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ポルシェ・タイカン EVのベンチマークを塗り替える

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ポルシェ・タイカン EVのベンチマークを塗り替える

ライバルは色を失う

現在フランクフルト・モーターショーで展示されているポルシェ・タイカンは、路上を走り始めれば電気自動車におけるパフォーマンスのベンチマークを書き換えることになるだろう。公式に発表された技術スペックとデータは、すべての主なライバルたちがあらゆる分野で色を失う予感を示している。

【画像】ポルシェ・タイカン 全27枚

タイカンの性能における鍵となったのは、ポルシェによれば、非同期モーターではなく永久磁石同期モーターを採用したことにあるという。非同期モーターはより安価だが大きくて重くて安定性が低い。熱管理や高効率という利点を考えれば、コスト増は正当化できるとポルシェは言う。

容量90kWhのバッテリーを搭載するタイカンの車重は約2.2トンにもなるが、現在販売されている他のどのポルシェ車よりも重心が低い。918スパイダーに匹敵し、前後重量配分は理想的な49:51に収まっている。

電子制御されるモーターの性能は、タイカンのレスポンスとハンドリングを拡大させた。このプロジェクトに関わる内部関係者によれば「クラス最高というだけでなく、既存のレベルより大幅に先へ行く」必要があったという。スロットルレスポンスは内燃エンジン車の5倍も鋭く、電子制御ディファレンシャルは機械式と比べて50倍も速く車輪の空転に対応できるという。ポルシェ・スタビリティ・マネージメントは、スポーツ・モードに設定すればその介入を制限することができる。またはエンスージアストのために完全にオフにすることも可能だ。

ニュルのタイムは997型911GT3と同等

既存のライバルたちより優れているのは電子制御システムだけではない。パナメーラ用をベースにした3チャンバー式のエアサスペンションは、高速走行時に車高が22mm低くなり、空気抵抗を減らし重心を下げることができる。路面に段差などがある状況では、20mm引き上げることもできる。

タイカンにはポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロールがオプションで用意される。これもパナメーラのシステムを使ったもので、最大横Gが掛かっている状態でも数ミリ秒で反応するアクチュエーターがボディのロールをほぼゼロに抑え、アンダーステアやオーバーステアの発生を防ぐ。さらに後輪操舵システムが、高速旋回時の安定性と低速域における取り回しの良さを両立させる。

ポルシェによれば、タイカン・ターボに搭載されている2基のモーターは、合計で最高出力680psと最大トルク86.7kg-mを発生し、0-100km/hまで3.2秒で加速するという。さらに高性能なターボSでは、オーバーブースト時に761psと107.1kg-mを発揮。0-100km/h加速は2.8秒となる。

リア・アクスルには2速ギアボックスが搭載されており、発進時には低いギア比で力強く加速するとともに、高速走行時には高いギア比でモーターの回転を下げることができる。

選択したモードによって、タイカンは四輪駆動、後輪駆動、前輪駆動のいずれにも切り替えることができる。ニュルブルクリンクでは既に4ドア電気自動車の最速ラップ記録を更新した。その7分42秒というタイムは、997型911GT3とほぼ同等だ。

比較のために挙げると、テスラ・モデルSはルーディクラス・モードを使えば、0-100km/hまで2.4秒で加速できる。しかしながら、タイカンは最大の加速性能を繰り返し発揮することができるとポルシェは主張する。話によると、ポルシェのエンジニアは26回の全開加速テストを繰り返した後、加速Gにより気分が悪くなり、それ以上のテストを続けることができなかったという。

一方、テスラのルーディクラス・モードは、ベストな加速性能を発揮するためには最適な温度とバッテリーの充電状態が求められ、何度も繰り返し使えるものではない。

高い実用性と充実した装備

さらにポルシェは、タイカンに実用性が備わっていることも確約している。最新の試験モードによる航続距離は、ターボが450km、ターボSは412km。4人乗りのほか、5人乗り仕様も用意される見込みで、フロントのボンネット下に81L、リアのトランクには366Lの荷室が確保されている。2個のゴルフバッグを余裕で収容できる。

タイカンの全長はパナメーラより短いものの、後部座席の足元には十分なスペースが設けられている。その部分にはフロア下にバッテリーパックが搭載されておらず、後部座席の乗員が足を入れることができる窪みが備わっているからだ。ポルシェはこれを「フットガレージ」と呼んでいる。これによって後部座席は長距離の移動でも大人が快適に過ごすことができる。

もう1つ、インテリアで特筆に値するのは、911並みに良好なドライビング・ポジションだろう。ドライバーの眼前には16.8インチのデジタル・インストゥルメント・パネルが搭載されており、ダッシュボード中央に10.9インチのインフォテインメント・スクリーン、その下にも8.4インチの空調コントロール用タッチスクリーンが備わる。さらにオプションとして、助手席側にも10.9インチのタッチスクリーンを装備することもできる。

その他の機能として、タイカンにはワイヤレス・ソフトウェア・アップデートが採用されており、バッテリーと充電のパフォーマンスや、インフォテインメントの機能などを、無線で向上させることができる。

タイカン・ターボの標準装備は、20インチ・アロイホイール、アダプティブ・エアサスペンション、アップル・カープレイ対応(アンドロイド・オートには非対応。ポルシェのデータによると、ほとんどのオーナーがアップル製のスマートフォンを使っているとのことだ)、ボーズ製サウンドシステム、マトリックスLEDヘッドライト、デュアルゾーン・エアコンなど。ターボSでは21インチ・ホイールとアップグレードされたブレーキ、18ウェイ電動調整シートも装備される。

世界初の800V高電圧システムを採用

タイカンはまた、800Vの高電圧システムを採用した世界初の市販車としても注目を浴びている。350kWhの超急速充電が可能であるため、わずか5分間の充電で100kmの距離が走れるようになる。発売当初は最大270kWに抑えられるようだが、それでもバッテリー残量5%から80%まで、22分30秒で充電できる。

ただし、現在これほどの性能を持つ急速充電を提供しているのは、欧州で充電施設ネットワークを展開しているイオニティだけだ。イオニティの事業には複数の自動車メーカーも出資しており、タイカンの購入者は3年間、この充電施設を無料で使用できる。英国には現在2カ所の充電ステーションがあり、今後38カ所以上の新設が計画されている。

これほどの超急速ではなくても、タイカンは車載の400V充電器を使ってバッテリーに充電することもできる。これは最大で50kWにしか対応していないが、オプションで150kWにアップグレードすることも可能だ。英国でも最近普及が進みつつある150kWの充電施設は、現在既にBPチャージマスターが提供している。ポルシェによれば、一般家庭用の11kWの充電器を使うと、バッテリー残量5%から80%まで6~8時間ほど要するという。

さらなるグレードや派生モデルの追加も

しかしながら、タイカンの性能を手に入れるためにはかなりの金額が必要だ。英国におけるタイカン・ターボの価格は11万5858ポンド(約1540万円)から、タイカン・ターボSは13万8826ポンド(約1850万円)からとなっている。ちなみにテスラ・モデルSは、航続距離610kmのロングレンジ・モデルで8万1550ポンド(約1090万円)。590kmのパフォーマンス・モデルは9万6150ポンド(約1280万円)だ。

ポルシェはタイカンのバッテリー性能に、8年間で70%以下に低下することはないとの保証を付けている。車両自体の保証は通常どおり3年間だ。

ポルシェによれば、タイカンには既に3万を超える予約が入っているという。工場の生産能力は2万台だが、「柔軟に」対応できるとルッツ・メシュケ副社長は語っている。しかしながら、納車まで1年ほど待つことになる場合もあるだろうと、メシュケは付け加えた。

ポルシェは数ヶ月以内に、より安価で低出力なバージョンの投入も予定している。パワーは抑えられるが、航続距離はターボやターボSと比べて短くなるわけではないと、ポルシェのオリバー・ブルーム社長は語っている。同社長は、タイカンも911の戦略に倣い、遅れてさらにパワフルなバージョンが追加される可能性も示唆している。

ブルームは「このPPEプラットフォームには、大きな可能性がある」と語っている。その一例として、来年後半に発表が予定されているタイカン・クロスツーリスモの名前を挙げた。「可能性の1つであるクロスツーリスモは、より広い荷室スペースとオフロード性能を備えたクルマになります。わたしは既にオフロードで試乗しました。タイカンをサーキットで走らせるのと同じくらい興奮しました」

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