世の中にサーキットの狼が流行っていた頃、筆者をはじめとするスーパーカーキッズたちは、クルマのブラモデルに夢中でした。1/24スケールのそれらはすべてモーターで走る、いわゆるモーターライズモデル。マブチのFA-130という一番コンパクトなもの(今もミニ四駆やミニッツレーサーに使われている“あれ”ですね)に、単三電池2本というのがスタンダードでした。ある日、そのジャンルに、プラモデル界の雄・タミヤが参入してきて、ポルシェ935を発売しました。これはRE-14(その後RE-140に改称)モーターを搭載していて、それまでのどのモデルよりも速かったのです。
プラモデル界の雄・タミヤが参入
昭和40年代男子は、今でも心にスーパーカーを宿している…はず!
以後、他のメーカーも大きなモーターを積み始め、RE-26(RE-260)モーターや280モーター搭載のものまで出てきました。電池の本数を3本にしたものも現れ、さらには単三電池4本というまるでお父さんのラジオのような大電力モデルの登場に、我々スーパーカーキッズの心は期待に打ち震えたのです。
しかし、これらのクルマ達は単にまっすぐ走るだけだったので、そのうち飽きてしまいました。いくらハイスピードでも、それを発揮できる長い廊下が誰の家にもなかったからです。
「プラモデル追いかけレース」な日々
同じ頃、戦車のプラモデルはたいていリモコンでした。ラジコンではありません、有線のリモコンです。単二電池の入ったスイッチボックスと、1メーターちょっとの長さの線でつながっているのです。このリモコンボックスを使ってクルマを走らせる、というムーブメントが誰からともなく始まりました。
スイッチはオンとオフ、いきなり全開でダッシュするか、同じ勢いでバックするか。クルマ本体に電池が乗ってないのでべらぼうに軽快です。ちょっとした砂利道も、まるでラリー車のように走れます。しかしステアリングの機構はありません。
クルマのテールから伸びた線を左右に引っ張って後輪をずらして曲がる、いや、曲げるというワイルドでプリミティブなコーナーワークをみんな会得し、それでレースをして楽しみました。家の庭や敷地内に山あり谷あり崩れそうな橋ありのコースを作って競争するのですが、クルマの後ろをみんなでぞろぞろと小走りに追いかけて「操縦」するというスタイルはきっと、側から見て“めっちゃ変やったやろなあと”思います。
しかし若かったあの頃、(人の視線も)なにもこわくなかったのです。いまも実はわりと変わってないんですけどね(そこは変わろうよ)。
[ライター・撮影/小嶋あきら]
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