もくじ
ー 助手席試乗 舞台はホッケンハイム
ー ファーストインプレッション
ー 高速性能
ー 新ウエットモード
ー 素晴らしい進化
助手席試乗 舞台はホッケンハイム
助手席に座った新型911の背後から聞こえてくるのは、フラット6のノイズか、それとも、ドライバーがその450psのパワーでオーバーステアに持ち込もうとして、冷えたタイヤが発する悲鳴なのか分からないが、ホッケンハイム周辺で行われた今回の初試乗では、新型ポルシェ911 カレラSもこれまでの911の伝統を受け継いだ素晴らしいモデルだと安心することができたことを先にお伝えする。
もちろん、音は意図的なものだ。ポルシェのR&D部門を率いるミヒャエル・シュタイナーが言うとおり、1963年のデビュー以来、911は「ブランドを象徴するモデル」であり続けているのだ。
992世代となる新型911は、当然そのデザインとドライビングダイナミクスの双方で進化しているが、そのなかには変化も含まれる。911の伝統を守りながら新鮮さを感じさせるそのボディの下には、数多くの細かな改良が行われているのだ。
ポルシェのエンジニアたちは、こうした細かな変更が大きな違いをもたらすと固く信じている。
その良い例がシャシーへのエンジン搭載方法だろう。1963年の誕生以来、これまですべての911でエンジンはクランクケースに取り付けられたブラケットを介してシャシーへと固定されていたが、今回の新型ではエンジンは長手方向のメンバーに直接マウントされることで、20cmほどそのポジションを前進させている。
この変更は、エンジン振動の抑制とスタビリティの向上を目的に行われている。狙いはある程度達成されるとともに、アルミニウムの使用量を増やすことでさらなる軽さと強さを実現した新型シャシーとの組み合わせることで、さらに大きな違いをもたらしているとポルシェは話す。
では、こうした改良はどれほどの違いを作り出しているのだろう? ポルシェによれば、ニュルブルクリンクのラップタイムで、新型カレラSは先代比約5秒速くなっているとのことだ。
ノルドシュライフェにおける7分25秒というタイムは素晴らしいが、新型の量産モデル(以前試したのは最終プロトタイプだった)を初めて試すことができたのは、ドイツにあるもうひとつのF1サーキットだった。
ファーストインプレッション
ホッケンハイムのパドックで見る911は、そのスタイリングとインテリアの双方で明らかに進化している。
助手席からの印象では快適で広々としたクルマに感じられ、キャビンでは新たに設置された10.9インチのインフォテインメントスクリーンが目を引くとともに、ダッシュボードにも7インチ・デジタルスクリーンがふたつ配置されている。
だが、ステアリングホイールの正面にあるのは、伝統的なアナログ式回転計だ。
ラグジュアリーと伝統的スポーツカーのバランスというのが、新型911開発の主要なテーマであり、「スポーティなモデルでありながら、日常生活での使い勝手を向上させたかったのです」とシュタイナーは話している。
そのため、究極のドライビングから快適なクルージングまで、このクルマが持つパフォーマンスの幅をさらに拡げるべく、新型911では新デジタルシステムとドライバーエイドを採用している。
例えば、発売時点では唯一の選択肢となる新型8速デュアルクラッチPDKギアボックスだが、ポルシェによれば、低速でのより速いシフトチェンジを実現するとともに、高速域では燃費向上にも寄与しているとのことだ。
ドライバーが勢いよくアクセルを踏み込むと、新型911はギアを固定して高回転まで引っ張ることを選択し、さらにGPSとこのクルマに設置されたセンサーが集めたデータを使って、予想される交通状況や、カーブや峠道といった道路条件をもとに、最高のレスポンスで変速を行うべくシフトパターンを変化させる。
高速性能
広大なホッケンハイムサーキットでレーシングドライバーがステアリングを握る新型911に乗って、短時間ではあるが、このクルマの究極のスポーツ性を垣間見ることができた。
冷えたタイヤを温めるためもあって、スポーツプラスを試す前にノーマルモードで周回を行ったが、ノーマルモードでも、引き上げられたレッドゾーンと3ℓの排気量を持つツインターボ・フラット6の実力を感じることができた。
先代から30psアップとなったパワーと、同じく44.9kg-mから54.1kg-mへと引き上げられたトルクによって、コーナーからの脱出スピードは凄まじく、この8速デュアルクラッチのギアボックスが、さらなるレスポンスを発揮すべくギアをホールドする様子を感じとることができた。
伝統的な911のバランスは明らかで、新型のよりダイレクトになったステアリングは、ドライバーがブレーキペダルを緩めコーナーへと飛び込んでいく時の自信を反映しているようだ。
新型911ではタイヤとホイールサイズが変更されており、フロントとリアで、それぞれ20インチと(よりワイドな)21インチの異なるサイズが選択されている。
先代911 GT2 RSとGT3 RSでしか見ることの出来なかったこのモータースポーツ譲りの設定は、新型911のバランスとトラクション性能を向上させるとともに、リアエンジン/リア駆動の911では常に注意しなければならないタイヤ温度のバラつきを抑制することにも寄与している。
新ウエットモード
最後にウエットハンドリングトラックへと舞台を移し、新型911の特徴でもある新たなウエットモードを試してみることにした。
フロントフェンダー内部に取り付けられたセンサーが路面から巻き上げる水滴を検知し、セーフティアシストの起動準備を行うとともに、ドライバーにウエットモードを選択するように促す。
ウエットモードが選択されると、トラクションコントロールとブレーキアシストの介入度が増し、ブレーキのバランスもフロント寄りになるとともに、スロットルレスポンスがやや鈍くなり、リアスポイラーは最大のダウンフォースを発生すべく角度を変える。
ノーマルモードで1周してみたが、本物のウエットコンディションではご免被りたい、広大なサーキットだからこそ許されるような運転で何度もドリフトを体験した。
だが、ウエットモードを選択すると、如何にドライバーがドリフト状態に持ち込もうとしても、強力なトラクションコントロールやその他システムが介入し、新型911はノーマルモードとはまったく異なる挙動を見せた。
ポルシェでは、徹底したシャシーとタイヤ開発により、ウエットコンディションでのハンドリングと安全性が改善されており、それがこの新しいウエットモードではさらに顕著になるとしている。
素晴らしい進化
助手席でのF1開催サーキットの数周と、ウエットコンディションの駐車場だけでは、もちろん、この新型モデルに対する評価を下すには十分ではないが、それでも新型911には好印象を持った。
新型は進化するとともに、これまでの911と変わらない姿を見せてくれた。新型タッチスクリーンとディスプレイを持つキャビンと新しいドライバーアシストは、このクルマをさらに快適なモデルにしている。
こうしたシステムは、911の凄まじいほどのパフォーマンスを味わい尽くしたいと望むドライバーのために開発されたものでもあり、新型911のステアリングを握るチャンスがあれば、是非試してみたい。
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