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翼を切られても走りは鮮烈 ジャガーXE SVプロジェクト8 ツーリングに試乗

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翼を切られても走りは鮮烈 ジャガーXE SVプロジェクト8 ツーリングに試乗

販売の振るわないSVプロジェクト8を加勢

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)ニュルブルクリンクで4ドア量産型セダン・カテゴリーのラップレコードを打ち立てた、ジャガーXE SVプロジェクト8の販売が振るわないようだ。300台の限定生産なのだが。残りの販売台数をこなす中で、極端なスパルタンさは求められていないと判断したジャガー。一般道向けに味付けし直された、「ツーリング」を追加した。

【画像】ジャガーXE 全102枚

目立って新しい部分は少ない。ボディの後ろにそびえていた巨大なリアウィングが外され、テールゲートに控えめなリップスポイラーが取り付けられている。リア周りの空力性能の変化に合わせて、フロントには新デザインのスプリッターも追加された。

少なくなったダウンフォースを考慮し、最高速度は322km/hから299km/hに下げられている。後部座席は残され、ロールケージが組まれるトラックバックのオプションは選択できない。ほかの部分は基本的にサーキット前提の特注マシン、プロジェクト8と同じ。大きく膨らんだフェンダーはそのままだし、標準のXEと共通するボディパネルはルーフとドアのみとなる。

スーパーチャージャーで過給される5.0LのV8エンジンが発する最高出力は600ps。8速ATを介して4輪を駆動する。フロントトレッドは24mm、リアは73mmも広げられ、サスペンションは前後ともにダブルウイッシュボーン式だ。

アダプティブ・ダンパーとアンチロールバー、アルミ製のサスペンション・ナックル、ボールジョイントなどは一般道向けに再調整を受けている。ミシュラン・パイロットカップ2タイヤを履くアルミホイールは20インチ。巨大なカーボンセラミック・ブレーキの存在感も凄い。

オリジナルと遜色のないパフォーマンス

乗った印象としては、これまでのサーキット仕様と大きな違いは感じられなかった。そもそもXE SVプロジェクト8は、1757kgもある車重や大きなボディを持っていながら、魅力的なロードカーでもあった。高速走行も安定しておりバランスにも優れ、ほかとは一線を画す魅力的な走りが味わえた。

低速域での乗り心地は硬く、路面の細かな起伏もすべてボディに伝えることは確か。それでもアダプティブ・ダンパーは不快な鋭い突き上げを丸く削り取り、我慢できない振動ではない。スピードを上げるほどに路面の凹凸を上手に処理し、タイヤが路面を掴む感覚を伴って、充分しなやかに走らせることができる。快適に、とさえいえるほど。

パイロットカップ2の柔らかいゴムが生むグリップ力も、乾燥路面では計り知れないほど高い。限界領域まで踏み入れなければ、タイヤを打ち負かすことは不可能だろう。シートとステアリングには充分なフィードバックが伝わってくるから、グリップ任せで単調に感じられる走りでもない。

電動パワーステアリングはクイックで正確。ポルシェ911GT3ほどコミュニケーション豊かではないが、タイヤの状態はアルカンターラのステアリングを通じて把握できる。4輪駆動システムは、バランスの高さとドライバーが介入できる自由度とのバランスに優れ、コーナリングも積極的に楽しめる。

派手なエクステリアほど、リアタイヤを自由に振り回せるタイプではない。しかし常に充分なトルクがリアタイヤに伝達されているから、ステアリングとスロットルの操作で、コーナリングラインの調整も難しくはない。パイロットカップ2の特性として、濡れた路面ではスタビリティコントロールを効かせていても、気をつけた方が良いだろう。

社会性を身に着けたツーリング

ツーリングになっても、XE SVプロジェクト8の最大の魅力は、600psに71.2kg-mというエネルギーを放つスーパーチャージャーを搭載したV8エンジン。回転域を問わず、圧倒的な勢いでクルマを加速させ、そのまま天まで登る勢いでスピードを乗せていく。

0-100km/h加速は3.3秒だとジャガーは公表している。8速ATは、優秀なデュアルクラッチATほどの変速スピードや滑らかさを備えていないものの、額面通りに速い。スロットルを深く踏み込むと、チタン製のエグゾーストに仕込まれた排気音抑制のフラップが開き、痛快な轟音を響かせる。時折パンパンと破裂音も鳴らすが、人為的なサウンドとは異なる。

ジャガーXE SVプロジェクト8自体が合理的なクルマではないながら、「ツーリング」は少し社会性を身に着けた存在だとはいえる。リアウィングがなくなってもオシは充分に強いが、使いやすいクルマになったことは確かだ。

日常的に乗るクルマとしても成り立たないわけではない。ポルシェ911 GT3のようなサーキット走行も満たせる公道マシンとしての性格に近づき、オリジナルのプロジェクト8ほど、友人や家族を乗せるのにも気が引けないアピアランスを得たことは魅力でもある。

限定生産されるジャガーXE SVプロジェクト8ツーリングの台数はわずかに8台。その希少性も際立っている。

ジャガーXE SVプロジェクト8 ツーリングのスペック

価格:14万9995ポンド(2024万円)
全長:4715mm
全幅:1955mm
全高:1440mm
最高速度:299km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:9.1km/L
CO2排出量:254g/km
乾燥重量:1757kg
パワートレイン:V型8気筒5000ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:600ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/3500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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