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SRO代表ステファン・ラテルに聞くGTカーの世界と未来(1):アジアの現況と新規定GT2カーとは?

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SRO代表ステファン・ラテルに聞くGTカーの世界と未来(1):アジアの現況と新規定GT2カーとは?

 GT3カーを生みだし、いまや世界各国でさまざまなGTカーのレースをプロモートしているSROモータースポーツ・グループ。1990年代から現在まで、GTカーレースの中心にあるSROの創設者にしてCEOのステファン・ラテルに、ブランパンGTワールドチャレンジ・アジア富士戦の現場で独占インタビューを行った。ラテルが見るいまのGTレースの現状、そして将来のプラン、日本におけるGT3レースについてなど、さまざまなことを聞いた。

■ブランパンGTワールドチャレンジ・アジアの現状には「満足している」
Q:今年でブランパンGTワールドチャレンジ・アジアは3年目を迎えましたが、どんな印象をもっていますか?
ステファン・ラテル(以下SR):とても満足しているよ。ベンジャミン(フラナソビッキ。ゼネラルマネージャー)、ポール(ヤオ。副ディレクター)を中心にチームは素晴らしい仕事をしてくれている。GTアジアがそれまであったとはいえ、ゼロから選手権を立ち上げるのはとても難しいもので、そのなかで我々はとてもレベルが高いアジアのシリーズを作り上げることができた。グリッドの内容も充実しており、日本はもちろん中国、マレーシアなど、環太平洋のドライバーが競い合う環境を作り上げられたのは本当に素晴らしいと思う。

ブランパンGTワールドチャレンジ・アジア:富士戦レース2は12号車アウディが激戦を制す

特に今年、レギュレーションを変更してチームオーナーにもリーチできるよう、1台につきひとりのドライバーは必ずアジアの国籍をもつドライバーが乗らなければならないようにしたが、これが最も大きな成功ではないだろうか。今季、ヨーロッパのドライバーは62人中12人しかいない。アジアのレースなのに、表彰台に6人のヨーロッパ人が乗るシーンは観たくないだろう(笑)?

今後も大きなポテンシャルをもっているシリーズだと思っているし、GT3のマーケットが拡大しているなかで、さらにアジアに多くのGT3カーが登場すると思っているし、さらにいまGT4を育て、来季からGT2も導入するつもりだ。アジアにはこれらを許容する範囲がまだまだあると思っている。

Q:ただブランパンGTワールドチャレンジ・アジアにはなかなか日本車が出場しません。
SR:たしかにニッサンもレクサスもいない。ただこれはカスタマーのレースだからね。カスタマー=チームが望む車両で出場する。ただ日本のマニュファクチャラーにはよりカスタマーレーシングに参入して欲しいと思っているよ。

もちろん難しい部分はあるだろうが、ニッサンGT-RニスモGT3もホンダNSX GT3も、レクサスRC F GT3も素晴らしいレーシングカーながら、スーパーGTがメインになっている。それでは国際的にブランドを発信するのは難しいのではないのだろうか。マーケティングの観点からすれば、よりコンペティティブでプレミアムブランドが争うシリーズに参入しないのは少し奇妙に映る。

とはいえ、ニッサンとホンダはインターコンチネンタルGTチャレンジに参入していて、どちらも競争力が高い。KCMGのGT-Rは非常にコンペティティブだし、第2世代のホンダNSX GT3は素晴らしい。IGTCカリフォルニアでもNSXはポールポジションを獲得して、北米で素晴らしいプロモーション効果を生んだと言えるだろう。ただカスタマーレーシングに、日本メーカーももっと参入して欲しい。

■今季のGTワールドカップは「20台は集めたい」
Q:SROモータースポーツ・グループとして、将来に向けてどんなプランを考えているのですか?
SR:とても多くのプロジェクトがあるが、スパ24時間のときに開催されるプレスカンファレンスで発表する予定だ。今年のスパ24時間は72台もの台数が参加し、多くのプロフェッショナルドライバー、マニュファクチャラーが参加する。ぜひ君もスパ24時間に取材に来て、プレスカンファレンスに出席すべきだ。20台以上ものファクトリーマシンが参加するレースは他にない。ニッサンもホンダもプロが出場するのだから、来なければならないだろう(笑)。

今のところ、我々はグローバルに成功しており、多くのシリーズを開催していて、開催地は24カ国にも及ぶ。今年は『GTワールドチャレンジ・アジア』とシリーズの名前を変えたが、それは分かりやすさを優先したものだ。GTレースはとてもいま細分化している。そのなかでシンプルにインターコンチネンタルGTチャレンジを頂点に、ヨーロッパ、アジア、アメリカの各地域は『GTワールドチャレンジ』としている。インターコンチネンタルGTチャレンジはファクトリーのサポートによるシリーズで、ワールドチャレンジはカスタマーレーシングだ。クリアで、シンプルにさらなる希望を描いていきたいと思っているんだ。

Q:マカオでのFIA GTワールドカップについてはいかがですか?
SR:我々はFIAと非常に密に交渉を進めていて、いまベンジャミンが全力で計画を進めている。ただ、2016年、17年はとても大きなアクシデントが起きてしまって、それもあってか昨年は台数が15台に留まってしまった。我々はエントラントのクオリティにこだわっていたからね。だから今年は、若手ドライバーをターゲットにしたシルバークラスを設けて台数を増やせるように全力を傾けているところだ。今季はさらに台数が増えると祈っているし、最低でもプロクラスとシルバークラスで、20台は集めたいと思っている。

Q:その他にSROとしての計画は何かありますか?
SR:今年、11月1~3日にローマに近いイタリアのバレルンガで、FIAとともに『モータースポーツ・ゲーム』というものを開催する。とても大きな大会にする予定で、これは国別対抗のモータースポーツにおけるオリンピックなんだ。GTカー、ツーリングカー、シングルシーターとそれぞれ別のドライバーが国別にチームを組み争う。オープニングセレモニーはローマ市内で行う予定で、とても美しいイベントになるだろう。これもぜひ取材するべきだ(笑)。もちろん日本チームも参戦してくれると思っているし、出場すべきだ。とても野心的なイベントになるだろうし、将来はバイクも加えて、すべてのモータースポーツで争いたいと思っている。

■GT2は「まったく新しいポジションのカテゴリー」
Q:先日グッドウッドで、アウディR8 LMS GT2が発表されましたが、2020年からのGT2という新たなカテゴリーについて詳しく教えてもらえないでしょうか。
SR:もちろんだ。GT2はまったく新しいポジションのカテゴリーで、GT4とコンセプトは同じでロードカーに近い。ただ違うのは、大きなパワーをもっていることだ。650~700馬力で、ダウンフォースは少ない。これはジェントルマンドライバーにとても合っているんだ。ジェントルマンはパワーが大きい方を好むし、ダウンフォースを使える範囲が狭い。アマチュア向けにとても美しく、パワフルなGTカーのカテゴリーを作り上げたかったんだ。今後ヨーロッパ、アメリカ、アジアでGT2のカテゴリーを開催していきたい。

Q:アジアでのGT2はブランパンGTワールドチャレンジ・アジアとともに走るのですか?
SR:いや、別々だ。そして2020年は3メーカーのGT2カーが存在する予定で、将来的には6メーカーになると思う。

Q:3メーカーとはアウディ、ポルシェ(911 GT2 RSクラブスポーツ)ともうひとつはなんでしょう?
SR:今はトップシークレットだ。ただ来季については自信がある。GT2はスーパーカーが対象で、改造も容易だ。ニッサンもベントレーも、レクサスも参戦可能だ。エンジン搭載位置は変えないからね。ただ、よりパワーが必要になるし、四輪駆動は参戦ができない。

Q:イメージとしてはGT3とGT4の間になるのでしょうか?
SR:どちらともコンセプトは異なるものだ。いくつかの部分ではGT3よりも速いし、スパやモンツァではパワーが大きい分、GT2の方が速くなるだろう。GT2は700馬力にも至るので、とてもストレートは速いだろうし、素晴らしいスピードで駆け抜けるだろうね(笑)。もちろんダウンフォースが必要なコースではGT3の方が速くなる。コンセプトが違うんだ。それにコンペティションだけでなく、GT2は多くの人たちが愛好するトラックデイに向けたものでもあるんだ。

(2)に続く

ステファン・ラテル Stephane Ratel
SROモータースポーツのCEO&ファウンダー。フランス出身。レーシングドライバーとして活動するかたわら、1994年にベンチュリのワンメイクレースを立ち上げ、95年からはBPR GTシリーズの共同創設者に。SROを立ち上げた後は以降ヨーロッパを中心にFIA GTなどのプロモーターを務めた。2006年にGT3コンセプトを築き上げ、その規定は世界的にヒット。いまやSROモータースポーツグループは世界各国のGTレースのプロモーターを務めている。

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