ドリフトキング=土屋圭市など知名度抜群の例も
誰にでも、親にもらった大事な名前があるはずだが、芸能人には芸名があり、力士には四股名がり、水商売の女性には源氏名がある。スポーツマンでは、ボクサーやプロレスラーにはリングネームがあるが、他のスポーツでは、本名で活躍している人が多い。
レーシングドライバーも、基本的に本名でエントリーしている人がほとんど。しかし誰が付けたかわからないが、その人の個性を象徴する異名を頂戴しているレーサーもいる。たとえば、星野一義の「日本一速い男」。これほど名誉な称号はない。
日本人初のF1ドライバーである中嶋悟は、「雨のナカジマ」。雨のレースに強く、ウエットレースの1989年オーストラリアGPでファステストラップを記録したのは有名。某アナウンサーにドライビングスタイルを「納豆走法」と評されたこともあるが、偉大な実績があるにもかかわらず、異名はどうもパッとしない。
ほかの日本人F1ドライバーでは、カッコいいかどうかは別として片山右京の「カミカゼ・ウキョウ」が知られている。アグリ(鈴木亜久里)、トラ(高木虎之介)、タクマ(佐藤琢磨)、カムイ(小林可夢偉)、タキ・イノウエ(井上隆智穂)などは、ほとんど本名がニックネーム。その点、土屋圭市の「ドリキン」(ドリフトキング)が際立っているといっていい。
もうひとり、全日本ダートトライアルで9度のチャンピオンに輝き、パイクスピーク・ヒルクライムでもワールドレコードを樹立した田嶋伸博の異名「モンスター田嶋」も別格。「モンスター」の由来は諸説(伝説)あるが、1979年にザンクロスラリーに出場した際、現地ジャーナリストが田嶋のことを「モンスター」と評したのが最初、というのが公式見解(!?)。
外国人なら、アイルトン・セナの「音速の貴公子」、アラン・プロストの「プロフェッサー」などをはじめ、荒法師=ナイジェル・マンセル(マンチャン)、皇帝=ミハエル・シューマッハ(ターミネーター)、アイスマン=キミ・ライコネン、フライング・スコット=ジム・クラーク、ビッグ・ジョン=ジョン・サーティース、壊し屋=アンドレア・デ・チェザリスなど、しっくりくるニックネームも少なくない。
「ロータスの狼」「潮来のオックス」「ハマの黒豹」など、漫画「サーキットの狼」の世界では、日本人ドライバーも異名があるのが珍しくなかったのだが、現実的にはこれまであまり異名は流行っていない。ニックネームの知名度が高い、人気レーサーの出現を今後に期待しよう。
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