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最新のBMWアルピナ モデルをザルツブルクでアタック

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最新のBMWアルピナ モデルをザルツブルクでアタック

創業者である父を超えたカーガイがファミリービジネスを進化させる

ドイツ・アルピナ本社の主催となる、アルピナ・オールラインアップ試乗会がオーストリアのザルツブルクで開催された。そこにはラグジュアリーを極めた最新フラッグシップも登場していたのだ!

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リポーターがはじめてアルピナを取材したのは今から40年以上も前のことで、確か自動車メーカーとしてドイツ運輸省から認定を受けた時期と重なっていた。当時は創立者のブルクハルト・ボーフェンジーペン氏が直接対応してくれた記憶がある。彼にはふたりの息子がいて、長男のアンドレアス(通称アンディ)は当時すでにフォーミュラー・フォードなどのドライバーとしてモータースポーツに参戦していた。そして現在はアルピナ社のCEOとして同社を率いているわけだが、このアンディの人となりはこれまであまり伝わってこなかった。世間では「二代目は親の七光り、実力はそれほどでもない」と言われることがある。しかし、アンディに関してはむしろ親を超えるカーガイで、さらには経営手腕でも上回るほどの実力者である。

BMW ALPINA B7 それをよく物語るのが今回オーストリアのザルツブルグリングで行われたアルピナ・オールラインアップ試乗会であった。まずアンディは、前の晩のディナーに遅れて登場したのだが、その理由が「突然友人のインポーターからアルピーヌA110試乗のオファーがあったのだが、試乗車の到着が遅れて、結局、そのままA110を運転してきてしまいました」というもの。つまりディナーに遅刻してしまうよりも新しいクルマに触れる欲求が強かったわけで、参加者は彼の遅刻を責めるどころか、そのカーガイぶりに拍手を贈ったほどであった。
またビジネスにおいては、ライアビリティ(企業責任)の縛りが強すぎるために、ブルクハルト氏が二の足を踏んでいた北米ビジネスを積極的に行い、今やドイツや日本と並ぶ大きな市場に成長させている。

こうしたアンディの才覚によってアルピナは順調に業績を伸ばし、少々古い数字だが2014年には1,700台を出荷、その総売上高は9,000万ユーロ(約109億円)に達した。そして現在はおよそ250名以上の従業員がそのエクスクルーシブなハイエンド・スポーツモデルをほぼハンドメイドで生産しており、その高い品質と卓越したダイナミック性能はアルピナ・ブランドのコアバリューとして全世界に認知されている。
最後にアンディが父親から受け継いだもうひとつの才能。それはワインに対する造詣の深さである。アルピナの総売り上げのおよそ20%がワインディーラーとしての収益であり、敷地の一角にはなんと約100万本のワインを貯蔵する倉庫を有する。アンディはこのすべてのワインに精通していて、昨年招待を受けたワインテイスティングではクルマに勝るとも劣らない情熱を披露してくれた。




さて前置きがながくなったが、そんなアンディがザルツブルグリングにて企画した「アルピナ・オールラインアップ試乗会」の報告に入ろう。まず最初にリポーターを待っていたのは、アルピナ最新のモデルとなるB7リムジンである。ベースになったのは2015年に登場し、今年1月に大規模なフェイスリフトを受けたBMW7シリーズ(G11)である。アルピナはそのマイナーチェンジの発表からわずか3カ月後に、スイスで開催されたジュネーブ・オートサロンにおいて、このアルピナB7フェイスリフトバージョンを発表。そして今回、ザルツブルグに持ち込んだのである。

サーキット走行で見極めたプレステージ性とポテンシャル

サーキットのパドックに到着して、まず目にとまったのが上品なアルピナブルーをまとったB7リムジンであった。「なぜラグジュアリーサルーンをレーシングコースで試乗?」と、アンドレアスに質問したところ「クルマはジュネーブの後で完成してホモロゲーションは取れたのですが、公道を走らせるための型式認定が間に合わず、仕方なくにここを選びました。しかし最高出力608psと最大トルク800NmのB7にとって、持ってこいの環境だと思います」と自信満々であった。

BMW ALPINA B4 S BITURBO EDITION 99 エクステリアをチェックしてみると、ベースとなったBMW7シリーズと印象はほとんど変わらず、ワイドなキドニーグリルがやや威圧的ながら、プレステージ性と存在感を放っていた。そこからつぶさにチェックしてみると、スポーツシャーシに合わせて装着されている、前255/40ZR20、後295/35ZR20サイズのミシュラン・パイロット・スポーツが、最高速度330km/hというメルセデスAMG S63を超えた世界最速4ドアリムジンの存在感を高めている。
さらに観察を続けると「ALPINA」ロゴの入ったリップスポイラーやリアスポイラー、そしてリアエンド左右から覗く左右デュアルのマフラーカッターが、控えめにアルピナを主張していることが分かる。一方のインテリアは目を見張るばかりのエレガンスとラグジュアリーな雰囲気で満たされている。高品質なレザーとウッド、アルミ素材を使って、ドイツ最高峰のクラフトマンシップで仕上げられたキャビンのカップホルダーには、ミネラルウォーターではなく、シャンペングラスが似合いそうだ。

搭載されるフルデジタルの操作系は、BMW最新のオペレーティング・システム7.0で、緻密なボイス入力が可能である。4.4L V8ビターボは最高出力608ps(447kW)と最大トルク800Nmを発生させるが、その時の回転数は2000rpmにとどまり、先代B7ビターボより1000rpmも低い回転域で発生している。さらにこのエンジンには欧州で直噴ガソリン・エンジンに装着が必須となっているOPF(直噴ガソリン用PMフィルター)が装備されており、その影響によるパワーダウンに対応するべく、インテークおよびエキゾースト系を完全に新設計としてアップデート。さらには新しいギャレット製ターボチャージャーが素晴らしいピックアップを約束している。

これによってコースイン時のダッシュは素晴らしく、0→100km/h加速3.6秒という数字は説得力を持つ。驚くべきことに最初の右コーナー直前では、およそ160km/hからの急制動でも姿勢を崩さず、フィードバックが確かで軽いステアリングを切り込んでいくと、約2.1トンの巨艦はタイヤのスキール音さえ出さずにスムーズなコーナリングを披露してくれた。また、軽く200km/hを超えるバックストレッチでは、フルタイム4WDと四輪操舵がもたらす高速安定性とポテンシャルの高さを垣間見せた。




あっという間のサーキット走行だったが、このB7は卓越したパワープラントと優れたシャシーセッティングで文字通りの世界最速のラグジュアリー・リムジンであると同時に、高品質でラグジュアリーなインテリアで、日常生活の延長となるドライブでも別世界へいざなうという、アルピナ・マジックに包まれる幸せを味わえることができた。このアルピナB7リムジンは、すでに日本のアルピナ総代理店であるニコル・オートモビルズから販売が始まっている。

極上なアルピナB7に続いて試乗したのは、現行4シリーズ・クーペ(F32)とカブリオレ(F33)をベースにしたアルピナB4 Sビターボ「エディション99」であった。すでに市場にはG世代が登場しているが、フルモデルチェンジとは言えキープコンセプトで、キャリーオーバーともいえるデザインをみれば、まだまだ市場価値は存在するだろう。そこでアンディが考え出したのが99台限定のファイナルモデルというわけだ。搭載される3L直6ビターボは452psと680Nmを発生させ、0→100km/hを3.9秒(カブリオレは4.3秒)、最高速度は306km/h(カブリオレ303km/h)とそれぞれ向上させている。

この2モデルはサーキット走行でもっとも楽しめるアルピナであり、フロイデ・アム・ファーレン(駆けぬける歓び)には「年式落ち」などという言葉が通用しないことを証明するモデルであった。次期4シリーズは間もなく登場するが、まだまだ高いポテンシャルを有する、このアルピナB4 Sの限定車はコレクターズアイテムとなる可能性すら秘めているのだ。

ALPINA B6 GT3を同乗体験

試乗会の余興ではないが、アンドレアス・ボーフェンジーペン氏がドライブするアルピナB6 GT3レーシングマシンに同乗。レース経験豊富なアンディのドライブテクニックは信頼できるが、激しい縦横Gは勘弁とのこと。

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