もくじ
ー ワインディングで早朝ドライブ
ー 遅いクルマでも楽しめるのか
ー 刺激は薄いが、楽しみ方はある
ー パワーを使い切れる
ー 番外編:遅いが楽しいクルマたち
ワインディングで早朝ドライブ
頂を超えると、はるか彼方までうねうねと続く道が見えた。早朝のこの時間帯には他のクルマは走っていない。羊たちすらも地平線の彼方に見えるこの青いクルマに気付いていないようだ。
本能的にギアを3速に入れ、アクセルを踏み込んだ。ボンネットから雄叫びが聞こえる。さらにペダルを踏み込もうとしたが、すでにアクセルは全開であった。上り勾配がついた右コーナーが遠くに見えた。ターンイン時には平らに見えた路面は実は若干隆起しており、挙動を乱すには十分であった。
しかし、長い距離をともにしたわたしとこのマシンとの信頼関係から、まだまだ行けると判断できた。そこでわたしはアクセルを踏み続けたのだ。右足を床まで踏み込んだままノーズをコーナーの先へと向ける。ハンドルを切り足しながら、アクセルをゆるめることも考えた。
そうこうしているうちに、このコーナーを無事に通過することができた。わたしは4速へとシフトし、再びアクセルを踏んだ。早朝の日差しがスピードメーターの針に反射する。この時の速度は85km/hであった。
遅いクルマでも楽しめるのか
スーパーカーにでも乗っているかのような調子でストーリーを始めてみたが、これはわたしが数十年前にクルマに興味を持つきっかけとなった記事の筆者の真似をしただけだ。
わざわざ早起きして0.9ℓのダチア・サンデロに乗り、ウェールズでもっとも走りがいのある道にやってきたのだ。背が低く高額なエキゾチックカーではなく、英国で新車最安値のサンデロでも楽しめるのだろうか。ワールドクラスの道路と交通量の少ない自由さは何に乗っていても変わらず味わえるのか。
以前、別の記事においてクロプリーが4台の安価な英国車を使い、そう大きく違わないテストを行った。それは30年以上も前のことだが、強風の中リライアント・ロビンでセバーン橋を渡る役をくじ引きで決めていたのを今でも覚えている。
今回用意されたサンデロは最安価グレードではないが、この中級クラスのTCeエッセンシャルでもその価格は8800ポンド(123万円)にすぎない。これでもBluetooth、DABラジオ、電動ウインドウ、リモコン付きキー、USBポート、エアコンなどが備わるのだ。
静粛性や快適性もまずまずで、小さなエンジンも活発に回ってくれる。安かろう悪かろうといった感じはなく、大抵の用途では十分な実力を持ち、価格を考えればほぼ完ぺきといっていい。
刺激は薄いが、楽しみ方はある
とはいえ、運転の楽しさを味わいたいときにはどうだろうか。これはまた別の問題である。まず、普通の道ではやや遅すぎると感じた。3気筒エンジンは確かに快活だが、ギア比がトールすぎるのだ。ギアの動きも正確だが、メカニカルなフィーリングに欠ける。追い越しも一苦労で、不用意に減速すれば速度回復にも時間がかかる。
しかし、マクラーレン720Sのようにとてつもなく速いクルマに慣れが必要なのと同じく、逆の意味で慣れてしまえば良いのである。人間はほぼ無限の順応性を持っており、最初はかったるいと感じた遅さもしばらくすれば気にならなくなる。この素晴らしい道を走って見れば、どんなクルマでもそれ相応に楽しめるのだ。
もちろん、マクラーレンはおろかマツダMX-5ほどの刺激はないが、全く無いというわけではない。体でGを感じることもできるし、コーナーでのラインどりを攻めることもできる。不快なクルマや致命的な欠陥のあるクルマは論外だが、幸いサンデロはそのどちらでもない。1トンの金属の塊を走らせることの楽しさは変わらないのである。
アペックスにどれだけ正確に近づけるか。ギアチェンジをどれだけスムーズにできるか。そしてどれだけのパフォーマンスをクルマから引き出すことができるか。そんなことを追求するのがクルマの楽しみではないだろうか。またサンデロには限界走行を気軽に体感できるという魅力もある。スーパーカーではほぼ不可能だろう。
パワーを使い切れる
そしてさらにふたつ。サンデロほど遅いクルマに乗っていれば、道がさらに空いて見えるはずだ。スーパーカーに乗っている時には前車がみるみるうちに近づいてくるではないか。サンデロなら道路を独り占めできる時間が増えるのである。
また、スーパーカーを運転することは非常に自制心が求められる。交通法規を守るためには実力のうちほんのわずかしか使えないのだから。それに対し、サンデロではいつでもどこでもそのパワーを解放できる。
わたしが悟りを開いたのではないかと驚くことなかれ。もちろんわたしは速い車が好きだ。ここで言いたいのは、必ずしも速い車に乗っていなくても、それ相応の楽しみが得られるということである。早起きしてサンデロに乗りドライブしたくなるかどうかは別としても。
今後、制限速度を超えた瞬間にクルマが自動的に警察に通報するような世界が訪れるかもしれない。そうしたら、クルマの楽しみは完全に法律の範囲内で、ということになる。それでもまだまだ運転を楽しむことができるということが確認できた。
番外編:遅いが楽しいクルマたち
ルノー・トゥイジー
もちろん、このクルマで雨の2車線道路を走るのは楽しくない。しかし、街中では四輪車として唯一無二の楽しさを味わえる。狭い隙間をすり抜けることができ、ハンドリングも最高だ。
初代フィアット500
クルマがこれだけ小型かつ軽量であれば、多くのパワーは必要ない。リアエンジン・リアドライブかつショートホイールベースゆえ、初期のポルシェ911のような挙動を見せる。
シトロエン2CV
水平対向エンジンや独立式サスペンションが特徴のクルマ。2CVはまるで台風の中のボートのようにロールする。しかし、低重心ゆえの運動性も見逃せない。
プジョー205
205の中で乗る価値があるのはGTIだけだとお思いかもしれない。そんなことはない。GTIの魅力は軽さだが、下位グレードはさらに軽いのだ。たとえば、205XSなどはおすすめだ。
スマート・フォーツー
比較的新しいクルマだ。驚くかもしれないが、初代フィアット500と同種の魅力を持ち、その実力はさらに高い。数年前にこのクルマでウェールズを横断したが、今でも思い出すほど素晴らしい走りだった。
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