第2次世界大戦前のフランスは「ブガッティ」を筆頭に、「アミルカー」や「サルムソン」、「ラリー」に「BNC」など、きら星のごとく個性的で魅力的な軽量級スポーツカーの宝庫だった。ところが戦後、それらメイクスのほとんどが消滅するかスポーツカー製造からの撤退を余儀なくされ、フランスからスポーツカーの灯は途絶えてしまったかのようであった。
そんななか、南仏の地方都市・ディエップのルノー販売代理店を父親から引き継いだばかりの若きディーラーのオーナーであったジャン・レデレが、ルノー「4CV」用のコンポーネンツを流用した小さなスポーツカー「アルピーヌ」を製作、自らそれをドライヴして、イタリアのミッレ・ミリアに挑戦し始めたのは1955年のことだった。そこで予想以上の好成績を収めたアルピーヌは、同じ1955年「ソシエテ・デ・オートモビル・アルピーヌ」社を設立、ルノーとの関係を構築し、巨大な後ろ盾を獲得するにいたる。戦後フランス随一のスポーツカーブランドとして、栄光の歴史を歩み始めることになったのだった。
今年もル・マンに本物と同じ景色が甦った──ル・マン・クラシックの進化ぶり
ルノーの主力機種が4CVからドーフィン、そして革新的なRR小型車「R8」へと切り替わるに従い、アルピーヌの始祖「A106ミッレ・ミリア」は、ドーフィンをベースとする「A108」へと進化、さらにA106の最速版「トゥール・ド・フランス」から発展し、A108で初採用した自社製バックボーンフレームにR8のコンポーネントを組み合わせた運命のモデル、「A110」シリーズが1962年秋のパリ・サロンにてデビューすることになった。
ここでレデレとアルピーヌの前に現れたのが、「ル・ソルシェ(魔術師)」なるニックネームとともに、当時、フランス自動車業界で勇名を馳せたエンジンチューニングの大家、天才アメデ・ゴルディーニだった。1965年に追加したA110の最上級モデルに、R8の高性能版「R8ゴルディーニ」用の1108cc、95psユニットを搭載したことがきっかけとなり、緊密な協力関係がスタートした。
そして、もともと長距離ロードレース用GTから発展したA110が、実はラリーマシンとして非凡な資質を持っていることに気付いていたレデレとゴルディーニ、そしてルノー経営陣は、このクルマをさらに進化させることを決定する。R8ゴルディーニの進化に従って排気量を拡大した「A110-1300S」は、1968年のフランス国内選手権でタイトルを獲得する。同年、モンテカルロやトゥール・ド・コルスなどの国際ラリーに参戦し、当時の世界最強ラリーカーであったポルシェ 911などの強豪を相手に、一定の成果を挙げた。
A110-1300Sの好成績で打倒ポルシェの可能性を確信したアルピーヌは、70年から最終兵器「A110-1600S」を、現在の「WRC(世界ラリー選手権)」の前身にあたる「ERC(欧州ラリー選手権)」に投入した。レデレとゴルディーニの目論みはみごと当たり、4気筒1600ccながら、圧倒的にコンパクトかつ軽い車体の効力で、遥かに排気量の大きいポルシェ911に匹敵する速さを発揮したことにくわえ、意外なまでの耐久性をも身につけた。そして1973年、WRCが正式にスタートした第1回大会で、初代ワールドタイトルを獲得。世界の頂点を極めるに至ったのである。
1960年代のアルピーヌとゴルディーニは、「ル・マン24時間レース」をはじめとするスポーツカーレースにも参戦した。ロータスのレン・テリー技師の助力で開発した「M63」と、その発展型である「A210」シリーズを擁してル・マンに挑戦。小排気量クラス、および性能指数賞/熱効率賞では毎年上位を占めた。また1970年代後半は、ターボチャージャーを搭載した「A442/A443」シリーズでル・マンに参戦。1978年には、念願のル・マン総合優勝を果たし、当時、最先端技術であるターボの旗手と目された。
一方1970年代は、石油ショックや公害問題、あるいは受動安全対策の影響で、市販ピュアスポーツカーにとっては「冬の時代」とも言われた。とくに、1973年をもってアルピーヌが100%ルノー傘下に収まったあとは、状況が変わっていく。イギリスのロータスが2代目エリートやエスプリで高級GT的指向性を模索したのと同じく、アルピーヌもスパルタンなリアルスポーツであるA110より、洗練した2+2のGTへの脱皮を目指し、71年には「A310」を市場に投入した。
当初A110-1600系と同じゴルディーニの4気筒ユニットを搭載したA310は、しかし、重量が増したために走行性能は低下した。モータースポーツでの活躍も限られ、人気は低迷する。しかし1975年から、プジョー・ルノー・ボルボが共同開発したPRV製2.7リッターV6エンジンに換装した「A310・V6」が登場し、ようやく一定の評価を得た。
また1976年には、ルノーが生産していたスモールハッチバック、「5(サンク)」の高性能バージョンとなる「5アルピーヌ」も登場する。現在のRSクリオ(ルーテシア)に至るルノー製ホットハッチの開祖となった。
そして1984年、A310の後継車となる新型車「V6GT/ターボ(ヨーロッパ市場はGTA名)」が登場した。V6ターボは日本にも正規輸入され、ポルシェ 911の数少ないライバルとして一定の評価を受けた。
だが、1991年登場の後継車「A610」はパワーアップとともにV6GT/ターボの弱点であった信頼性が大幅に向上したものの、人気は振わなかった。この結果、1995年をもってA610の生産は終了。同時に「アルピーヌ」ブランドも長い休眠期間に入ることを余儀なくされた。
20年弱の長い休眠期間を経て、新生A110を引っ提げて再登場したアルピーヌ。しかも、オリジナルA110の生産拠点でもあった開祖の地、ディエップで蘇ったのだ。それは、フランス製スポーツカーの復権を目論むアルピーヌの、群雄割拠の現代スポーツカー界に挑む意地と本気のあらわれだった。アルピーヌはかつてと同様、決してルノーの“スポーツバージョン”に留まらない、れっきとしたひとつのスポーツカーブランドなのだ。
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