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ZF:目指すのは究極のパワートレイン、その手段としての電動化

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ZF:目指すのは究極のパワートレイン、その手段としての電動化

 2018年現在、自動車のパワーソースとして、内燃機関に代わる決定的な手段はまだ見当たらない。さまざまな走行シーンにおける適応力、液体燃料の可搬性とコスト、出力密度とパッケージング──自動車100余年の歴史においてつねにエンジンが用いられ続けてきたのには、これらに対する順応性の高さが優れていたからにほかならない。
 しかし、不断の効率改善と出力向上を図ってきた現代のエンジンをもってしても、近年の環境問題への適応と規制対応には限界が見えてきた。解決策として注目を集めているのが、ご存じ電動化である。

 ZFは長年、変速機でエンジンを支えてきた歴史がある。先述のとおり自動車用のエンジンはパワーソースとして主役を張ってきたが、実のところパワーソース全体から眺めれば性質としてはひ弱ともいえ、高い効率を発揮できる運転状態や高出力を絞り出すポイントはごく狭い領域に限られてしまう。ZFは古くからその狭い領域を最大限に発揮できるように、変速機を用いて、エンジンというひ弱なパワーソースを扱いやすい「パワートレイン」に仕立ててきた。乗員に違和感を覚えさせない振動と騒音の仕立て、エンジンの最適運転ポイントを外さないための多段制御、ドライバビリティを追求した変速制御──いずれもエンジンと二人三脚で成し遂げてきたZFの成果である。

ゴムで内側からパイプを膨らませて固定 [人とくるまのテクノロジー展2018名古屋]



 
 
 
 お気づきかもしれない。電動化にも本腰を入れてきたZFの目指す方向性は、変速機時代と何も変わりがない。目指すのは、究極のパワートレインの実現である。エンジンの性質を知り尽くし、補完するための手段として、ギヤに加えてモーターも揃えてきたということである。

 たとえば乗用車用アプリケーションとしてのプラグイン・ハイブリッド・トランスミッション。ZFの主力商品のひとつである8速AT「8HP」のスターティングデバイスとしてモーターを組み込み、大容量のバッテリーと組み合わせて電動走行領域とアシスト領域を大幅に拡大するという手段は、エンジンにとってもトランスミッションにとっても、それぞれの得手分野を思い切り発揮するとともに苦手なところ──エンジンにとっての低回転高負荷域や変速機にとっての発進領域──はモーターに任せることで、新しいパワートレインの姿を実現した。伸張が期待される48Vシステムは、軽量コンパクトで低コストなシステムを用いて、可能ならばエネルギー回生を図り、エンジン/トランスミッションに楽をさせる。もちろん両者ともにドライバビリティの自然さは言うまでもなく、むしろモータートルク印加による新次元の走行感覚は、これまでのユーザーにも満足を与えること必至である。



 環境問題の良化という視点からすると、バス/トラックなどの商用車への電動化ソリューションも非常に重要な視点である。自動車という名称が示すように自由に動くことができる手段としてのクルマに存在意義があることは論を俟たないが、自由気ままに燃料を使い続けられることにも限界が見えてきた。ならば公共交通機関や必要不可欠な物流手段をモータライズするのは自然な成り行き。しかもこれらは一般的な乗用車に比べて走行条件に比較的変動が少なく、電動化との相性も良い。たとえば決まったルートを走行する路線バスにおいては完全電動化も荒唐無稽ではなく、事実ZFはマンハイムにおける電動バスやシュツットガルトにおける燃料電池バスの実用化に成功している。



 バッテリーEVは究極の姿ではあるが、現況バッテリーのエネルギー密度に課題があり、広く普及するには時間を要しそうだ。ZFはもちろんバッテリーEVの研究開発にも力点を置くが、それは解のひとつ。プラグインハイブリッドシステムから48V、電動アクスルユニットなど、さまざまなシステムを用いて現実問題の解決を図っている。それは変速機時代から同社が目指してきた「より良い自動車のパワートレインの実現」から些かもぶれていないのだ。


ZFの開発現場責任者に訊く

 こういった次世代電動化技術の開発、製品化について、ZFの開発現場は何を目指しているのか。先に行われた『人とくるまのテクノロジー展2018 横浜』(5/23~25)において、ZFジャパンのパワーエレクトロニクス担当、R&Dセンターマネージャーであるトーマス・シロン氏に話を聞いた。
(TEXT:世良耕太)


──ZFの電動化技術に関するプランを教えてください。
トーマス・シロン「ZFはエミッションを減らしたいと考えています。内燃機関の技術を改善することで実現するのがひとつの方向です。ギヤなど、トラディショナルなコンポーネントの改良と並行して、ドライブトレインの電動化を進めていきたいと考えています。電動化に関しては、国の規制を満足させつつ、カスタマーの要求に合うよう注意深く開発していきます」

──ハイブリッドシステムに関してはどのように考えていますか?
「もっと高電圧に向かうと考えています。電動コンポーネントの体積や重量を削減してほしいという要望が上がっています。この要望を聞き入れるには、システムを高電圧にし、パワー密度を高めていかざるを得ません」

──具体的な手段があれば教えてください。
「新しいタイプの半導体を使う動きが出ています。SiC(シリコンカーバイド)です。SiCを使うことで効率は上がりますが、引き替えにコストも上がってしまいます。このトレードオフについて注意深く調査し、ゆくゆくは日本から世界に展開したいと思っています。フォーミュラEでも電動化技術をテストしています」

──フォーミュラEで鍛えられるのはどのような技術でしょうか。
「パッセンジャーカーへの適用を視野に、高電圧のシステムを最適化できているかどうか確かめています。それがひとつ。もうひとつは、トラックなど商用車への適用を視野に開発に取り組んでいます。フォーミュラEで高電圧のシステムを使用することにより、3つの技術領域を確かめることができます。ひとつは大きな電流の使い方です。パッセンジャーカー、とくにプレミアムカーにフル電動のシステムを適用する場合は、大きな出力が必要になります。その場合、大きな電流を流すことになりますが、その電流の使い方をフォーミュラEで試すことができます。二つ目は振動、三つ目はSiCの挙動です。SiCについては、どんな状況でも上手に使うことができるかどうか確かめています」

──お話をうかがっていると、SiCに注目していることが伝わってきます。
「SiCを使うことでコンポーネントの効率を高めることができれば、バッテリーレンジを延ばすことができます」

──損失が減るので、容量が同じでも航続距離を延ばすことができるということでしょうか。
「そうです。バッテリーサイズを小さくすることもできるし、パワーに振り向けることもできます。電動ドライブトレインの高効率化にはさまざまなアプローチがあります。SiCは手段のひとつです。システムの効率を上げることでコストがどれだけ上がるのか。最適なバランスを探ろうとしているところです」

──効率アップとコストをバランスさせなければならないので、開発のハードルは高そうに見えます。
「研究開発に多くの費用を投じていますし、様々な企業とのパートナーシップを通じて技術力を引き上げてもいます。いずれにしても最終的なゴールは、カスタマーにより良い技術を提供することです」

──ありがとうございました。

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