■スタイリッシュなSUVの投入で、生産規模の限界を超えることはできるか
先日、SUBARUの最新クロスオーバーSUVである「フォレスター」と「SUBARU XV」を山形県・肘折温泉をポイントとして雪上試乗するという機会に恵まれた。実際にハンドルを握ったのはフォレスターだったが、その際に感じたのは「SUBARUのSUVは、さほど差別化されていない」ということ。この両車、パワートレインについては排気量の違いこそあるが、e-BOXERと呼ばれるマイルドハイブリッドシステムはエンジンからして共通であるし、シンメトリカルAWDなど駆動系は同じものを使っている。スタイリングやパッケージングで差をつけているとはいえ、雪上に並べてみると、どうにもキャラが被っているという印象を受けた。
フォレスターとブリザックで冬に山形県の肘折温泉を走って感じたこと
そう感じた理由を整理していると、ひとつの仮説にたどり着いた。
2018年、SUBARUのグローバルでの生産台数は1,019,364台。7年ぶりに前年割れをしたとはいえ、年間100万台の規模は死守している。以前、SUBARUの生産能力について取材したのだが、同社においてはこの規模というのは目一杯の状態に近い。将来的にも120万台の規模感の生産能力となっている。つまり、現時点ではトータルで100万台+αとなる商品企画があれば企業としては成り立つといえる。そうしたムードがエンジニアの間に漂っていることで、たとえば「30万台+30万台+30万台+10万台の商品があれば事足りる」といった意識が、表に出ないまでも深層心理として生まれているのではないだろうか。手堅い商品展開で十分という意識が、いかにもSUBARUらしいと感じられるキャラに収めてしまっていて、冒険できなくなっているのではないか、という仮説だ。
この仮説を、マーケティング担当者に率直に伝えると、否定をすることはなかった。しかし、手堅い商品企画で安定して100万台の規模を維持するというのは、激動の自動車市場においては難しいだろう。ひとつの商品で年間50万台、100万台を目指すといったチャレンジをしておかないと先細りになってしまいかねない。3本柱でバランスを取るという商品企画ではなく、どれか1本でも支えられるというくらいの気概が、これからの自動車業界をサバイブする上では必要だと思う。
そんな話をした矢先、SUBARUから新しいコンセプトカーが登場するという発表があった。3月に開幕するジュネーブモーターショーで「SUBARU VIZIV ADRENALINE CONCEPT(スバル ヴィジヴ アドレナリン コンセプト)」というコンセプトカーを世界初公開するのだという。たった一枚の画像が公開されているだけだが、そのマッシブで、スタンスの効いたシルエットはこれまでのSUBARU車にはないものだ。フォレスターやSUBARU XVのパッケージングは、デザイン代よりもラゲッジやキャビンのスペースを優先している印象を受けるが、この新コンセプトカーはデザインコンシャスであり、スタイリングファーストの提案と見える。まさに、いまのSUBARUに足りないニューキャラクターの提案である。
現状のラインナップで100万台のスケールは維持できているが、新キャラによってその壁を突破しようということだろうか。少なくとも、このスタイリングがどの従来モデルの後継とも思えないということは、ラインナップを増やす意思を示したということであろう。年間120万台の生産規模に向けて、SUBARUはきちんと次の手を打ってきたのだ。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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