現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 【インタビュー】F1日本GPでハースの足元を支えた富塚エンジニア「鈴鹿ではブリスターが一番危険」

ここから本文です

【インタビュー】F1日本GPでハースの足元を支えた富塚エンジニア「鈴鹿ではブリスターが一番危険」

掲載 更新
【インタビュー】F1日本GPでハースの足元を支えた富塚エンジニア「鈴鹿ではブリスターが一番危険」

 メルセデス以外で唯一、予選Q2でのソフトタイヤアタックを成功させ、さらに決勝レースでもライバルたちがブリスターやオーバーヒートに苦しむ中、揺るぎないタイヤ戦略で8位入賞を勝ち取ったハースF1。2018年シーズンから同チームに加入し、その存在感をいっそう増している富塚裕タイヤエンジニアに、日本GPでの快走を振り返ってもらった。
-----------------------------


──上位3強以外のチームが固いタイヤでQ2をアタックするのは、非常に稀有なことです。ソフトタイヤは、最初から狙って?
富塚裕エンジニア(以下、富塚):そうです、そうです。タイヤを選んだ時から、それは狙ってました。

アロンソ「押し出されたのにペナルティを受けるなんて理解不能」:F1日本GP日曜

──ソフトでもQ3に進める自信があった?
富塚:というより、鈴鹿はスーパーソフトタイヤに、絶対的な速さがないだろうと。でも100%そうなるかどうかは、その週末になってみないとわからない。それでどっちに転んでもいいように、両方の対応を準備してました。で実際に金曜日に走ってみたら、ソフトとスーパーソフトの差は、それほど大きくなかった。でもその段階でも保険は掛けてて、まずQ2をソフトで走って、ダメならスーパーソフトですぐにやり直すことは考えてました。結果的に2回目は、(雨が降って)なくなりましたけどね。

──実際、ケビン・マグヌッセンは失敗した。
富塚:ええ。ソフトの時に、いいタイムが出せなかったですね。それでスーパーソフトで出直したけど、間に合わなかった。路面温度も、低かったんですよ。なのでもし全車が2回目アタックをできてたら、(ソフトでのQ3進出は)危なかったかもしれない。ロマンも、スーパーソフトで出ましたしね。

──あれはQ3に向けての、練習ではなかった?
富塚:違います。最後に出て、みんなのタイムを見てアタックを続けるかどうか判断しようと。

──状況次第では、スーパーソフトでのスタートになっていた可能性になった?
富塚:ええ。抜きにくいサーキットですから、あくまで前のグリッドを獲ることが大前提でしたから。

──決勝レースは一転して、路面温度が高くなった。ソフトにいっそう有利なコンディションだったのでは?
富塚:でも去年と同じくらいですから。とはいえソフトで出ていったアドバンテージは、あったと思います。

──序盤にセーフティカーが出たことで、ソフトの優位が殺がれたのでは?
富塚:そうですね。スーパーソフトは熱でどんどん垂れて行く。あそこで冷やせたことで、彼らは助かりましたよね。

──第2スティントのミディアムタイヤは?
富塚:これも全然悪くなかったです。ただVSC(バーチャルセーフティカー)解除の際に、うちが出るのがちょっと遅れて、順位を落としてしまった。(セルジオ・)ペレスが、うまくやりましたよね。ストレートはフォース・インディアが速いので、後ろに付かれてやられました。

■今回のスーパーソフトはレースタイヤとして”使えない”

──ソフトを29周目まで引っ張ったのは、計画通り?
富塚:完璧でした。ピット作業も非常にうまくやってくれて、そのおかげでペレスの前でコース復帰できた。そこまでは、完璧でした。

──他のクルマは、ブリスターに苦しんだところが少なくなかった。ハースは?
富塚:うちは大丈夫でしたね。とにかくブリスターを一番用心して、リヤタイヤの温度に気をつけてもらいましたから。他はそんなに、ひどかったですか?

──ええ。ザウバーのミディアムとか、トロロッソのソフトとか。
富塚:がんがんプッシュすると、すぐにブリスターが出るんですよね。なので僕らはペースをコントロールして、温度管理しながら走り続けた。鈴鹿はブリスターが、一番ヤバイと思ってましたから。

──後ろからフォース・インディアが迫ってきた時も、(ロマン・)グロージャンにはあくまでタイヤの温度を上げるなと?
富塚:ミディアムになってからは、路面温度も下がっていたし、車重も軽くなってたので、大丈夫だと思ってました。逆に冷え過ぎを心配してたくらい。ただタイヤの温度センサーが途中で壊れてしまって(苦笑)、わからなくなってました。冷え過ぎてた可能性が高いですけど。帰って来たタイヤをざっと見た限りでは、問題なかったですけど。ソフトの時は温度が上がり過ぎて、管理に気を使いました。

──今回はとにかくスーパーソフトは、レースタイヤとしては使えないと、最初から思ってたんですね。
富塚:ええ。ラップタイムも特別速くないし、すぐに熱ダレしてしまう。あんまりよくないのは、わかってました。

──もしスタートタイヤがスーパーソフトになっていたら、20周くらいそれで引っ張ってましたか?
富塚:あとはミディアムですね。実際、他のクルマの大部分はそうしたと思いますけど。ただそれだと、タイヤ交換後のコース復帰ポジションが見つけにくい。遅いクルマにハマってしまう可能性が高い。ソフトスタートのメリットは、まさにそこですね。復帰スペースが、見つけやすい。

──ハース以外の中団勢は、ミディアムのペースも決してよくなかった印象です。
富塚:そうですか。冷え過ぎた可能性もあるでしょうね。タイヤは熱過ぎても冷え過ぎても、グリップは下がりますから。うちはセンサーが壊れてたから、そこはよくわからないんですが(笑)。

── 一般的に言うと、固いコンパウンドの方が熱がこもりやすくて、ブリスターが出やすい?
富塚:いや、場合によります。固いとゴムがあまり動かないので、発熱量は減る。ただ摩耗も少ないので、ゴムのボリュームが多いので内部に熱がこもりやすい。一方柔らかい方は、ゴム自体がよく動くので、それで発熱してブリスターが出たりする。そのバランスですね。そして今回は、そのバランスが一番悪かったのがソフトだった印象です。なのでレース前半の温度管理には、ものすごく気をつけました。

関連タグ

こんな記事も読まれています

たった6人で全国大会決勝進出! 奇跡の実話を映画化した感動青春ムービー『リバウンド』
たった6人で全国大会決勝進出! 奇跡の実話を映画化した感動青春ムービー『リバウンド』
バイクのニュース
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
くるくら
ニコ・ヒュルケンベルグ、今季限りでハース離脱。来季はザウバーから参戦へ
ニコ・ヒュルケンベルグ、今季限りでハース離脱。来季はザウバーから参戦へ
motorsport.com 日本版
「デロリアン」から「大門軍団」そして「ステップワゴン」も!8月発売のアオシマ新製品情報【CARSMEETモデルカー俱楽部】
「デロリアン」から「大門軍団」そして「ステップワゴン」も!8月発売のアオシマ新製品情報【CARSMEETモデルカー俱楽部】
LE VOLANT CARSMEET WEB
マツダが「新型SUV」世界初公開! 次期型「CX-5」登場か!? 新次元の「魂動デザイン」採用した圧倒的“造形美”実現し北京登場!
マツダが「新型SUV」世界初公開! 次期型「CX-5」登場か!? 新次元の「魂動デザイン」採用した圧倒的“造形美”実現し北京登場!
くるまのニュース
日産の謎解きイベントが話題! 「眠っていたブループリント」は5月6日まで。GWは本社ギャラリーに行こう。
日産の謎解きイベントが話題! 「眠っていたブループリント」は5月6日まで。GWは本社ギャラリーに行こう。
くるくら
BMW X5の燃料電池車をゼロエミッションカーに位置付け、実証実験の継続を決定
BMW X5の燃料電池車をゼロエミッションカーに位置付け、実証実験の継続を決定
Auto Prove
トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開
トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開
レスポンス
新星アコスタは、”MotoGPのフェルスタッペン”になるか。シーズン途中のKTM昇格はある?
新星アコスタは、”MotoGPのフェルスタッペン”になるか。シーズン途中のKTM昇格はある?
motorsport.com 日本版
【ストリーモ】5/4~6に開催される「GINZA SKY WALK 2024」にてストリーモの試乗体験を実施
【ストリーモ】5/4~6に開催される「GINZA SKY WALK 2024」にてストリーモの試乗体験を実施
バイクブロス
ホンダ新型「ヴェゼル」登場! 3年ぶり“刷新”で何が変わった?  オシャグリーンな「ハント」も新設定の「小さなSUV」約265万円から
ホンダ新型「ヴェゼル」登場! 3年ぶり“刷新”で何が変わった? オシャグリーンな「ハント」も新設定の「小さなSUV」約265万円から
くるまのニュース
ホンダが新型EVの『e:NP2』を発売
ホンダが新型EVの『e:NP2』を発売
レスポンス
三菱自動車、欧州でコンパクトSUV「ASX」の大幅改良モデルを発表
三菱自動車、欧州でコンパクトSUV「ASX」の大幅改良モデルを発表
月刊自家用車WEB
WEC第3戦スパのエントリー発表。フォーミュラE重複の影響多数、ハプスブルクの復帰には疑問符も
WEC第3戦スパのエントリー発表。フォーミュラE重複の影響多数、ハプスブルクの復帰には疑問符も
AUTOSPORT web
超ガチ仕様だし今思えば激安じゃない!? [ランドクルーザー250も70]も超絶魅力的!! でもでも[メガクルーザー]こそ誇るべきモデルじゃないか説
超ガチ仕様だし今思えば激安じゃない!? [ランドクルーザー250も70]も超絶魅力的!! でもでも[メガクルーザー]こそ誇るべきモデルじゃないか説
ベストカーWeb
KTM新型390デューク試乗「実は日本でベストバランスのストリートファイター!?」
KTM新型390デューク試乗「実は日本でベストバランスのストリートファイター!?」
モーサイ
X氏の値引き大作戦 デリカD:5から60.8万円引き!
X氏の値引き大作戦 デリカD:5から60.8万円引き!
グーネット
中国IT大手のテンセントとトヨタ自動車が戦略提携
中国IT大手のテンセントとトヨタ自動車が戦略提携
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村