今季はDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍してスーパーフォーミュラを戦う昨年王者の山本尚貴。鈴鹿公式テストでは冷静にSF19の理解度を深めるテストをチームととも着実に行なっていた。
3月4日、5日に行われた鈴鹿公式テストに先立ち「モースポフェス2019」でシェイクダウン及びフリー走行の時間が設けられた。その中で山本は日曜日のフリー走行で、いきなり1分36秒267をマーク。本格的なテスト走行に入る前から1分35秒台に迫る記録が飛び出し、関係者やファンも驚きの声をあげた。
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「あの時は、このソフトタイヤも初めて履いたので、どこまでいけるのか手探りな状態ではありました。でもウォームアップの段階でグリップとポテンシャルの高さを感じていたので、それを信じてアタックしました。ただクルマのグリップなりにアクセルを踏んでいっただけで、タイムが出ちゃったという感じでした」
「自分でもあのタイムが出るとは思わなかったですし、36秒2を出したことよりも周りとのタイム差をつけられた(2番手以下に0.7秒)ことの方が純粋に嬉しかったですね」
そう語った山本。このタイムが翌日以降のテストで良い目安となり、がむしゃらに走り込むのではなく、シリーズ戦を見据えて冷静に状況を判断しながら効率よくテストをしていたのが印象的だった。
例えば、テスト1日目の午後のセッション。朝からの雨の影響で路面はダンプコンディションだった。セッション開始早々に路面は乾いたものの、実際にタイムが上がってくるまでには時間がかかった。
ここで山本は「中途半端なコンディションで走っても意味がない」と、約1時間にわたってピットの中で待機することを選択。本来ならSF19のデータを収集するべく、1周でも多く周回を重ねたいと考えるところだ。
「(1日目午後のセッションは)単純に路面がダンプ状態でコンディションが安定していなかったので、ここで走る意味が多くはないなと思って、ピットで待機していました」
「もちろん決して余裕があるわけではないし、走れるのであれば走りたかったです。でも、ちゃんとしたコンディションで走りたかったというのがチームと僕の考えでした」
さらに2日目午後の最終セッション。通常なら残り5分を切って新品タイヤを導入して予選アタックのシミュレーションを行うのだが、ここでも山本は“あえて”タイムアタックを行わなかった。
「2日目の午後はロングランのテストしかやらない予定でした。なので最後はアタックはしなかったです。自分たちが今持っているタイヤというのは今回だけ使えるわけではなくて、次の富士テストで使う(持ち越し用)タイヤも考えないといけない。もっと言うと鈴鹿の開幕戦で使うタイヤも、ここから考えていかないといけないので、今回はタイヤの使用本数を絞ってテストしていました」
そう、山本は語る。
「今のテストは、もちろん順番も大事だし、(順位が)下にいるよりは上にいる方が気持ち的にもいいんですけど、やっぱり他のチームをみてもタイヤの使用状況はバラバラだし、OT(オーバーテイクシステム)も普段の予選では使えないんですが、今は(動作確認のため)使える状況です」
「そういう要素も含めると、本当に誰が速いのかというのが、不透明な状況です。なので、あまり順番にはこだわり過ぎずに、テストのメニューとSF19に対する理解度を深めるテストに重点を置いていました」
「クルマがどういう状態にあると、どういう動きをするのかというのも、短い間でしたけど、得るものはいろいろあったので、良いテストになったかなと思います」
しかし、ライバルたちもSF19の理解度を高め、徐々に各車のタイムが接近していることについては、気になっている様子。最終的にはSF14の時と同様に0.001秒を争う壮絶な戦いに発展していきそうだと、山本は語った。
「この2日間のテストを走って、各車とも(SF19を)習熟して理解度を高めてきて、タイム差もなくなってきた印象です。またスーパーフォーミュラ本来の姿(0.001秒単位のシビアな戦い)になってきたなという感じですね」
「各車がどういうテストをしているのか読めない部分はありますけど、僕たちに関してはチームメイトの福住選手とクルマに対するコメントや起きている症状も近いです。こうして、ふたりで協力し合えるところは協力して、クルマのレベルを上げる工程を踏んでいけたテストだったかなと思います」
「これから富士のテストもありますし、開幕戦になると1ヶ月先なので、当然気温も上がって今回のテストとは(コンディションが)別物になるので、そこにどれだけクルマを合わせ込めるかが重要だと思っています」
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