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開幕戦鈴鹿で光ったふたりのルーキー。新時代スーパーフォーミュラを牽引するホンダの牧野任祐とトヨタの坪井翔

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開幕戦鈴鹿で光ったふたりのルーキー。新時代スーパーフォーミュラを牽引するホンダの牧野任祐とトヨタの坪井翔

 4月20日から行われたスーパーフォーミュラ第1戦鈴鹿。新シャシー『SF19』が導入された最初のレースとなったが、予選ではQ1から赤旗が3回、決勝レースでも4度もセーフティカー(SC)が出動するなど、週末を通じて波乱の展開となった。

 新シャシーに加え、今年は7人のルーキードライバーが参戦するなど新しい世代に入ったスーパーフォーミュラ。その7人のルーキーのうち、開幕戦ではポールポジションを獲得した牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)、予選2番手で決勝では牧野とトップ争いを演じたチームメイトのアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)、そして予選18番手から決勝ではルーキー最高位の5位フィニッシュを果たした坪井翔(P.MU / CERUMO · INGING)の3人の活躍が際立ったが、ここでは牧野、そして坪井にフォーカスしてふたりの開幕戦を振り返る。

衝撃の予選と大荒れのサバイバル戦。新時代スーパーフォーミュラ開幕戦で見えた5つのポイントとレースクオリティの懸念

 まずは金曜日の専有走行、結果は牧野が7番手、坪井が15番手だった。今回はシーズン開幕前のテストと比べても気温と路面温度が大幅に上がっており、ふたりとも順位はほとんど気にしていない様子。デビュー戦を控えて、どのような心境で開幕を迎えたのか。まずは牧野の言葉で振り返る。

「かなり路面状況が悪かったのですが、土曜日もこのままの状態だとは思えないので、正直あまり参考にならないのかなと思います。この感触を鵜呑みせずに、今日わかったことを整理して、リセットしてやらないとダメな方向性にいってしまう。暑くなった時や路面状況が悪くなった時にどうなるかわからないので、しっかり対応できたらいいなと思います」(牧野)

 一方の坪井も、路面の変化を懸念していた。

「12月と3月のテストで走った時とは、だいぶ印象が違いました。温度が上がっているので、テストの時のイメージを持ちすぎると良くないのかなと思います。予選と決勝に向けては、路面温度が高い時に調整が必要ですね。鈴鹿に持ち込んだセットアップが少しズレていたので。土曜日に向けて大幅に考え方を変えていく予定です」(坪井)

 そしてスーパーフォーミュラで初めての予選では、牧野と坪井で明暗が分かれた。坪井は、Q1開始早々にターン1でイン側に入りすぎて右フロントタイヤを縁石に載せてフロントのコントロールを失い、アウト側のグラベルまでスピンしてクラッシュ。「普段は乗らない縁石に乗ってしまいました。予選のセットアップについて、ガラリと変更していたので、確認したいと思っていた矢先のスピンだったので、残念です」とコメントを寄せていた。

 牧野は、テストから順調ぶりを見せていたチームメイトのパロウのタイムにピタリと付き、Q1、Q2とパロウに続く2番手でQ3に進出。そしてQ3ではなかなか前に行けなかったパロウを0.029秒上回る1分36秒060をマークして、デビュー戦にしてポールポジションを獲得する活躍を見せた。

 予選後に行われた記者会見で、牧野は「Q3で余力を残す余裕はなかったし、自分も(パロウと同じく)スプーンでミスをしました」と明かした。エンジニアのアイデアを取り入れ、Q3では少しセットアップを変えたとのことだが、事前のテストでも後塵を拝していたチームメイトをQ3できっちりと抜き返すところに、ドライバーとしての抑えどころ、牧野の勝負強さを感じさせる内容だった。

■熾烈な戦いが予想される『ルーキー・オブ・ザ・イヤー』争い
 そして迎えた日曜日の決勝レース。SCが4回も出動する荒れたレースとなったが、この決勝レースでも彼らの明暗は別れたのだった。ポールポジションからスタートした牧野は2番手のパロウに付かれながらもトップの座を維持していたが、最終的にはタイヤ交換後に右リヤタイヤのホイールナットが外れるトラブルに見舞われリタイア。映像ではヘルメット姿で頭を抱え、その後はリタイヤした車両を載せた積載車に乗った牧野が車内で天を仰ぎ、うなだれる姿が映し出され、悔しさが伺えた。

「なんて言葉にしたら良いのかわからないですけど、すごく悔しいレースになりました。ピットアウトした時には異変はなかったのですが、最後のSC明けにリヤタイヤが不安定でおかしいなとは思っていました。クラッシュする前はもう明らかに挙動がおかしかったので、どうすることもできなかったです」とレースを振り返る牧野。

「SCが入って、正直僕らの(ソフトタイヤスタートの)戦略的にはよくない方向に行っていました。走り始めてソフトタイヤが保つというのもなんとなくわかっていましたし、途中で(山本)尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)さんに追いついたりもできたので、このままいけば最後にチャンスがくるかなと思っていたんですけど、こんな結果になってしまって残念です」

 一方、予選18番手からスタートした坪井は、1回目のSCのタイミングでチームメイトの石浦宏明と同時にピット、いわゆるダブルピットインを行った。ただ、先にピットインした石浦のタイヤ交換を待たなければならず、ここでタイムロスがあったものの、終わってみればルーキー勢のなかで最上位となる5位に入賞した。

「スタートはそれほど悪くなくて、1台抜くことができました。その後はミディアムタイヤだとペースが上がらなくて苦しい展開だったんですけど、早々にSCが入ったのでそのタイミングでピットに入りました。ただ石浦さんもピットに入ったので、後ろで待っている間にロスした部分はありますが、結果的には入ってよかったです」

「まさか(その後に交換した)ソフトタイヤがあそこまで保つとは思いませんでした。混乱を避けながら、なんとか自力でオーバーテイクもできました」

「終盤は国本雄資(KONDO RACING)選手に追いつかれて、最後の5周くらいはきつかったです。デビュー戦としては、予選は残念でしたが、18番手から5位というのはそうできることではないので、決勝に関しては合格点をあげたいです。あとは細かいところが足りないので、そこを詰めていければトップ争いが見えてくると思います」と坪井。

 スーパーフォーミュラで初めてのフルディスタンスのレースを走行して、体力的にはどうだったのだろう。

「SCも入りましたが、この疲れる43周を走り切ることができたので、フィジカル的にもそれほど問題ないと認識できました。オフの間にきちんとトレーニングしてきた成果が出たなと感じられたので、やってきたことは間違ってなかったです」

 スーパーフォーミュラのデビュー戦は、牧野と坪井にとって浮き沈みの激しいレースとなったようだ。だが週末を通した結果を見ると、それぞれの持つポテンシャルを完全に発揮できなかったセッションがあったことは事実だ。

 土曜日の予選後には、JMS P.MU/CERUMO・INGINGを率いる立川裕路監督が坪井について、「予選は実力を出しきる前に終わりました。本人は(クラッシュを)気にしていましたが、ウチは怒ったりするようなチームではないので、『もっといけ。気にするな』と声をかけました。僕もスーパーGTに乗っているので、同じような状況になったら怒られるのは嫌ですし(苦笑)」と立川監督&セルモらしいコメントで、チーム全体で坪井をサポートしている様子がうかがえた。

 2台揃ってリタイアに終わったTCS NAKAJIMA RACING、決勝後には中嶋悟総監督が「チームのミスやら残念なトラブルで2台ともがレースを終えてしまいました。ドライバーは素晴らしいレースをしていたのに、迷惑をかけてしまい本当に申し訳ないことをしました」とコメントを出していたことからも、今回の予選とレースが真の実力だけを反映したものではないということも明らかだ。

 ホンダとトヨタを代表する期待のルーキドライバーである牧野と坪井。5月に行われる第2戦オートポリスでは、両者がミスやトラブルのない週末を過ごすことができれば当然、今回以上の成績を残す可能性も十分にある。レース終盤まで優勝を争うのはいつのタイミングになるのか。そして、今年は牧野と坪井、さらにはパロウなども含めた新人7人による『ルーキー・オブ・ザ・イヤー』の争いも例年になく盛り上がりを見せていくことだろう。

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