もくじ
ー 積算10577km 滑走路で911を試す
ー 現代911の完勝
ー おどろくばかりの完成度
ー テスト車について
ー テストの記録
長期テスト ポルシェ911(4) あえて称える、クルーズコントロールの不可欠さ
積算10577km 滑走路で911を試す
現代的で速いが、本質的には毎日乗れるスポーツカーである911。今後、現在のノーマルモデルと過去の上級モデルを比較してみようと思っている。今回は過去に何度も試したように、ブランティングソープ・プルービング・グラウンドで両者を比べてみた。
最初は911をテスト予定はなく、ただ単に乗ってきただけだったのだが、ボーイング747が離陸できるほど長い距離のコースがあれば、走りたくなる気持ちを抑えられないのも仕方あるまい。
ここで非常に興味深いことに、わたしは21年前、ここで最速のクルマを探すテストを行っており、そのとき見事1位に輝いたのが911GT2だった。993世代のGT2は当時から特別な存在で、生産された192台の大半がルマン仕様のスペックを備えるレースカーだったのだ。ポルシェが製造した公道バージョンは57台のみで、右ハンドルはわずか13台、英国向けはそのうち6台だったのだから驚きだ。
昨年、RMサザビーズのオークションで落札された左ハンドル仕様のモデルは185万ポンド(2億6700万円)だった。当時われわれが所有していた英国仕様の右ハンドルが13万1000ポンド(1894万円)だったから、考えると非常に惜しいことをしたものだ。
現代911の完勝
当時のテストではどちらが運転するかで一悶着あったものの、最終的に最高速度は278km/hとなった。では年1万台以上が生産されている、標準仕様の現行911はどうだろうか。
先に言っておくと、テストは完全に公平ではなかった。GT2にはひとりしか乗っていなかったが、911では速度計を撮影するため、われらが勇敢なフォトグラファーであるパピアー氏が同乗していた。この点ではGT2にアドバンテージがあった。
しかも、今ではコーンが配置され、安全マージンが強制的に確保されているため、GT2の時代よりもコースが短くなっている。さらにGT2のときは、スペースを最大限活用するため、何度もウォームアップを繰り返して適切なブレーキングポイントをさぐったが、今回はとりあえず、走ってブレーキングして、盛大なマージンを残して止まったような形だった。
だが、結果は写真でご覧の通りだ。速度計は290km/hを示しており、GPSの補正後の記録は285km/hだった。もっと本格的に試せば、実際に290km/hを出すことも可能だっただろう。
おどろくばかりの完成度
最も印象的だったのが、今回のテストでは993の時と違ってドラマのかけらもなかったことだ。993では、急激に加速し抗力からなる空気抵抗の壁に苦しむようなストーリーがあったが、今回の911はスムーズに加速を続け、空気を切り裂いて1kmを12秒で駆け抜けるような速度まで何気なく到達してしまった。あっけない話だ。
しかも、テスト後は同じようにスムーズに、わたしを自宅まで送り届けた。これが993だったら、大喜びで郊外に出かけ、タイトコーナーを攻めていたことだろう。
ここで述べたことは、なにも993GT2をおとしめたかったからではない。今も世界最高のクルマのひとつであることは変わりないのだ。しかし、ここ20年で現代の自動車はとてつもないレベルに達してしまったことは否定できない。
テスト車について
モデル名:ポルシェ911 カレラS
新車価格:8万5857ポンド(1277万円)
テスト車の価格:10万8028ポンド(1606万円)
テストの記録
燃費:14.4km/ℓ
故障:無し
出費:無し
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