RB26DETT型ユニットの実力は550ps、圧倒的な潜在能力の持ち主
スカイラインGT-Rがついに帰ってきた。長い間待っていた、あの伝説のGT-Rが、すごい走りを身につけ、復活したのだ。
GT-RはストレートシックスのRB26DETT型エンジンを搭載する。排気量は2.6リッターだ。2.6リッターという数値は、グループAレースでの4500ccクラス(ターボエンジンは実際の排気量×1.7倍で計算する)に相当する。残念ながらETC(ヨーロッパ・ツーリングカー選手権)はなくなってしまった。GT-Rは日本のグループAはもちろん、ETCのチャンピオンの座を狙って開発された(つまり世界最強のツーリングカーだ)。GT-Rの伝統に恥じない走りを、再び演じるだろう。新しい伝説が生まれるものと期待している。
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RB26DETT型エンジンの「TT」とは、ツインターボを意味する。最高出力は280ps/6800rpm、最大トルクが36.0kgm/4400rpmだ。スペックは強力そのもので、素晴らしいが、もともとレーシングチューンをすることを前提にしたエンジンだ。この程度のパワーは楽々引き出すはずである。
なお、グループA仕様に仕立てあげたGT-Rのパワースペックは、550ps以上/7600rpm、50.0kgm以上/6000rpmといったところになるという。
RB26DETTは、パワフルなだけではない。とてもフィールがいい。音質的に透明度が高く、ハイピッチなサウンドは官能的といっていい。4000rpm前後からのパワーの盛り上がりも、明確なステップを刻み、しかも運転を難しくすることのないレベルという、見事なチューニングに仕上がっている。日常領域のピックアップにもOKサインが出せる。この出来は、日本のスポーツ車のエンジンとしては、最も魅力的で洗練度が高い。
異次元感覚の速さ! スタビリティは世界一
それにしてもGT-Rは速い。とにかく速い。ターボパワーに有利な冬場になると、ゼロヨンは12秒台をマークする、というウワサもある。まさにブッチギリの速さといえる。しかもシャシー性能がまたすごい、最新の技術と最高の磨き込みで仕立て上げたシャシーが、GT-Rの速さを、ごくスムーズに、なにげなく発揮させるのである。これは「異次元感覚」とさえいってもいい。
GT-Rに乗ると、280ps/36.0kgmというパワースペックさえ、まるで日常的なレベルに感じる。いかにシャシーポテンシャルが高いか、そのイメージをつかんでもらえるだろう。
4WDシステムは、かつてない高度なハンドリングを実現した。サーキット走行レベルのホットに追い込む走りでも、コーナー進入時(とくにタイトターン)にアンダーステアを出さないように気をつければ大丈夫である。あとは、まったくラクなものだ。
パワーオンのままのコントロールでラインを選べて、自由度はかなり高い。それでいてGT-Rは、グイグイと力強く前方に突進し続けるのである。
スタビリティのよさはコーナリング時だけではない。高速直進時のスタビリティも高い。いや。高いなどというナマやさしいレベルのスタビリティではない。
たとえば、200km/hオーバーで走っていて、急ハンドルを切り緊急回避しなければならないようなケースに遭遇した場合、スカイラインGT-Rの回避能力は、間違いなく世界一だと言い切れる。
最後に念を押していっておきたいことは、GT-Rの「異常なほどのスタビリティの高さ」は、新たな危険を内包しているという点だ。それは、誰をも「かつては経験できなかったスピード領域に、平然と踏み込ませる可能性が大きい」という意味である。
だからGT-Rで走るにはドライバーのテクニックより、セルフコントロールができるか否かのほうがずっと大切な条件になる。すごいクルマが登場したものである。
(カー・アンド・ドライバー 1989年10月26日号掲載)
ワンポイント名車購入ガイド
3rd・GT-R(BNR32型)は、1989年8月から94年まで販売された。ラインアップは標準仕様のほか、レースベース車のニスモ、93年に追加されたVスペック系がある。車両価格は高騰中。10年ほど前は100万円前後から購入できたが、最近は、走行1万kmの極上車が1500万円。Vスペックで2500万円を超えるケースがあった。メーカーは「NISMOヘリテージ」として、生産が終了した部品の復刻に取り組んでいる。専門店が多いのは心強い。
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