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モト・グッツィ V85TT試乗インプレッション【モダンの中に伝統あり。冒険心をくすぐる秀作】

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モト・グッツィ V85TT試乗インプレッション【モダンの中に伝統あり。冒険心をくすぐる秀作】

新設計エンジンを携え新アドベンチャーモデル登場

イタリアのモトグッツィからステルビオ以来およそ10年ぶりにアドベンチャーモデルが登場。エンジンは伝統のクランク縦置き空冷OHV2バルブ90度Vツインで、排気量もV9シリーズと同じ853ccのままだが、完全新設計という力作だ。

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●まとめ:大屋雄一 ●写真:山内潤也 ●取材協力:ピアッジオグループジャパン

(◯)新設計エンジンが秀逸。フレームも剛性感あり

イタリアのモトグッツィが、久しぶりにアドベンチャーモデルをラインナップに加えた。エンジンは伝統のクランク縦置き空冷OHV2バルブ90度Vツインで、排気量もV9シリーズと同じ853ccのまま。しかし、車体の強度メンバーとして使えるように新設計とされ、合わせてフレームも新作となっているのだ。

―― 主要諸元■全長2240 全幅950 全高ー 軸距1530 シート高830(各mm) 車重229kg(燃料90%搭載時) ■空冷4ストV型2気筒OHV2バルブ 853cc 80hp/7750rpm 8.2kg-m/5000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量21L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=110/80-19 R=150/70-17

―― 【パリダカ参戦マシンのV65TTをモチーフに誕生】車名のTTとはイタリア語でトゥット・テレーノ(英訳でオール・テレーン)の頭文字だ。ホイール径はフロント19/リヤ17インチで、フレームは高張力鋼管製だ。

V9シリーズの55hpに対し、同じ排気量から80hpを発揮するV85TTのエンジンは、実用域がとにかく広い。3750rpmで最大トルクの90%を発揮するだけあって、ほとんどのシチュエーションでは4000rpm以下で事足りるほど下に力がある。そこから上の領域では、振動が収斂しながらレッドゾーンに向かってスムーズに伸びていく。明確にレスポンスが変わるライディングモードを採用したり、それと連動するトラコンやABSなど、周辺デバイスは現代的になってはいるが、小太鼓を打っているかのような心地良い鼓動感は健在。加えて、コクッと吸い込まれるように入るシフトフィーリングや、400cc並みに操作力の軽いクラッチなど、新設計だけに各部の進化も著しく感動の連続だ。

―― 【新設計の縦置きV2はチタンバルブも採用】ボア×ストロークこそV9シリーズと共通だが完全新設計のクランク縦置き90度V型2気筒。前後長の短いクランクケース、セミドライサンプ、約30%軽量なクランクなどを採用。

シャーシもいい。フレームは最低地上高を稼ぐためアンダーループを省略しているが、大きな荷重が掛かる高速コーナーのギャップ通過時にも剛性不足は感じられず、ビシッとラインをトレースし続ける。ホイールトラベルは前後とも170mmと長めに確保されているが、通常の加減速におけるピッチングは少なめで、これが扱いやすさの源に。特に感心したのはシャフトドライブならではの症状、いわゆるスロットルのオンオフにおけるテールの上下動があまり感じられなかったこと。クランクケースの前後長を詰めてスイングアーム長を稼いだことが功を奏したようで、もちろん乗り心地も優秀だ。

―― 【伝統のシャフトドライブ採用。フロントフォークは倒立式だ】φ41mm倒立式フォーク、リザーバータンク付きリヤショックともプリロードと伸び側減衰力が調整可能。ホイールトラベルは前後とも170mmだ。フロントブレーキキャリパーはブレンボのラジアルマウント式。

ブレーキは、フロントにブレンボのラジアルマウント対向4ピストンキャリパーをダブルで装備。やや過剰かと思われたが、絶対制動力が高いだけでなくコントロール性も秀逸で、コンチネンタル製ABSと合わせて安心感の高い装備と言える。

―― 【USBポートやクルコンなどを標準装備する】スイッチ一つでシステムの起動から速度の増減まで可能なクルーズコントロールを搭載。充電用USBポートも。

―― 燃料タンクの造型は’80年代にパリダカに参戦したV65TTがモチーフ。容量は21Lを確保。

―― 試乗車は純正アクセサリーのツーリングウインドスクリーン(2万4840円)を装着(左)。純正アクセサリーのアルミ製トップ&パニアケースを用意する。3つ合わせての総容量は116Lだ(全セットで24万1920円、写真右)。

―― 【パワーモードも3種類を設定】スロットルレスポンスだけでなく、トラコンやABSの設定も連動。オフロードモードではリヤのABSをカットする。

―― シート高は830mmと高めだが、足着き性は決して悪くない。高速巡航、スタンディングともバランスは良好(身長175cm 体重62kg)。

―― 専用アプリで計測機器を拡張したり、電話の発着信などを可能とするモトグッツィの“MIA”(3万4128円)にも対応。

―― ●価格:スタンダードグラフィック(青、灰):139万8600円 プレミアムグラフィック(黄、赤):142万5600円 ●色:黄、赤、青、灰

(△)猛暑で熱ダレの症状も。左足の熱さは覚悟せよ

両ヒザのすぐ前にシリンダーがあるので、熱風が直撃するのは伝統とも言えるが、V85TTで気になったのは左足の熱さ。サイレンサーの熱が速度域を問わず周辺に対流するようで、途中からガニ股で走ることに。レザーパンツは必須だろう。

(結論)こんな人におすすめ:直接のライバルF750GSよりも味わいは上かも

試乗車の純正大型スクリーンは防風効果が高く、ケース類も使いやすかった。こうしたアクセサリー類の充実ぶりも魅力と言えるだろう。ライバルはBMW のF750GS あたりで、価格も近いが、エンジンの楽しさならV85TTが一枚上手か。

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