東レは、車載用ディスプレイに求められる高視認性をさらに向上させ、かつ、画面の大型化や曲面化が可能な感光性導電材料「RAYBRID」を実用化し、本格的な量産と販売を開始した。この新たなRAYBRIDを用いることで、大型で見やすく操作がしやすい車載用ディスプレイを実現できる。RAYBRIDは、すでに一部のディスプレイモジュールに採用されている。
東レは、2012年に感光性導電材料RAYBRIDをスマートフォンの引き出し配線用途として事業展開して以来、低抵抗と微細配線を極限まで追求し、ディスプレイの大画面化・狭額縁化に貢献してきた。
従来の車載ディスプレイはITO電極を用いており、画面を大型化すると接触部の電気的変化を感知しにくく、反応遅れや誤操作に繋がる恐れがあった。ITO電極とは、タッチパネル等の電極にIndium Tin Oxide(酸化インジウムスズ)を用いたもの。量産実績が豊富で信頼性があるものの、電極が肉眼で見えてしまう「骨見え現象」と抵抗値の高さが課題であり、8インチ以上の大画面ディスプレイには対応できないと言われている。
東レが今回開発した感光性導電材料は、銀粒子を分散させたタイプで、2~4μmの細い配線を形成できる材料だ。ITO電極に比べて低抵抗なため、メタルメッシュ電極に用いることで、肉眼では電極が見えず、視認性が高い大型ディスプレイを作れる。また、メタルメッシュ電極形成時に引き回し配線を一括形成できるため、プロセスを簡便化できる。高い視認性と車載用に求められる材料としての高い信頼性が評価され、一部のパネルメーカーはRAYBRIDを導入したパネルの量産を開始している。
さらに、RAYBRIDは屈曲性に優れており、東レが開発した透明ポリイミドをフィルム基板として組み合わることで、薄くかつ軽いフレキシブルタッチセンサーに応用することができ、曲面ディスプレイへの適用が可能だ。車載用の曲面ディスプレイは、自動運転技術が本格化した時代の車内空間の快適性の向上やより高級感のあるインストルメントパネルの装着など、デザインの自由度を拡げるため、今後、拡大すると考えられている。
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