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ジェイテクトJTEKTの最新技術深掘りレポート 2/2

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ジェイテクトJTEKTの最新技術深掘りレポート 2/2

前回、ジェイテクトの伊賀試験場における乗用車向けポートフォリオをいくつか紹介したが、こうした高い開発能力のあるサプライヤーになれば、自動車自体が大きく変化させることができるという側面もある。そこで、今回はさらに深掘りしてジャイテクトの事業を覗いてみよう。

ジェイテクトというサプライヤー

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まずは、ジェイテクトというサプライヤーについて紹介しておこう。ジェイテクトは2006年に光洋精工と豊田工機が合併して誕生した企業だ。光洋精工はベアリング、ステアリングなどを生産するサプライヤーで、一方のトヨタ系列の豊田工機は、自動車生産のための工作機械、産業用の工作機械を製造する機械メーカーだ。豊田工機は工作機械以外にエンジン部品、4WD用駆動部品なども生産していた。

この2社が合併したことで国産車はもちろん、欧州でもルノーやプジョー、シトロエンにステアリングを供給するなど、グローバル規模のサプライヤーとしてのポジションを確保している。

さらに現在はデンソー、アイシン、アドヴィックスとジェイテクトの4社が合弁で自動運転関連のソフトウエア開発会社「J-QuAD DYNAMICS (ジェイクワッド ダイナミクス)」設立し、「CASE」時代に向けての体制を整えつつある。

ジェイテクトはCASEの分野では、自動運転領域でステアリングの自動化、そして電動化の領域ではモーター駆動ユニットなどを担当している。

世界初の電動パワーステアリングを開発

自動車用製品としては、世界初の電動パワーステアリングを1988年に開発している。以来、世界でも高いシェアを持ち、また、1998年に開発した電子制御4WDカップリング(ITCC)は、日本車はもちろん世界で15社、66車種の4WD車に供給され、このユニットもグローバルで高いシェアを誇っている。

さらに世界でも唯一といえるトルク感応・遊星ギヤ式LSDシステム「トルセンLSD」(ジェイテクト以前はグリーソン社、ヂーゼル機器、ボッシュ社が製造販売)も、FRスポーツ・モデルのリヤLSDとして、そしてアウディ・クワトロ、トヨタ・ランドクルーザー系のセンターデフ用のLSDとして採用されている。

ジェイテクトはこれ以外に、ドライブシャフトやプロペラシャフト、ハブなど自動車用から産業用の多様なベアリング類、エンジン部品、工作機械、センサー類を持ち、最近では作業支援用パワースーツ、高耐熱リチウムイオン・キャパシターなど幅広い分野の製品を供給している。ジェテクトはクルマから産業分野までをカバーするTier1サプライヤーなのだ。

トラック・バス用ADAS対応パワーステアリング

自動運転という技術は、乗用車より商用のトラックやバス/マイクロバスの方から先に導入される可能性が高い。ドライバーの人手不足に悩まされる物流業界では、ADASの導入や無人運転化に対するニーズが高く、それ以外では過疎地などでのモビリティとして、コミュニテイ・バス型の無人運転車に対する需要も少なくない。

そうしたトラック、バスなど中大型車両のステアリングは大トルクが求められるため、乗用車のような電動パワーステアリングではなく、油圧のパワーステアリングが使用される。そのためこのADASや自動運転を導入するためには、この油圧パワーステアリングを前提とした電子制御ステアリング・システムが求められるのだ。

ジェイテクトでは、そのためにステアリングシャフト同軸式の電子制御アクチュエーターを開発している。ドライバーがハンドルを回すことで操舵トルクや操舵角度を検知し、ドライバーの力に代わって油圧パワーステアリングを操作するシステムだ。

電子制御アクチュエーターにはトルクセンサーが内蔵され、油圧パワーステアリングを作動させるだけではなく、中立感、切込み、切り戻し、操舵補助、ハンズオン/オフ判定、オーバーライド制御などをドライバー側にフィードバックすることもできる。つまり操舵力や操舵フィーリング、ステアリングの戻りや切込みのフィーリングなど、油圧パワーステアリングでは不可能なステアリングのチューニングを行なうことができるのだ。

バスの試乗テスト

試乗車の中型バス「日野リエッセII」は、ノーマルの油圧パワーステアリングと、ADAS対応アクチュエーターによる電子制御ステアリング・システムへ切り替えが可能になっており、両方を試すことができた。もちろんノーマルシステムはバス特有の超スローギヤ比で操舵力は重く、ステアリングに遊びがあり、応答もスローな状態である。

ADAS対応アクチュエーターによるシステムに切り替えると、しっかりとステアリングに締まり感が出て、さらに車速に応じた操舵フィーリングとなり、ギヤ比はスローだが、いわば乗用車ライクな自然な操舵フィーリングが実現していることが感じられた。ただし、遅日の大きなステアリングシステムに慣れた大型トラックのドライバーがこうしたフィーリングを好むかどうかは今後の検証が必要だという。

高耐熱リチウムイオン・キャパシター

従来の常識を破る高耐熱性を備えたキャパシターを開発している。動作温度は-40度~+85度で電圧制限を行なえば105度まで動作し、従来製品を大幅に上回り、自動車の車内温度環境に耐えられる世界唯一のリチウムイオン・キャパシターとなる。

また充放電サイクル寿命は通常のリチウムイオン電池の100倍以上で、バックアップ用補助電源として最適な特性も持っている。そのため、自動車以外の分野からも注目されている新製品だ。

この高耐熱リチウムイオン・キャパシターは、自動車用としては自動運転時代の電動パワーステアリングに不可欠な存在だ。自動運転時のフェイラー・オペラビリティ、つまり主電源のバッテリーがトラブルにより機能停止、電源喪失しても、このバックアップ電源によりパワーステアリングが作動して危険を回避できるというフェイルセーフ機能を実現することができるわけだ。こうしたバックアップ電源としてこの高耐熱リチウムイオン・キャパシターは存在価値は高い。

今回は、高温下ではなく極寒下でのエンジン始動能力のデモンストレーションが行なわれた。デモ用車両はオートバイのカワサキ・ニンジャ250で、ノーマルのバッテリー(純正バッテリー:鉛蓄電池 12V/8Ah)、デモ用のリチウムイオン・キャパシター(直列として12V/約1Ahの電力)を両方とも-40度まで冷却できる冷凍庫に収納し、回路を切り替えてそれぞれの電源によるエンジン始動を試した。

もちろん通常の鉛バッテリーは-40度といった温度ではほとんど起電力は発生せず、セルモーターは回転しない。しかしこの極低温でもリチウムイオン・キャパシターは、セルモーターを回転させるに十分な起電力を発生し、一発でエンジンは始動した。もちろん純正の鉛バッテリーに比べ、リチウムイオン・キャパシターはより軽量・コンパクトであることも特長だ。

このデモンストレーションで、超低温下でもリチウムイオン・キャパシターは性能低下せずに動作することの実証され、現在想定されている用途としては電動パワーステアリングのバックアップ用が本命である。

このようにジェイテクトでは、乗用車用部品に限らずシステムの構築やバス・トラックの分野での事業もあり、自動車産業全般に貢献している企業であることがわかる。こうした縁の下の力持ち的ポジションの企業情報は今後も発信を続けていく予定だ。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

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