■トラブルを防ぐために満タンを推奨か?
燃料タンク内の残量を常に満タンにする人や最低限の給油に留めておく人がいます。最近では、自然災害が多発していることもあり、常にガソリンを満タン状態にするよう心がけている人もいます。クルマのメカニズム的には満タンと少ない量では、どちらが良い状態なのでしょうか。
ガソリンとクルマの「相性」はある? ガソリンブランドごとの品質のちがいは?
ガソリンスタンドで「水抜き剤」をすすめられたことがある方も多いでしょう。その際に「満タンにしてないと空洞部分の湿気から水が溜まる」という説明をされる場合があります。
具体的には、空洞部分にある空気が外気との温度差により「結露」を生じさせ、タンク内に水分が溜まります。この水分が金属製タンクの錆の原因になり、エンジンパーツ内に入り込むことによってトラブルとなる可能性があるということです。
ただし、最近では樹脂製の燃料タンクが多く、タンク部分に限れば錆びることはなく、結露も発生しにくいといわれています。
では、タンク内の燃料量はどのようにしたら良いのでしょうか。長年自動車整備に関わっているディーラーの整備担当に伺うと、次のように話します。
「エンジンが正常に回転し続けるための重要なパーツとして、燃料ポンプというものがあります。燃料ポンプとは、燃料タンクからエンジンに燃料を送るものです。タンク内の燃料が極端に少なくなることで、クルマの揺れやカーブで燃料が動き、ポンプが燃料でなく空気を吸ってしまう可能性が高くなります。空気を吸ってしまうとエンジン回転が不安定になるか止まってしまいますし、燃料ポンプの寿命にも影響を与えます。
また車種にもよりますが、燃料が少ないと別の影響がでる構造のものがあります。例えば、30年前に製造されたある車種では、リターンホース(エンジンからタンクに燃料を戻すホース)から戻った燃料が高温になっていて、タンク内に残っていた燃料の温度が高くなり、燃料タンク内に気化したガスが発生して、燃料ポンプがガスを吸ってしまうというトラブルもありました」
樹脂製燃料タンクの普及によって錆の問題はほぼ解決のようですが、このようなトラブルもあって、自動車整備のプロからは満タンが推奨されているようです。
■満タンを「推奨していない」メーカーも
一方で満タンを推奨しないメーカーもあります。フォルクスワーゲングループジャパンによると、満タンによる重量増から推奨していないといいます。
フォルクスワーゲン グループ ジャパン広報部は「フォルクスワーゲンでは、給油の際は満タン給油を推奨はしていません。クルマの取扱説明書にも『タンクいっぱいまで給油すると、車両の重量が増加します。特に市街地走行には、タンクの1/2から3/4量の給油で十分です。燃料残量が少ない状態で走行すると路上で車両が動かなくなり、その結果、事故に至り、重傷を負う恐れがあります』と記載しています」といいます。
フォルクスワーゲンでは、燃料タンクの満タンを求めていませんが、同時に燃料が少なすぎると危険との注意も促しています。
前述の説明書には「燃料が少なすぎると、特に坂道走行時にエンジンへの燃料供給が不十分になる恐れがあります。燃料不足や不安定な燃料供給が原因でエンジンが“息継ぎ”やエンストすると、ステアリング、すべてのドライバーアシストシステムおよびブレーキアシストシステムが作動しなくなります。燃料不足で車両が動かなくならないようにするため、燃料タンクの残量が1/4以下になったら、必ず給油してください」と記載されており、少なすぎることによるトラブルの例も示されています。
燃料タンク内の量が少なすぎる場合に起きるトラブルの原因や症状は、メーカーによらずほぼ共通であることがわかります。なお、トラブルが起こりにくい量は、燃料タンクや燃料ラインの構造によって異なります。
車両重量増による燃費悪化ということからも、これから走る航続距離から適切な給油量を決めることが経済的にもクルマのトラブルを避けるためも良いようです。ただし、台風などの災害が予見できる場合は満タンにしておく方がよいでしょう。
ちなみに、セルフ給油をしている際、自動休止後に燃料キャップすれすれまでガソリンを入れる「継ぎ足し給油」は説明書などで明確に禁止されており、引火性のガソリンをこぼすなどで大きな事故につながることもあるので、ご注意ください。
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