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業界ニュース 2019.9.29

【ヒットの法則12】初代メルセデス・べンツCLSは異例なスタイルで新境地を切り拓いていった

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2005年2月に日本上陸を果たした初代メルセデス・ベンツCLSは賛否うずまく衝撃的なモデルだった。まさか、あのメルセデスがこんな4ドアサルーンを出すとは。ご存知のようにその後、CLSは大ヒットとなるのだが、デビュー当時はどのように見られていたのか。鹿児島を舞台に行われた試乗会の模様を振り返ってみよう。(Motor Magazine 2005年4月号より)

最大の特徴はスタイリング、佇まいはこれまでのメルセデスとはまったく違う
メルセデス・ベンツは昨年2004年から2006年あたりまでを区切りとして、第二次製品攻勢期に入っているという。そう聞けば、それじゃあ第一次はどこにあったのかという疑問が浮かぶが、これは1986~88年。ちょうど初代SLKや初代Aクラス、Mクラスといったニューラインが生まれた時期である。

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ということは、今後のメルセデスはさらにモデルラインを増やすのか。答えはYES、それはもう始まっている。昨年2004年にリリースされたマクラーレンSLRは少々特殊としても、今現在、見えているだけで3車種のブランニューモデルが控えている模様だ。

しかも、それとともに既存モデルのフルチェンジも盛ん。第一次に登場したAクラスはまもなく。Mクラスも2005年内。それにフラッグシップのSクラスも今年のフランクフルトでのデビューが確実視されている。まさしく猛チャージといった様相である。

さて、その第二次製品攻勢の事実上のトップバッターが、2年前2003年のフランクフルトショーでコンセプトが提示され、昨年2004年のジュネーブショーで発表となり、この2月4日に日本へも上陸を開始したCLSである。

CLSの最大の特徴はスタイリングだ。4ドアサルーンでありながら、お約束のスリーポインテッドスターのフードマスコットは採用されず、クーペ一族に使われるマークを刻み込んだグリルが用いられる。

いや、そんなディテールを説明せずとも、佇まいをひと目見ただけでこれまでのメルセデスのサルーンとはまったく違う方向性であることは明らかだろう。三日月のごとく薄いサイドウインドウ、極端に絞り込まれたノーズとテールエンド、低いベルトラインをさらに強調するかのように深々と刻み込まれた両端下がりのサイドキャラクターラインなど、どこを見ても「実用性こそが4ドアサルーンの命」として来た、これまでのメルセデスとは180度異なる成り立ちなのだ。

しかも、ボディサイズは全長4915×全幅1875×全高1390mm。長さは現行Eクラスよりも実に100mm近く長く、全幅に至ってはSクラスよりもワイド。それでいて全高は近代のサルーンの常識を逸脱した低さである。

有り体に言ってしまえば、このCLSは4ドアハードトップである。4枚のドアがすべてサッシュレス構造になっているから、こう表現しても問題はないはずだ。

この種のボディ形態は、すでに昔のアメリカ車に採用例があるし、日本車でも80年代に流行する兆しを見せた。ニッチ市場を模索する手法としては特に新しいわけではない。

問題はそれをメルセデスがやったということだ。パワーウォーズに関してはほとんど「悪乗り」と思わせるほどのどぎつい展開を見せることはあっても、クルマのパッケージングで、ここまで遊んだメルセデスというのは過去に存在しなかった。いや、遊びなどと言ったら怒られそうだ。シュツットガルトはあくまでも真面目。その証拠にCLSの最大の財産であるスタイリングは、本当に入念に計算されて作り出された感がある。

たとえばメルセデスのサイドミラーはこれまで頑なに「Aピラーベタ付け」タイプを守り通して来た。しかしCLSは滑らかなフォルムに相応しいようにとミラーハウジングをボディから離した優美な曲線の「足つきタイプ」に改められている。

メルセデスがこれまでベタ付けに拘って来た理由はフロントウインドウの水滴がミラー面に流れないようにするためだそうだが、足つきタイプとなったCLSでも同様の機能を確保するために、Aピラーの内側に深いレインガーターを設定したという気の配りようなのだ。まさに「スタイルのためなら」を物語るエピソードである。

個人的には、CLSのデザイン上のハイライトはリアビューだと思う。なだらかに絞り込まれたデッキラインはつまみ上げられたテールエンドの峰と、リアコンビランプ、トランクのオープニングラインなどと複雑な交錯を見せて、バッサリと男性的に切り落とされたこれまでのセダンとはまったく異質の余韻をリアビューに醸し出していた。

実車に対面した直後は、そのあまりの「メルセデスっぽくなさ」に違和感も覚えたものの、目に馴染むほどに見応えがあるし、何よりまったく新しい。これはもしかしたら大化けするかも知れない。少なくとも都市部ではかなり行けると思う。

インテリアデザインもメルセデスの新境地
インテリアもまったく新しいデザインだ。操作系はEクラスなどと大差ないのでインターフェース面で迷うことはほとんどないが、相対的に高い位置にあるダッシュボードが庇のようにやや張り出していて、その下に大面積の木目のパネルが展開されている。

これまでのメルセデスも木目は積極的に使っていたが、これほどベタに用いたのは初めてだろう。しかもその仕上げが半ツヤ消しのシルクマット・ウォールナットというのもメルセデスとしては新しい。

ただしこのシルクマット、本国では好評で標準採用となったらしいが、僕の目にはフィニッシュがやや眠すぎてプラスチックのような質感に思えた。そう感じる人にはもちろん無料オプションでハイグロスのローレルウッドも用意されるから心配はいらない。このハイグロス仕様は、今回実車では確認できなかったが、面積が大きいだけにかなり豪奢な雰囲気になると思われる。

インテリアはCLS350がファブリックシート標準でオプションで本革を選択可。CLS500はフルレザーだ。ただし本革を用いているのはシートとステアリングのみで、それ以外の部分には新開発のポリウレタンが使われる。塩ビからポリウレタンに代えたのは環境問題を考慮した結果だが、風合いは限りなく革に近く、価格なりの豪華さをキチンと感じさせる仕上がりだった。

後席空間はどうか。予想通りかなり前傾したルーフラインが災いして、大柄な人だと大きく頭をへこませないとゴツいピラーに頭をぶつけそうだ。しかしここで機能性との妙な妥協を見せなかったところがCLSの真骨頂なのである。

リアシートは、フロントのセンターコンソールがそのままフロアトンネルに沿って後席のセンターアームレスト部分まで延長されており、左右席を完全にセパレートしている。

つまりこのクルマは4シーター。後席の真ん中はロールトップ式の小物入れとなっており人は座れない。左右席も足元スペースなどは余裕タップリというほどではない。ピラーをくぐって乗り込んでしまえば、ヘッドクリアランスなどは大人の長距離移動に耐えられるだけの余裕が確保されてはいるものの、常に4人乗りを想定するような使い方には向いていないと考えた方が無難だ。

トランクルームは浅いが奥行きが広い。これだけ余裕があればスルー機構なども要らなさそうだ。ちなみメーカーの発表ではフルサイズのゴルフセットなら3セット。細身の物なら4セットが納まるとしている。

足まわりは硬い味付けでワインディングが得意だ
既存のメルセデスサルーンとはあまりに異なる4ドアモデルのため、内外装に関する説明が長くなった。そろそろ走り出そう。

CLSはEクラスのプラットフォームをベースに、足回りなどにSLのパーツを移植して作られている。搭載されるエンジンは、今回試す機会には恵まれなかったスーパーチャージャー付きの55AMGを別とすれば、標準モデルとして用意されるのはE500と同じ306psのV8と、このタイプのプラットフォームとはおそらく初の組み合わせとなる、SLKに積まれる4バルブDOHCヘッドの3.5L V6である。

トランスミッションはもちろん最新の7Gトロニック(55AMGは5速AT)。スポーツパッケージを選べばステアリングシフトも備わる。サスペンションはCLS350がコンベンショナルなスプリング、CLS500がエアマチックDCとなるが、スポーツパッケージを選べばCLS350でもエアサスが付く。

まずはCLS350の標準サスで走り出したが、鹿児島市内の細いつづら折れの坂道を下っただけで、Eクラスよりも格段にヴィヴィッドな動きを身に着けているのがわかった。ステアリングがクイックになり、およそ90度以上切り込む必要がない。曲率がそこそこきついコーナーでも手首の返しだけでスルリとコーナリングを完了する。

とは言ってもゲインがやたらに高く、意志に反して過敏な動きを見せるようなことはない。あくまでもメルセデスらしい正確さに裏打ちされた敏捷さで、これはSLKなどの乗り味に近い。

サスペンションはメルセデスとしてかなり硬い味付けだ。タウンスピードでは路面の継ぎ目をコツコツと拾い、高速に入ってもその印象は変わらなかった。しかしそれが不快なレベルにはなっていない。タイヤに入力を感じてもボディの方はあくまでもフラットだ。

指宿スカイラインでワインディングも思いきり楽しめたが、中~高速コーナーが連続するような場面では、CLSはボディの大きさを感じさせないほどイキイキとした動きを見せる。試乗当日はあいにくの雨とガスに祟られたのだが、動きが軽快で足も締まっているため結構なペースを保つことができた。

ただし、タイヤのグリップ限界を見定める感触は、既存のEクラスよりもほんの少しだけ曖昧だ。スタビリティ自体は極めて高いのだが、この辺の感触がさらに明確にあると、さらに思いきって楽しめる。もっともそれがCLSというクルマのキャラクターに合っているかと聞かれれば、若干違うような気もするのだが。

昼食を挟んで午後はCLS500に乗り換える。こちらは前記した通りエアマチックDCサス装着車だ。実は、E500に乗るかぎり、僕はこの電子制御が満載のパッケージがあまり好きではなかった。たとえばエンジンは非常にトルクフルだが、飛び出し感を抑えるために電動スロットルの反応を踏み込み初期に意図的にダルにしている。それは良いのだが、2度踏みすると今度は勢い良く飛び出してしまうような粗さがあった。センソトロニックブレーキもややタッチにスポンジーな印象があり、制動の立ち上がりもほんの僅かに遅い感じがした。このように細かい部分に機械の介在を感じさせる味わいだったのだ。

ところがほぼ同じ内容を持つはずのCLS500にはそれがない。各ユニットが熟成されたのだろうが、アクセルレスポンスもブレーキのフィールも極めて自然になっていた。エアマチックDCサスは、モードスイッチでコンフォート、スポーツ1、スポーツ2に切り換えられる。コンフォートとスポーツ1での乗り心地はCLS350も通常のサスよりも明らかにしなやか。スポーツ2では明確に硬くなるが、それも極端ではない。この辺はクルマに見合ったエレガントな味付けになっているのかも知れない。

CLS350と500。どちらが良いかと聞かれたら、たぶん僕はCLS350と答えるだろう。V6エンジンのためやはりノーズが軽くキビキビと走れるし、エンジン自体もこちらの方が表情豊かで走らせていて楽しいのだ。もちろんCLS500のウムを言わせぬトルク感もそれはそれで魅力的だし、価格帯を考えると、CLSをシャンシャン回して楽しむという僕のような輩は少数派だろう。その気になればそうした走りに応える能力は備わっているが、普段は優美な姿を愛でつつ、ドレスアップして都会の夜に繰り出す。CLSはそんなちょっと軟派な使われ方が似合う、これまでにないメルセデスなのである。(文:石川芳雄)

ヒットの法則のバックナンバー

メルセデス・べンツCLS500(2005年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4915×1875×1390mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1780kg
●エンジン:V8SOHC
●排気量:4965cc
●最高出力:306ps/5600rpm
●最大トルク:460Nm/2700-4250rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●サスペンション:前4リンク後マルチリンク

メルセデス・べンツCLS350(2005年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4915×1875×1405mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:272ps/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●サスペンション:前4リンク後マルチリンク

[ アルバム : メルセデス・べンツCLS(2005年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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(Webモーターマガジン Motor Magazine編集部)

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