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【オフロードも想定以上】アストン マーティンDBXプロトタイプ 英国での評価

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【オフロードも想定以上】アストン マーティンDBXプロトタイプ 英国での評価

ダートで楽しむパワースライド

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)/Mike Duff(マイク・ダフ)

【画像】詳しく観察 DBXプロトタイプ 全74枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


英国西部、マーサー・ティドビルの近郊にあるウォルターズ・アリーナには、オフロードコースが整備されている。アストン マーティンDBXプロトタイプの試乗では、湿った砂利道や泥炭地、岩場や沼地の走破性を確かめる機会も与えられた。

オプションを付ければ20万ポンド(2840万円)に届こうという高級SUVのオーナーが、これほど過酷な環境にいどむことは殆どないはず。だが、すべての場面でとても巧みに対応できていた。

DBXに採用されているエアサスペンションとアクティブ・アンチロールバーは、シャシー性能を高める上で重要な役割を果たす。スポーツ+モードを選びコーナーへ侵入すれば、クルマは水平を保ち、スムーズに旋回していく。では砂利道ではどうだろう。

アストン マーティンで開発を率いたマット・ベッカーの説明に従って、幅広い砂利道のコーナーへ、3速のスピードで侵入する。アクセルペダルを少し踏んだまま、コーナーの頂点めがけてフロントの向きを変える。リアタイヤはロール剛性のピークに達し、リアの支点が優しく外側に膨らむのがわかる。

コーナー中程でのハンドリングは、スロットルがオンの状態より、オフの方が優れている。ドライブトレインが、中立的な姿勢維持を容易にしてくれている。だとしても、パワースライドがとても楽しい。

深いドリフトアングルを保てる以上のパワーがあるから、直線ではエンジンは力強くDBXを引っ張っていく。

ぬかるんだ急斜面や砂地でも余裕

速度域をぐっと落とせば、深度500mmまでの深さで水遊びもできる。オフロード・モードを選ぶと、アクセルペダルの踏み込み量に対するマッピングがより漸進的になり、水の底に小さな岩が転がっていても、低速を保ちながら簡単に走破できる。

試乗車には22インチのホイールに、オールシーズン・タイヤを履いていたが、ぬかるんだ急な斜面でも牽引力は力強いものだった。急な下り斜面では、標準装備されるヒルディセント・コントロールが、適切な速度を維持してくれる。

ちなみにDBXには、スタッドレスや高性能オンロード用タイヤも選択ができる。

英国での試乗とは別の日に、アフリカ・オマーンの砂漠にDBXで挑む機会もあった。英国で試乗したDBXプロトタイプと同じ内容のクルマで、100km以上の砂地と砂利道を走らせてくれると聞き、12月に飛行機に飛び乗った。

舗装路では、DBXのリアよりのトルク配分は、高速域でのみ明確に感じ取れる程度。だが道を外れ砂地へ入れば、鮮明にわかるようになる。

標準設定のGTモードでのままも、多くのトルクがリアタイヤへ伝わっていることは明らか。電子制御されるディファレンシャルが、コーナー外側のタイヤの回転速度を高めている。長く続く高速コーナーでは結果は穏やかだが、クルマが保とうとする進行方向で、機能していることが体感できる。

オフロードでも快適な乗り心地を維持

より積極的なスポーツ・モードやスポーツプラス・モードを選ぶと、DBXの進路変更はより機敏になり、スタビリティ・コントロールが介入するしきい値は上がる。マット・ベッカーの提案でスタビリティ制御をオフにしても、砂利道では安定しており、スリップアングルも調整できるくらいだ。

ただし、メルセデス-AMG製のV8エンジンは、強大な最大トルクが突然沸き立ってしまう。丁寧なスロットル操作は不可欠だった。

砂利道での高速ドリフトも楽しい体験だったが、サスペンションの仕上がりも素晴らしい。高速で大きな凸凹に対応する能力は、ほとんどのクルマでは届かないレベルにある。その快適性は、サポート車両としてついたトヨタ・ランドクルーザーの激しく揺れる車内と比べれば顕著。

アストン マーティンDBXは、大きなサスペンションストロークと余裕のあるエアスプリングが組み合わさって、荒れた路面を驚くほど平滑になだめてくれる。ドライバーは、揺れに備える必要がないほど。

電圧48Vで制御されるアクティブ・アンチロールバーも、基本的には舗装路で発揮される機能。プロトタイプでエラーが生じ、システムをオフになってしまった時があり、ロール角の違いに驚いた。滑らかなスピードボートから、小さな貨物船に変えてしまった。

クルマを止めてエンジンを再始動させると再び機能し、スピードボートに戻ってくれたけれど。

開発チーム想定以上の悪路性能

オフロードでのエアサスペンションの有用な機能として、車高が調整できることもある。今回の試乗では本格的な岩場にはチャレンジしなかったものの、テレイン・プラスで最大45mmまで標準状態からボディを持ち上げられる。ボディ底面をこすりそうな荒れた岩場では、安心感が違ってくるだろう。

マット・ベッカーによれば、開発チームが想定していた以上に、DBXの悪路での走破性を高く仕立てられたという。「アウディ・オールロードを目指していたら、ポルシェ・カイエンができたようなものです」 

高次元のオフロード性能は、DBXが本来目指したところではないようだ。そもそも、舗装路から大きく離れた場所を走ろうというオーナーはほとんどいないはず。

だが、オーナーが期待するであろう飛び抜けた走破性は、しっかり隠し持っている。アストン マーティンDBXが道路以外の、遥かに広い地上のエリアに対応できることは疑いようがない。

アストン マーティンDBXプロトタイプのスペック

価格:15万8000ポンド(2243万円)
全長:5039mm
全幅:1998mm
全高:1680mm
最高速度:291km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:6.9km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:2245kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:549ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/2200-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック

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