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MotoGP:懐の深いマシン素性のスズキGSX-RR。リンスが王者争い候補に名乗りを上げる

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MotoGP:懐の深いマシン素性のスズキGSX-RR。リンスが王者争い候補に名乗りを上げる

 MotoGP第3戦アメリカズGPで優勝を飾ったアレックス・リンスとチーム・スズキ・エクスター。リンスにとってはMotoGPクラス参戦3シーズン目、34戦目での最高峰クラス初優勝。スズキにとっては2016年のイギリスGP以来となる勝利となった。

 スズキは、2002年の4ストロークMotoGP初期より、V型4気筒エンジンを搭載したスズキGSV-Rで参戦し、2007年のフランスGPではクリス・バーミューレンの手で1勝を記録。GSV-Rでは2011年まで参戦したが、MotoGPマシンが1000cc規定となる2012年で一時MotoGP実戦参加を休止し、その間に新たなマシンとして開発されたのが、直列4気筒エンジンを搭載したスズキGSX-RRだった。

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 GSX-RRは約3年間の開発テスト期間を経て2015年より実戦投入され、復帰初年度の2015年にポールポジションを獲得するなど活躍を収めた。そして2016年の第12戦イギリスGPではマーベリック・ビニャーレスがGSX-RRでの初優勝を達成。これにより、新規参戦マシンに対して与えられるエンジン使用基数などのコンセッション(譲歩)としてのマシン開発における優遇措置を参戦2年目にして返上することになった。

 2017年は前年までの課題を解消すべく、エンジン仕様の変更などにもトライして臨んだが、エンジンに関する課題はクリアできたものの、それがハンドリング面でのネガとして現れ、この年のシーズン中盤までは苦戦を強いられる。コンセッションを返上したことで、シーズン中のエンジン開発は凍結され、エンジン本体のシーズン中の仕様変更は不可能となったからだ。

 その環境のなかで、車体やエンジン周辺パーツの見直しを行ない、シーズン終盤には表彰台争いが見えてきた。

 そして、再びコンセッションを受けて臨んだ2018年シーズン、スズキの開発陣はエンジン、車体の改善に取り組み、早い段階でのコンセッション返上、つまり、シーズン序盤からコンセッションポイントとなる決勝3位以内への入賞を目標にシーズンに臨んだ。

 結果的に、2018年はリンスが通算5回(2位3回、3位2回)、アンドレア・イアンノーネが通算4回(2位1回、3位3回)の表彰台を獲得。リンスがランキング5位につけた。2017年に抱えたマシンの課題は解消され、この2018年型の正常進化版が2019年型のGSX-RRとなる。

■ルーキーライダーが活躍できるほど懐が深い2019年型GSX-RR
 2019年はリンスに加え、ジョアン・ミルがMoto2からステップアップ。2015年のビニャーレス以来、スズキはMoto3、Moto2で活躍を収めたルーキーを積極的に起用しているが、2019年型GSX-RRはMotoGPルーキーが初年度から活躍を収めることができるマシンにもなっている。
 リンスは開幕戦カタールGPで4位、第2戦アルゼンチンGPで5位に入賞。アルゼンチンでは予選結果に課題を抱えていたが、第3戦アメリカズGPでは7番グリッドからスタート。レースはサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を得意とするマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がリードしていたが転倒。リンスはバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)に続いて2番手に浮上すると、残り4周でロッシを交わしてトップに立ち、追いすがるロッシを振り切って初優勝を達成した。

「優勝できたなんて信じられない思いさ。うれししすぎて言葉もないよ。朝のウォームアップでセッティングを変更してみたんだけど、フィーリングがあまりよくなかったから、決勝はいつものセッティングに戻したんだ」とリンスはレース後に喜びを語った。

「終盤のバレンティーノとのバトルはちょっと苦しかったし、プレッシャーもあったけど、とにかく最後まで集中を切らすことなく走り切った。チェッカーフラッグを受けた瞬間に喜びが一気に込み上げてきて、なんとも言えない思いだったよ。チームのみんな、日本のスズキスタッフ、そして自分を支えてくれている全ての皆に心からお礼を言うよ。本当にありがとう」

 リンスの勝利は、スズキのライダーとして最高峰クラス(500cc/MotoGP)では通算21人目となる。スズキは500cc時代の1993年にケビン・シュワンツが、2000年にケニー・ロバーツ・ジュニアが世界チャンピオンを獲得しているが、MotoGPとなってからのタイトル獲得はまだ実現できていない。

 シュワンツ、ロバーツ・ジュニアの時代は、どちらかと言えば、エースライダーに合わせたマシン作りを行ない、タイトルを獲得してきたが、現在のGSX-RRはライダーを選ばない、懐の深いマシン素性のよさを持っており、それはビニャーレス、リンス、ミルとルーキー時代から活躍を収めていることでも証明されている。

 リンスはこの勝利でランキング3位に浮上、チャンピオン争い候補のひとりに名乗りを上げた。これから始まるヨーロッパラウンドで、リンスとミルがGSX-RRでどんな活躍を収めるかに注目だ。

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