もくじ
ー コードネームBP23 F1を上回る最高速
ー ひとりの顧客の要望により計画が浮上
ー 最高速は400km/h級に
ー 最高速達成には課題も
コードネームBP23 F1を上回る最高速
BP23のコードネームで呼ばれてきたマクラーレンの次期型ハイパーカーは、「スピードテール」という名称であると確認された。1993年のF1の後継車ともいえるこのクルマは、今年中の公開が予定されている。
マクラーレンによれば、この名称は、「マクラーレン史上最速であるとともに、究極的な流線形デザイン」を表現するものだという。スピードテールの最高速度については明らかになっていないものの、F1の391km/hを上回るものとなるようだ。マクラーレン史上「最も豪華な」モデルであるともしている。
スピードテールに搭載されるV8ツインターボエンジンはハイブリッドシステムに組み込まれ、その最高出力はF1の636psを大きく上回る。
このモデルはP1やセナに続く、マクラーレンのアルティメットシリーズに属する3番目のモデルだ。F1にインスパイアされた、中央に運転席をおく3シーターのレイアウトが特徴となる。
ひとりの顧客の要望により計画が浮上
マクラーレンのマイク・フレウィットCEOはAUTOCARに対し、その開発はまだ先が長いと明かした。「われわれは720Sのボディでパワートレインのテストを行なっています。完全なボディを持つプロトタイプはまだ製造されていません」
税抜き160万ポンド(2億3000万円)という価格にもかかわらず、全106台が2016年11月の公式アナウンス前に完売しているとのことだ。これらの顧客は公式発表前に実物を見る機会を与えられ、2019年後半にマクラーレン・プロダクション・センターで生産される。
この3シーターマクラーレンの復活は、あるひとりの顧客のリクエストに端を発するという。すべての個体がマクラーレン・スペシャル・オペレーションズによりパーソナライズされるとのことだ。
サーキットを強く意識したセナやP1とは異なり、スピードテールはよりグランドツアラー志向であるため、GTR仕様は用意されないだろう。
興味深いことに、フレウィットは今年、「センターシートのサーキット向けマシンの開発は興味深い計画です。サーキットに最適な上、公道走行のための保安基準の適合も簡単でしょう。これは公式に計画されているわけではありませんが、検討しているのは事実です。MSOへの依頼が無いことに逆に驚きました」と、コメントしている。
最高速は400km/h級に
マクラーレンは3月のジュネーブ・モーターショーにおいて、スピードテールがマクラーレン史上最速であると認めた。F1の最高速であった391km/hに達しても、「まだまだ加速を続ける」とのことだ。
1998年、ル・マンのチャンピオンで現在ブガッティのテストドライバーを務めるアンディ・ウォレスが操るマクラーレンF1が389km/hを記録した。これは1993年にナルド・サーキットで記録した372km/hを上回るものだ。
マクラーレン・アルティメット・シリーズのディレクターを務めるアンディ・パーマーはAUTOCARに対し、このクルマの空力性能が「加速性能を飛躍的に向上させる」と語った。
しかし、セナとは異なり、スピードテールはサーキットでのパフォーマンスに特化したモデルではない。その代わり、ハイパーカーとしてトップレベルのオールラウンダー性を持つという。
マクラーレンがスピードテールを「最速」と主張する根拠がラップタイムではないとしたら、それは加速性能または最高速ということになるだろう。
最高速達成には課題も
マイク・フレウィットはジュネーブ・モーターショーにおいて、「非常にパワフルです。(1000psの)P1 GTRを超えるパワーを持ちます」とAUTOCARに語った。そして、「F1よりも乗降性にすぐれ、運転感覚も自然」とのことだ。
ただし、ハイパワーやそれに伴うハイスピードには困難がつきものだ。パーマーは「タイヤやその他のシステムの限界」に達しているという。実際、400km/超の世界は320km/hよりもタイヤ、エネルギー、空力の点で別次元といえる。
マクラーレンにとってのもうひとつの悩みの種は、その最高速テストを行う場所の選定だ。20年前にF1のテストに使った8kmのメインストレートを持つエーラ・レッシエンは問題外だ。なぜならこのコースを保有するフォルクスワーゲンはブガッティを傘下に置き、シロンの最高速テストに使っているからだ。
一方、ナルドにあるようなボウル型の高速テストコースはスピードテールの限界を試すには不十分だ。パーマーは「ターマックでテストしたい」と語ってはいるが、世界最長級の滑走路では足りず、公道ではドライバーの安全が確保できない。結局のところ、ボンネビルのような塩湖でおこなうしかないかもしれない。しかし、そのような場所ではグリップレベルが低いため、タイヤが問題となる。
そしてブガッティはエーラ・レッシエンを顧客向けに使用しているが、マクラーレンはこのスピードテールのオーナーが限界に近い速度を体感できる場所を用意する必要があるだろう。
なおAUTOCARは以前にも、このクルマの開発風景を取材している。くわしくは「【初取材】マクラーレンBP23 3座ハイパーGTの開発現場」をご覧いただきたい。
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