MT車でブレーキを踏みながらスムースにギヤを落とす技術
ヒール&トゥは、MT(マニュアルトランスミッション)車のスポーツドライビングのテクニックのひとつ。スポーツ走行でタイムを縮めるためには、コーナーの立ち上がりで、できるだけ力強く加速するのが肝要。
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そのためには、進入のブレーキングで落とした車速に合わせて、あらかじめ加速に適した、低いギヤにシフトダウンしておくのが望ましい。
そこで、加速をし始めるときにシフトダウンするのではなく、ブレーキングの最中に一緒にシフトダウンも済ませておこうというのが、ヒール&トゥの発想。
具体的には
(1)右足のつま先でブレーキペダルを踏む。
(2)ブレーキを踏んだまま、左足でクラッチを切る。
(3)ブレーキの踏力を保ったまま、右足の足首を少しひねって、踵側でアクセルをひと吹かしする。
(4)シフトレバーを操作しギヤを落としてクラッチをつなぐ。
この一連の流れをヒール&トゥという。
要はブレーキをつま先(トゥ)で踏みながら、踵(ヒール)でアクセルをブリッピング(ひと吹かし)するから、このネーミングで呼ばれている。その目的は、前記のとおりだが、問題はなぜシフトダウンの際にブリッピングが必要なのかという点。
なぜヒール&トゥを使う必要があるのか
クルマのカタログなどで、「走行性能曲線図」というグラフを見たことがあるだろう。あのグラフを見ればわかるとおり、クルマは同じ速度で走っていても、選んだギヤによってエンジンの回転数は変わってくる。例えば同じ100km/hでも4速なら4000回転で、3速だと5100回転になるクルマがあるとしよう。
このクルマで100km/hで走行中に、4速から3速にシフトダウンしようとし、クラッチを切って3速に入れ、そのまま素早くクラッチをミートさせたらどうなるか。4速と3速では1100回転の差があるので、一気に強力なエンジンブレーキがかかり、いわゆるシフトロック現象が発生する。
その結果、クルマは非常に不安定になるし、コーナリング中ならスピンモードになることも……。また駆動系にも大きなストレスがかかり、一歩間違うとエンジンをオーバーレブさせて壊してしまうこともある。
そこで各ギアの回転差を埋めるために、クラッチを切っているうちに、アクセルをひと吹かしし、回転を合わせて変速ショックをゼロにする、ヒール&トゥというテクニックが編み出されたというわけだ。
クルマではやや特殊なテクニックだが、バイクではブリッピングシフトダウンはごく一般的なテクニック。
上手にできず制動距離が伸びるなら本末転倒
ヒール&トゥで一番肝心なのは、とにかく減速が最優先で、最適なブレーキの踏力をずっとキープし続けること。ヒール&トゥのためにブレーキの踏力が弱まったり、途中でギクシャクしたり、制動距離が延びるようでは本末転倒、かえってメリットよりもデメリットが大きくなってしまう。
同様に、アクセルを吹かす量がいい加減で、回転が上がり過ぎたり、足りなかったりして、クラッチをつないだ瞬間、ガクッとピッチングを起こすようでは、ヒール&トゥは失敗……。上手にヒール&トゥを決めるには、それなりに練習が必要。
はじめのうちは、2速→1速などの低いギアでやるよりも、比較的高い速度で、4速→3速のシフトダウンで練習するほうが、トルクの関係、シフトパターンの関係からいっても取り組みやすい。
またターンイン開始と同時にヒール&トゥを行うのは、ステアリング操作とタイミングが重なり、より難易度が増すので、コーナー進入前、直線状態のうちにヒール&トゥを済ませてからターンインに移る方がベター。
そして長い直線からヘアピンのような小さなコーナーにアプローチするときも、ギヤは一速ずつ落としていくのが原則。しかも4速→3速→2速と慌ててシフトダウンするのではなく、ヒール&トゥとヒール&トゥの間に、一呼吸入れられるようなやり方の方がミスが少ない。
コツは、リズムとエンジンのブリッピングの量を『音』で覚えてしまうこと。ただし、最近のDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ=電子制御スロットル)のクルマは、アクセルの操作にリニアに反応しないクルマもあるので、そうしたクルマでヒール&トゥを決めるのは、かなり難しいので気をつけよう……。
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