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アストンマーティンの影の立役者、ダレン・ターナーとは?

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アストンマーティンの影の立役者、ダレン・ターナーとは?

ダレン・ターナーの多彩なレーシングキャリアをまとめると一編の小説が出来る。1974年生まれの彼は、1990年代半ばにレースデビューすると、その後はGTレースやツーリングカー・レースなどに幅広く参戦、2003年以降はル・マン24時間にも毎年出場している。

いっぽう、彼が長年続けてきたのがF1チームのテスト・ドライバーだ。マクラーレンを中心にジョーダン、アロウズなどでマシン開発をサポートし、レッドブル・レーシングやトヨタF1でもシミュレーターを使った開発に携わった。

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ダレン・ターナー:1974年4月13日イギリス生まれ。これまでル・マン24時間レースやイギリス・ツーリング・カー選手権に参戦。2019/20年シーズンのWEC世界耐久選手権には、アストンマーティンレーシングのドライバーとして出場する。そんなターナーがもっとも長く、そしてもっとも深くかかわってきた自動車メーカーがアストンマーティン・ラゴンダ社である。

「いちばん最初にアストンマーティンの仕事をしたのは2004年のこと。翌年からGT1レースに参戦する『DBR9』のプロジェクトにテスト・ドライバー兼開発ドライバーとして参画しました。それ以来、アストンマーティンが作ったすべてのレース・カーで僕はレースに出走した。いわば、アストンマーティン・ファミリーの一員として彼らと旅を続け、レースを戦ってきたのです」

アストンマーチン・レーシング(AMR)は現在、WEC世界耐久選手権に新型「ヴァンテージ」で参戦中。アストンマーティンは、ターナーにとってどんなブランドなのだろうか?

「正直にいって、子供の頃の僕にとって、アストンマーティンは映画『007』のなかにしか存在していなかった。しかも、アストンマーティンは2005年に実戦に復帰するまで、モータースポーツ活動からも遠ざかっていた。ただし、それ以来、彼らはずっとモータースポーツ活動を続けている。これほど長く、アストンマーティンが継続的にレース参戦したことは、彼らの歴史を振り返ってもいままでなかったことです」

「アストンマーティンの魅力は、運転すれば誰でもすぐにわかるよ」と、ダレン・ターナーは述べる。ターナーはアストンマーティンのレーシング・プログラムだけでなく、いまやロード・カーの開発にも携わっているという。

「関わっているといっても、ロード・カー開発の最終段階で(ニュルブルクリンクの)ノルドシュライフェで限界的なパフォーマンスの確認をするくらいだよ。何周か走って、改善できる余地にかんしてフィードバックするだけ。あと、クルマの基本的な印象についても報告する。それくらいだよ」

彼は謙遜しながら語ったが、それはスポーツ・カーの開発にとってもっとも重要なステップのひとつだろう。

最新アストンの魅力とは?それでは、新型「ヴァンテージ」をノルドシュライフェで走らせて、ターナーはどう感じたのか?

「とても楽しかったね。運転に必要な情報を(ドライバーに)正しく伝えてくれるから、どこに限界があるかがわかりやすいんだ」

市販モデルの新型「ヴァンテージ」は2018年に登場。メルセデスAMG製の4.0リッターV型8気筒ツインターボ・エンジンを搭載する。ヴァンテージはふたり乗りのクーペ。駆動方式はFR(後輪駆動)。アップ&ダウンが激しく、先の見通せないブラインド・コーナーが続くノルドフォシュライフェを走るのに求められる性能とは、どのようなものなのか? ターナーに訊いた。

「さっきも言ったとおり、限界がわかりやすいのはとても大切だよ。あとはオペレーティング・ウィンドウといって、限界付近でコントロールできる余地が大きいことも重要なんだ。グリップがピーキーなクルマでノルドシュライフェを走っても楽しくない。反対に、限界を越えてスライドし始めてもすぐにコントロールを取り戻せたり、“もう少しで滑り始める”ことをあらかじめ知らせてくれたりするキャラクターを持ったクルマであると、ドライバーは自然と笑顔になる。新型ヴァンテージは、そういう特性を持ち合わせているんだ」

新型ヴァンテージについて、もう少し具体的に説明してもらえないだろうか?

「いいよ。まず、V型8気筒ツインターボ・エンジンはハイパワーなだけでなく、スロットル・レスポンスが鋭くてトルク特性も扱い易い。そして8速ギアボックスの動作は素早く、電子制御式ディファレンシャル・ギアは“スポーツ・カー界のゲームチェンジャー”といっていいくらい素晴らしいパフォーマンスを示してくれる。しかも前・後の重量バランスは完璧で、シャシーのスタビリティも高い。だからとても安全。スポーツ・カーに求められるすべての性能を備えているといってもいいんじゃないかな」

市販モデルのヴァンテージが搭載するエンジンは搭載するエンジンは3982ccV型8気筒DOHCツインターボ(510ps/6000rpm、685Nm/2000~5000rpm)。市販モデルのトランスミッションはボタン式のZF製8段AT。2013年に設立100周年を迎えたアストンマーティン・ラゴンダ社は、“セカンド・センチュリー・プラン”という名の成長戦略を掲げ、現在、ニューモデルを次々と投入している真っ最中だ。

「すでに登場している『DB11』は素晴らしいGTカーで、ヴァンテージは最高に楽しいスポーツカー。『DBS』のパフォーマンスは圧倒的だし、SUVの『DBX』もまもなくデビューする。さらにミドシップ・スポーツの『ヴァルキリー』や『ヴァルハラ』が控えている。アンディー・パーマーがかじ取り役に就任して、アストンマーティン・ラゴンダ社は大変革期を迎えたんだ。まったく信じられないような勢いだし、今後もエキサイティングなモデルが続々と登場する。僕自身もアストンマーティン・ラゴンダ社のロードカー開発にさらに深くかかわるようになると思うよ」

DB11のボディ形状はクーペと、ヴォランテ(ドロップヘッド・クーペ)の2種。電動開閉式の幌は、開けるのに14秒、閉じるのに16秒要する。限定500台がすでに完売済みのヴァルハラ。搭載するパワーユニットはV型6気筒ガソリンターボ・エンジン(自社開発)+モーターだ。アストンマーティン初のSUV「DBX」。2019年末の登場予定。Dominic Fraserロードカー開発が忙しくなりすぎると、レース活動に差し障りがでるのではないか? 私がそう訊ねると、ターナーはこう答えたのである。

「あと2、3年はレースを戦うだろうけれど、レーシング・ドライバーとしてのキャリアはどこかで収束に向かっていく。つまり、レースの仕事は減っていくと考えている。ただし、アストンマーティンでの仕事はこれからも増えていく。僕はいま、自分の将来を楽しみにしている。そしてアストンマーティンというブランドにかかわっていられることを、このうえなく光栄に思っているのです」

役割は変わっても、ターナーはこれからもアストンマーティンと旅を続けていくだろう。

文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.)

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