現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > パワーだけではない、低・中速コーナーのバランス不足がカナダGP低迷の一因か/トロロッソ・ホンダF1コラム

ここから本文です

パワーだけではない、低・中速コーナーのバランス不足がカナダGP低迷の一因か/トロロッソ・ホンダF1コラム

掲載 更新
パワーだけではない、低・中速コーナーのバランス不足がカナダGP低迷の一因か/トロロッソ・ホンダF1コラム

 F1第6戦モナコGPで今シーズン初のクリーンな週末を戦い抜いたトロロッソ・ホンダは、その2週間後に超低速のモナコとは真逆の高速戦となる第7戦カナダGPに挑むことになった。

 壁に囲まれた公道サーキットであることは共通しているが、コース特性も速度域もあまりに違う。F1ルーキーのアレクサンダー・アルボンにとってはここもまた初体験のサーキットだ。

F1 Topic:マシントラブルの緊急事態にうまく対処したメルセデス。メカニックたちがやり遂げた緊迫の7分間

「レッドブルのシミュレーターで数日間走ってきたけど、普通の市街地サーキットとは違う印象だったね。もちろんマージンは残して走らなければいけないけど、コンクリートウォールに囲まれているというのはそれほど意識しないんだ。縁石の使い方などはトリッキーだしオールドスクールなサーキットだね」

 走る前はそう話していたアルボンだったが、実際に走ってみるとそのスピードの速さがウォールの恐怖感を増幅させた。

「一番の違いはウォールだ。シミュレーターにはリセットボタンがあるから気にしないけど、実際に走ってみると感覚は全然違っていた。シミュレーターではアドレナリンも出ないし恐怖もないし汗すら掻かないんだけど、実際に走ると全然違う。全開でプッシュしているとは言ってもシミュレーターでのドライビングと比べるとマージンが残ってしまっていたりするんだ。ついつい最終コーナーのウォールからは離れて走ってしまったよ(笑)」 

 金曜は路面が極めてダスティでグリップレベルが低かったこともあり、トロロッソ・ホンダは2台ともに苦戦を強いられてしまった。

 しかし金曜の夜の間にファクトリーでデータ分析を進めマシンセットアップを煮詰めたことで、土曜には見違えるようにフィーリングが向上した。これも昨年までのトロロッソには少なかったことで、チームとしての成長を窺わせる事実だった。

 しかしアルボンはQ2のアタックラップでミスを犯し、最後はケビン・マグヌッセン(ハース)のクラッシュで赤旗終了。ダニール・クビアトもQ2で敗退して久々にQ3に進めない予選となってしまった。

「昨夜の間にマシンをオペレーティングウインドウに入れるという点ではとても良い仕事ができていたから、この結果にはガッカリだよ。Q3進出は可能だったはずだよ。最後のアタックの前に車重計測に呼ばれたことでアタックラップに向けた準備に少し妥協を強いられてしまったんだけど、それよりも大きかったのはあまりに多くのミスを犯してしまったからだ。ターン10でミスを犯し、その影響で残りも駄目になってしまった。Q1でもトラフィックのせいで1周しかアタックできなかったんだけど、Q2ラップよりもそっちの方が良かったくらいだからね」

 アルボンはそう語るが、クビアトは「差はコンマ数秒とはいえQ3はちょっと射程圏外だったと思う」と異なる見解を示した。
 翌日の決勝では想定よりも下位のグリッドからスタートしたことが、アルボンにとってはさらなる悲劇を呼んでしまった。

 スタート発進は良かったものの、メインストレートからコース幅が狭くなるターン1でイン側にセルジオ・ペレス(レーシングポイント)、アウト側にアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)と両サイドをサンドイッチされるかたちになり、行き場を失ってしまった。

 どうすることもできず、接触でフロントウイングを失い、1周目にピットイン。セーフティカーが出ることを期待しながら走り続けたものの、その願いが届くこともなくアルボンのレースは終わってしまった。実質的に1周目の1コーナーで終わっていたと言っても過言ではなかった。

「避けようとしたけど行き場がなくなってしまったんだ。あれは誰のミスでもないけど残念だよ。そこからは青旗を見てばかりのレースだった。それは別としてもペースに苦しんだし、しっかりと分析する必要がある」

 60周を走ったところでポイント獲得のチャンスは絶望的と判断し、最後はパワーユニット(PU/エンジン)のセーブと次戦に向けた新品ギヤボックス投入のためにマシンをピットに戻しリタイアを選択した。アルボンにとっては予選・決勝ともに全くの不完全燃焼のカナダGPとなってしまった。

 その一方でクビアトは、スタートタイヤが自由に選択できる中での最上位である10番グリッドからミディアムタイヤでスタートしそのポジションを守った。

 しかし実際には中古ソフトタイヤのルノー勢やマクラーレン勢についていくことができず、レーシングポイント勢からのプレッシャーを受ける厳しいレースだった。12周目でミディアムを捨ててハードタイヤに交換。これでペレスのアンダーカットは何とか防いだものの、もう一台のランス・ストロール(レーシングポイント)にオーバーカットを許すことになった。
 ブレーキのオーバーヒートのためレース序盤早々にタイヤ交換を強いられたカルロス・サインツJr.(マクラーレン)が最後にペースを落としてくれたおかげでオーバーテイクして10位に滑り込んだものの、実際にはかなり厳しいレースだった。

 無線の不調も抱えており、クビアトとしてはレース展開が全く見えない中での難しい戦いを強いられていた。

「無線がオンオフして僕の声が伝わっていたりいなかったりというトラブルを抱えていたから難しいレースだった。最後はカルロスがタイヤに苦しんでいたのは分かっていたし、僕の方がタイヤが良い状態だったのも分かっていたから抜くことができた。ポイントを獲ることができて良かったよ」

 1ポイントを獲ることができたとは言え、実状はトロロッソ・ホンダとしてかなり苦しい戦いを強いられた。

 パワーサーキットのカナダだけにその理由をパワー不足に求めるのは簡単だが、必ずしもそれだけではなさそうだ。両ドライバーともにレース状況の中でパワー不足を感じる場面はなかったと話している。

「パワー不利はそれほど感じなかったよ。他チームと比べてダウンフォースレベルの違いなどもあるし、詳しいことは僕には分からない。2000馬力のエンジンをくれるなら喜んでそうするけどね。メルセデスAMGやフェラーリとの差は以前ほど大きくないし、レースでは僕らも充分に戦える。パワーの問題ではないよ」

 ジル・ビルヌーブ・サーキットはストレートが長いレイアウトではあるが、ラップタイムとしてはいかに低速・中速コーナーで稼ぐかが重要になる。ストレート速度を稼ぐためにダウンフォースを削りながらも、いかにコーナリングスピードを確保するか。その根本的なポテンシャルがライバルに劣っていたのか、そのバランスを見出す術が劣っていたのか。

 いずれにしてもそれをきちんと分析し解明することが今後のマシン開発とセットアップ技術の向上に繋がる。そんな厳しいレース週末でさえしっかりと1ポイントを持ち帰ることができたことも、トロロッソ・ホンダの成長を表わしていると言えた。

こんな記事も読まれています

ベントレー 最後のW12エンジン搭載モデル「バトゥール コンバーチブル」発表
ベントレー 最後のW12エンジン搭載モデル「バトゥール コンバーチブル」発表
グーネット
新時代の仕事「ロボット管制」ってなに? どんな業務なのか、NTT Comを取材した!
新時代の仕事「ロボット管制」ってなに? どんな業務なのか、NTT Comを取材した!
くるくら
日産、2025年3月期決算は売上高が過去最高の見通し 世界販売は7.5%増の370万台を計画
日産、2025年3月期決算は売上高が過去最高の見通し 世界販売は7.5%増の370万台を計画
日刊自動車新聞
「新トンネル」でスペイン村や賢島が近くなる!「伊勢志摩連絡道路」さらに一部区間が2024年度開通へ
「新トンネル」でスペイン村や賢島が近くなる!「伊勢志摩連絡道路」さらに一部区間が2024年度開通へ
乗りものニュース
[15秒でわかる]日産『キャシュカイ』改良新型…刷新されたフロントデザイン
[15秒でわかる]日産『キャシュカイ』改良新型…刷新されたフロントデザイン
レスポンス
「“自家製”ランボルギーニ」登場!? ちょっと“小さい”「ディアブロ…!?」! 精巧すぎる「2ドアスポーツカー」の正体と“唯一の本物パーツ”とは
「“自家製”ランボルギーニ」登場!? ちょっと“小さい”「ディアブロ…!?」! 精巧すぎる「2ドアスポーツカー」の正体と“唯一の本物パーツ”とは
くるまのニュース
「プラモでしか見たことない……」伝説の“6輪タイレル”「P34」がオークションに登場 わずか2シーズンで消えた唯一無二のF1マシンとは
「プラモでしか見たことない……」伝説の“6輪タイレル”「P34」がオークションに登場 わずか2シーズンで消えた唯一無二のF1マシンとは
VAGUE
日産車体、新社長に冨山隆副社長が昇格 吉村東彦社長は退任
日産車体、新社長に冨山隆副社長が昇格 吉村東彦社長は退任
日刊自動車新聞
フェラーリの脅威は変わらない? トヨタ、WECスパ戦に向けBoPで締め付けも跳ね馬最速と予想
フェラーリの脅威は変わらない? トヨタ、WECスパ戦に向けBoPで締め付けも跳ね馬最速と予想
motorsport.com 日本版
トヨタ「GR86」用のHKS GATE専売サスが凄すぎる! まるで「スムーズな運転養成ギプス」と呼びたい仕上がりとは【デモカー試乗】
トヨタ「GR86」用のHKS GATE専売サスが凄すぎる! まるで「スムーズな運転養成ギプス」と呼びたい仕上がりとは【デモカー試乗】
Auto Messe Web
映画「ゴジラ×コング 新たなる帝国」に登場した電動SUV「ID.4」のゴジララッピング仕様がご覧になれます! フォルクスワーゲンブース出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
映画「ゴジラ×コング 新たなる帝国」に登場した電動SUV「ID.4」のゴジララッピング仕様がご覧になれます! フォルクスワーゲンブース出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
LE VOLANT CARSMEET WEB
輸入車で旅に出よう【ディーゼル/PHEV/BEV】パワートレイン別おすすめの旅車
輸入車で旅に出よう【ディーゼル/PHEV/BEV】パワートレイン別おすすめの旅車
グーネット
ルージュ ベルベットのドレッシー仕様登場!「DS4」の特別仕様車「リボリ BlueHDi コクリコ エディション」は、ChatGPT搭載の知性派だった
ルージュ ベルベットのドレッシー仕様登場!「DS4」の特別仕様車「リボリ BlueHDi コクリコ エディション」は、ChatGPT搭載の知性派だった
Webモーターマガジン
ルノーカングージャンボリーが2024年は10月27日に山中湖交流プラザきららで開催
ルノーカングージャンボリーが2024年は10月27日に山中湖交流プラザきららで開催
Auto Prove
経営再建の河西工業が社長交代 日産出身の古川幸二氏を内定
経営再建の河西工業が社長交代 日産出身の古川幸二氏を内定
日刊自動車新聞
4月に「イチバン売れたクルマ」は何? “背の高いモデル”が人気か!? 納期「長すぎ問題」は解消か 24年4月の販売台数ランキング発表
4月に「イチバン売れたクルマ」は何? “背の高いモデル”が人気か!? 納期「長すぎ問題」は解消か 24年4月の販売台数ランキング発表
くるまのニュース
世界で人気の高級SUVにBEV化の波が押し寄せる! Gクラスにレンジローバーと続々登場予定!!
世界で人気の高級SUVにBEV化の波が押し寄せる! Gクラスにレンジローバーと続々登場予定!!
WEB CARTOP
見事なデザインに脱帽! ここ10年で秀逸なエクステリアの国産車5台をデザインのプロが選出した
見事なデザインに脱帽! ここ10年で秀逸なエクステリアの国産車5台をデザインのプロが選出した
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村