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回顧録 日産GT-R vs ポルシェ911 vs アウディR8 前編

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回顧録 日産GT-R vs ポルシェ911 vs アウディR8 前編

もくじ

前編
ー 911にとって最大の脅威であったR8
ー 環境性能も意識した911
ー セグメントを超えた勝負
ー GT-Rの圧倒的な速さ

ウサギとカメ ポルシェ911とスマート・フォーツーでかけくらべ 前編

後編
ー なぜ911は敗れたのか
ー RRの優れたトラクション
ー エンジン、ステアリングはR8が優位
ー 全てを制するGT-R
ー 新たな王者の誕生

911にとって最大の脅威であったR8

いつもならポルシェ911が絡むテストの結果予想は、テストそれ自体と同じくらい簡単だ。

新型911はライバルの挑戦を堂々と受けて立ち、多少の変なクセは見つかったものの圧倒的な強さで対決を制した。以上──という具合だ。けれど今回は、そう簡単に話は進みそうにない。その理由もまた非常に簡単である。997が登場した2004年以降、ライバルたちの速さはとんでもなく向上してしまっているからだ。

例えば今回ご登場いただいたアウディR8などは、45年前に911が誕生して以来の最大の脅威だろう。アウディが腰を据えてこのまったく新しいスーパースポーツカーの開発に着手したのは、ポルシェが997を発表しようとしていたまさにその時であり、当時の彼らの念頭にあった目標はただひとつ、打倒ポルシェ911だったはずだ。

そして発表からわずか1年でR8の驚異的な成功は明白になり、インゴルシュタットの参謀たちが完璧に標的をとらえたことが証明された。

R8の存在だけでも、現在、英国における911の売り上げが35~40%落ち込んでいる原因のかなりの部分を負っているであろうし、しかもそれはアウディが911のベースモデルより15%も高い値付け(英国での場合)にもかかわらずである。

環境性能も意識した911

それに対してポルシェが採った反撃の一手が、今、目の前にあるクルマである。

外見上の変更は本当に見落としてしまいそうなほどわずかで、ドアミラーが多少大きくなり、19インチ・ホイールのデザインが変更され、前後バンパーのスタイルが微妙に変わった程度だ。

しかし、それは決してポルシェが自社を代表する1台を造形するにあたって仕事をサボったという意味ではない。

新型は従来型に比べて単純に動力性能が向上しただけでなく、大幅にクリーンにもなっている。それはポルシェが、同社の未来に対する不安がいっそう増している現代社会のなかで、今後も自社のクルマを適切な選択肢として残していこうとしている意志の表れなのである。

これは決してバイザッハの製品に対するリップサービスなどではない。3.6ℓのベースモデルは今までよりも30psも出力が向上していながらCO2排出量は242g/kmに抑えられている。

さらに今回テストするカレラSは、390psの出力と42.8kg-mのトルクを誇るさらにパワフルなエンジンを搭載していながら、CO2排出量は旧モデルより大幅に低減して、たったの250g/kmにすぎないのだ。

アウディR8と並べると(R8の出力は420psでCO2排出量は349g/km)これは比較にならないほど優秀な数字であり、しかもそれは今回の911の切り札であるPDKトランスミッションについて言及する前の話である。

PDKを選択すると、マニュアルシフトのカレラSはその価格の1376万円に75万円が加算される。しかしそれと同時にCO2排出量はさらに減少し、わずか240g/kmにまでなるのだ。

これで加速時間が20分の1秒ほど向上するのだから、お買い得としか言いようがない。PDKを装備したカレラSの公称0-100km/h加速タイムは4.5秒で、マニュアルシフトのR8の公称値にわずか0.1秒しか後れを取っていない。

セグメントを超えた勝負

そういうわけで911とR8との対決は、世界でももっとも自然に対立関係が理解できる典型的なマッチメイクといって差し支えない。

そして今回は特別ゲストとして日本から日産GT-Rにも参加していただき、この激論に手榴弾を一発放り込んでもらうことにした。ご存じのとおり、GT-Rは本誌の比較テストで911ターボを破った実績を持つ。

そのGT-Rだが、英国ではまだ発売されておらず、さらに早くとも来年の3月までは日産が英国の価格表にその項目を記入する予定もない。

だが、その際に上る土俵は理論的にはカレラSやR8と同じものとはならないはずで、価格は最高でも1100万円ほどで、現実的にはおそらく1000万円あたりに落ち着くと思われる。どちらにせよ、価格の点では今回のライバル2台よりも、少なくとも300万円以上は下回ることになる。

それではなぜ今回のテストに、ほかの2台と同じセグメントではないと明確にわかっている、しかもまだ英国では発売されておらず、その登場まであと半年はかかるクルマを加えたのか?

その答はこうだ。GT-Rはごく単純にわれわれが今まで運転したなかでもっとも意味深いスポーツカーの1台であり、したがって新型911が参加するこのテストに含めないのは重大な見落としとなる可能性が高い。

特に英国日産が最近マスコミ向けに評価用試乗車を用意してくれるようになり、わざわざ並行輸入車を用意する必要がなくなったとなればなおさらのことだ。なによりもクルマ好きとして、300万円は安いGT-Rが911やR8と対等に張り合えるのかを知りたいではないか。

GT-Rの圧倒的な速さ

ところが、だ。「対等に張り合う」などとんでもない話だった。これから始まる対決を前にワクワクしているところを申し訳ないのだが、この日産は静かに開けた公道上で、まるで鼻であしらうかのごとくほかの2台を圧倒してしまったのである。

実をいうと、そのときの路面は水が流れるほどのヘビーウェットで、日産の四輪駆動が魔術を存分に発揮させるには絶好のコンディションではあった。それにしたってGT-Rがロケットのように対戦相手を置き去りにして行ってしまったのを目の当たりにしたときには、残された2台こそ対等に張り合えない不適格なクルマなのかと思わずにはいられなかった。

これまで対決テストの場において、最初の数分間でこれだけ迅速かつ完璧に、自らの圧倒的な優位というものを見せつけたクルマがほかにあったか、わたしはちょっと思い出せない。

もっとも、われわれにはすでにその先まで読めていた。正直にいうなら、今回のテストでGT-Rは常に型破りな強さを発揮したのだが、それは今回のテストに招待するずっと前から予想できていたことだった。

不明だったのはむしろ911とR8が互いにどこまで戦い抜けるかであり、そして最終的にはそのほうが問題としては緊迫したものになるだろうと予想していたのだ(パンツを濡らしそうなほど圧倒的なGT-Rの魅力ほどではないにせよ、こちらも多少の予想はついていたのだが)。

後編へつづく

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