マックス・フェルスタッペンの優勝が期待されたシンガポールGP。ところが土曜日の予選ではフェラーリが予想外の速さを発揮し、シャルル・ルクレールが第13戦ベルギーGPから3戦連続ポールポジションを成し遂げた。それに対しレッドブル・ホンダは、フェルスタッペン4番手、アレックス・アルボン6番手が精いっぱいだった。いったい何が起きたのか。テクニカル・ディレクターのピエール・ワシェに緊急インタビューを行なった。
――予選は予想外の苦戦を強いられました。何が原因だった?
ピエール・ワシェ(以下、ワシェ):わからない。今の段階では、まだ説明がつかないね。
F1シンガポールGP予選:覚醒したルクレールがポールポジション奪取。レッドブル・ホンダはライバル勢に及ばず
――フェルスタッペンは「マシンバランスはいいのに、グリップがない」と言っていました。
ワシェ:そう。まさに、そういう症状に見舞われた。
――そしてそれがなぜなのかは、現時点ではわからないと。
ワシェ:そういうことだね。
――ルイス・ハミルトンとトップタイムを争っていた初日は、そうではなかった?
ワシェ:いや、グリップ的にはギリギリだった。そもそも市街地コースの走り出しで、路面コンディションは十分なグリップを期待できるものじゃなかったしね。
――それが二日目の予選当日には、グリップはかなり改善されていたはずです。
ワシェ:そうかもしれない。おそらくそうだったんだろうが、われわれはそう感じられなかった。というかライバルたちの方が、路面の改善をより多く享受できたということなんだろうね。あるいはわれわれがやらなかった、何か他のセッティングを施したか。
――フェラーリの速さには、驚かされた?
ワシェ:かなり、驚かされたよ。はっきり言って、予想外だった。
■空力アップデートで大幅に進化したフェラーリ
――ここから投入した新しいノーズが、機能したということ?
ワシェ:うまく働いてるようだね。もちろんノーズだけでなく、外から見えない部分にもいろいろ改良を加えているに違いないが、その種の空力アップデートが当たったんだと思う。それ以外の理由は、あまり考えられない。
――フェラーリはこれまでダウンフォースが足りず、そのため低速区間を苦手としていた。その欠点が、解消された可能性がある?
ワシェ:新型ノーズの導入で、フロントのグリップが確保できた。その結果、前後のバランスを取るためにリヤウィングも立てるようにしているようだ。レッドブルと比べても、最高速がいつもほど伸びていないからね。
――この状況では、決勝レースもあまり楽観的になれない?
ワシェ:だと思うね。決して簡単じゃない。メルセデスは、ロングランペースがものすごくいいしね。
――とにかくこの予選結果は、想定外だったと。
ワシェ:想定外だったし、ものすごくガッカリしているよ。フェラーリがここまで、速くなってくるとはね。この短期間に、フェラーリは長足の進化を遂げたということだ。シンガポールから来週のロシアにかけての2連戦でやれることは限られるけど、10月の日本GPまでには、何とか態勢を立て直さないと。
――フェラーリが市街地サーキットでも速くなったということは……。
ワシェ:もはや苦手なサーキットは、なくなったということだね。
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