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スペイン人ライターのF1便り:地獄の底から“フォーミュラ1.5”まで這い上がったマクラーレン

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スペイン人ライターのF1便り:地獄の底から“フォーミュラ1.5”まで這い上がったマクラーレン

 スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。2019年シーズンは大きく飛躍したマクラーレン。以前の低迷から抜け出すきっかけとなった要因を語る。
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 先日のF1第20戦ブラジルGPで、マクラーレンのカルロス・サインツJr.はチームにとってほぼ6シーズンぶりとなる表彰台を獲得。マクラーレンはコンストラクターズ選手権で4位の座を確保した。これまでマクラーレンがトップ3につけたのは、2014年のオーストラリアGPでのことで、ケビン・マグヌッセンが2位、ジェンソン・バトンが3位を獲得した時だ。

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 それ以降、状況はかわり、マクラーレンはフェラーリ以外のすべてのエンジンマニュファクチャラーと協業してきた。皮肉なことに、チームは2021年からのメルセデスとの新契約にたどり着くまでに、非常に長い道のりを辿ってきた。いまのマクラーレンは、中団チームのトップ……いわゆる“フォーミュラ1.5”の頂点に位置しているのは明らかだ。

 F1.5のコンセプトは、現在すべてのF1チームが優勝を目指して戦えていないことを指している。理由は簡単で、中団チームが実際にメルセデス、フェラーリ、レッドブルに挑戦し、脅威を与えることが不可能だからだ。しかしながらマクラーレンは、この状況を打破し、“トップ3”チームに加わることができるチームになろうとしている。マクラーレンは2018年に基礎を築いた後、2019年に真に生まれ変わったのだ。だがF1で2番目に成功したチームのマクラーレンが、復活した鍵は何だったのだろうか?

 まず第一に、もちろんエンジンが変わったことだ。マクラーレンはホンダとはうまくいかなかった。時代は変わっており、マクラーレン・ホンダがシーズンを席捲した1988年のようにはいかなかった。優れたシャシーとエンジンだけでは十分ではない。ふたつの要素が適切に合致しなければ、連携はうまく機能しない。

 ルノーは、そのパワートレインが特に優れているわけではなかったものの(ルノーのエンジンは実際には2019年のエンジンのなかで最も非力だという声もある)、マクラーレンにとってより楽な相手だった。マクラーレンがメルセデスエンジンへの再度の切り替えを終えたら、状況は非常に興味深いことになるだろう。

 そしてふたつ目はドライバーだ。2018年までレギュラードライバーだったフェルナンド・アロンソは、チームにネガティブな影響を与えていた。アロンソは優れたドライバーだが、彼の才能と世間へのイメージが、マクラーレンが再建途中にあるにもかかわらず、チームに対するメディアの注目を引きつけ過ぎてしまったのだ。

 アロンソのようなベテランドライバーに代わり、2019年はハングリーな若手ふたりのドライバーを擁したことで、メディアの関心は減り、チームは必要な余裕を持つことができた。


 そしてドライバーとそのハングリー精神について言えば、サインツとランド・ノリスは、彼らのハードワーク、野心的な目標、明らかな才能によって、ウォーキングに新たな風を吹き込んだ。また、ふたりのドライバーは良い仕事上の関係を築いており、環境の向上に貢献している。アロンソがインタビューに現れ、すべての予選セッションでストフェル・バンドーンを打ち破ることを全員に思い出させていた頃とは非常に対照的だ。
 また、マクラーレン成績向上のもうひとつの大きな理由が、MCL33よりMCL34の方が競争力のあるパッケージとなっていることを、公平に指摘しておくべきだろう。チームは2018年の早い段階で、将来のチャンスをものにするため、翌年のマシンに集中していた。現在の状況を見る限りその戦略はうまくいっているようだ。

 これは、パット・フライ、アンドレア・ステラ、最近ではジェームズ・キーといった優秀な人材を抱える技術チームの仕事のおかげでもある。チーム代表に就任したアンドレアス・ザイドルのことも付け加えるべきだろう。彼は元々ポルシェ・モータースポーツ全体を率いることになっていた。それにもかかわらず、マクラーレンを“救う”ために、その非常に魅力的なポジションを諦めたのだ。

 ザイドルにマクラーレンを救えるかどうかは時間が経てば分かるだろうが、その兆候は非常にポジティブなものだ。ザイドルのリーダーシップは人気があり効率的でもあるので、マクラーレンファンに希望を取り戻すだろう。

 2019年シーズンのマクラーレンは優れた仕事をしており、これまで行われた20戦中15戦でポイントを獲得している。またそのうち7戦で2台ともトップ10内のフィニッシュを果たしている。

 実際のところ、コンストラクターズ選手権4位という成績は、2012年以来のベストリザルトなのだ。ほとんどのレースにおいて、マクラーレンのマシンは中団チームのなかで最高であることは間違いなく、最終結果は予測可能だった。サインツのブラジルGPでの表彰台は、通常の出来事というわけではなかったかもしれない。フェラーリの同士討ちやハミルトンの接触&ペナルティなどレース終盤の混乱によってサインツがトップ3に入ることができたからだ。

 マクラーレンからは競技面で学ぶべきことがある。実際チームはマシンから最大の性能を引き出すことができている。F1ではチームがチャンスを逃すところをよく目にするが(ハースは大抵そうだ)、ここがマクラーレンに感銘を受ける部分だ。

 チームがより優れた取り組みを行ってきているのは間違いない。しかし私は、アロンソの存在がチームの状況を難しくしていたということを思い出さずにはいられない。同じことが以前のフェラーリでも起きていたのではないだろうか?2007年のマクラーレン、さらにWECトヨタにおいても……。アロンソが偉大なドライバーであることに間違いはない。だがザク・ブラウンがマシンに乗せたいと思うタイプの人間ではないと思う。ではサインツとノリスは?私は彼らがトップで戦うところを楽しみにしている!

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