-100km/hの加速には3.6秒しか掛からないから、遅いわけではない。リニアなパワー感と圧倒的なトラクションによって、スピード感が沸かないだけ。
エンジンの始動時は高らかに目覚め声を上げるし、ダイナミック・モードを選んでいると、スロットルオフで弾けるようなサウンドも響くが、V8エンジンのサウンド自体はかなり静か。
それでも加速性能は暴走列車のように激しく、速度が高まるほどに加速度も強まるような感覚がある。アウトバーンでは有効でも、英国の高速道路では少々手に余る。
4輪駆動と電子制御が支える安心感
4輪操舵システムによって、RS6は今まで以上に機敏な身のこなしを得た。特に低速域では、長いホイールベースを感じさせないほど。駐車もしやすく、日常使いのクルマとして適していることを再確認する。駐車センサーはやや過敏気味だったけれど。
アルカンターラで巻かれたステアリングホイールに伝わる感覚は薄いが、反応はクイック。コンフォート・モードを選んでいれば、重み付けも自然。
スタッドレスタイヤを履いていても、路面を掴む感覚に不足はない。狙ったラインを、忠実にフロントがなぞっていく。
ドライビング・モードにもよるが、コーナー出口では、滑らかに次のストレートへロケットダッシュを決めるか、僅かなオーバーステアに持ち込むかも選べる。派手にカウンターステアを当てる必要はない。ステアリグを少し戻し、駆動系のトリックに任せればいいだけだ。
E63やM5の場合、後輪のスリップを検知するまでは基本的に後輪駆動となる。一方のRS6は、通常は40:60で前輪にもトルクが送られている。
おかげで突然のドリフトなど挙動が乱れることもない。グリップの急激な変化があっても、電子制御システムが常に支えてくれている。
全体的な姿勢制御も好印象。RS6はしっかりと路面を掴み、フラットで高速にコーナリングしていく。しかし、起伏のあるコーナーを本気で攻め込んでいくと、2075kgの車重と戦うサスペンションが乱れる場面もある。常に安定志向ながら、大きなボディの事実を思い出すだろう。
究極の万能選手と呼べる1台
アウディRS6は目的地への移動手段としては圧倒的な速さを発揮するが、E63やM5に並ぶほどの一体感は得られていない。夏タイヤに変ええれば、ハンドリングはさらに鋭さを増す可能性は高いものの、ドライバーを強く惹き付けるほどではないだろう。
英国のように道幅が狭く、カーブの多い道路環境では、RS6の2m近い車幅を常に意識してしまう。しかしRS6のオーナーの場合、本当にスリリングなドライビングを楽しみたいなら、その目的に合うクルマがガレージに収まっていることが多い。
天候を問わず高性能を発揮できる、日常的に乗れるクルマとして考えれば、ライバルモデルを凌駕することは間違いない。RS6に乗るほど、優れた才能のブレンドの素晴らしさに気づくことができる。
上質さと快適性、車内空間のゆとりに設えの良いインテリア。新しいアウディRS6は、究極の万能選手と呼ぶに相応しい1台だ。
アウディRS6アバントのスペック
価格:9万2750ポンド(1326万円)
全長:4995mm
全幅:1951mm
全高:1460mm
最高速度:249km/h(リミッター/カーボンセラミックブレーキ選択時:304km/h)
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.8-8.0km/L
CO2排出量:263-268g/km
乾燥重量:2075kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:599ps/6000-6250rpm
最大トルク:81.4kg-m/2050-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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