マツダが将来へ向けての技術説明会を開いた。同社のアイデンティティでもある「走る歓び」を追求しつつ、いまや避けることのできない環境との折り合いをつけるために、どのようにテクノロジーを進化させていくかという方向性を示したもので、『2030年にはマツダのクルマはすべて電動車(電気自動車、プラグインハイブリッド、ハイブリッドカー、燃料電池車)になる』という。ただし、バッテリーだけで走るEVはそのうちの5%程度であり、残りの95%は内燃機関+電動化技術のクルマになるという。つまり、しばらくエンジンが消えることはないという宣言ともとれる。
その象徴といえるのが『ロータリーエンジン×レンジエクステンダー』の提案だ。過去に、マツダは旧型デミオをベースに、330ccのシングルロータリーエンジン(RE)を用いたREレンジエクステンダーは実車まで作って、実証実験したことがある。レンジエクステンダーとは、バッテリーにプラスして発電機を搭載することでコストを抑えながら実用的な航続可能距離を可能にするという電気自動車のアプローチで、たとえばBMW i3などが市販車として存在している。
マツダの飽くなき挑戦「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー」国内編 Part 1
そのデミオREレンジエクステンダーは、発電ユニットをリアアンダーフロア(スペアタイヤのある場所)に設置していた。つまりREは地面に対して水平気味のレイアウトとなっていた。しかし、今回発表されたREレンジエクステンダーのレイアウトはまったく異なっていた。
発表資料を見る限り、新しいREレンジエクステンダーのエンジンは進行方向に対して横置きに搭載されているように見える。2気筒エンジンよりもコンパクトであるというアピールポイントから、シングルローターであることは変わらないだろうが、旧型デミオでの提案とはまるっきり異なっている。レンジエクステンダーであるからエンジンは発電に専念するため駆動には用いることはないのだが、それにしても横置きREというのは市販車としては初めてのように思える。はたしてエンジンルームが、どのような眺めになるのか、いまから楽しみだ。もっとも、レンジエクステンダーの場合、気軽にエンジンを眺められるような設計になっているかどうかはわからないが。
とはいえ、REを横置きにした例がまったくないわけではない。2009年に排ガスのクリーンな水素REを発電メインで使うシリーズハイブリッド車『マツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド』を少量ながらリース販売することを発表しているが、このクルマのパワートレインのレイアウトはエンジン横置きといえるものだった。
そして、マツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッドのREが水素とガソリンのデュアルフューエルだったように、REは液体・気体を問わず多種多様な燃料に対応しやすいという特徴がある。マツダが新たに展開するレンジエクステンダー用REにしても、ガソリンだけでなくCNGやLPG、そして水素への対応を考慮しているという。
ちなみに、レンジエクステンダーEVの運用というのは、基本的には充電によって走行することが優先でエンジンによる発電は補助的な位置づけ。一方で、充電設備が充実していないエリアであればガソリンタンクの容量を増やすことでシリーズハイブリッド(日産のe-POWERのようなシステムだ)として展開することもできる。さらに、バッテリーとエンジンによる発電をミックスしてハイパフォーマンスを味わいやすいのがプラグインハイブリッドとしての展開も可能だ。走りの歓びを求めるマツダが、生み出すREのプラグインハイブリッドが、どのようなフィーリングになるのか。これまで「モーターのようなスムースさ」と称されてきたREと、本物のモーター駆動のミックスが生み出す世界は、どこにも真似のできないものになることは間違いない。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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