現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > クルマの「肥大化」は「過度な速度追求」の結果! 無意味な性能争いをメーカーが「自制」する時代が到来した

ここから本文です

クルマの「肥大化」は「過度な速度追求」の結果! 無意味な性能争いをメーカーが「自制」する時代が到来した

掲載 更新 183
クルマの「肥大化」は「過度な速度追求」の結果! 無意味な性能争いをメーカーが「自制」する時代が到来した

 厳格化する安全基準を満たすには大きくならざるを得なかった

 クルマの肥大化が止まらない。また、新車価格も高くなる傾向にある。

モデルチェンジですっかりファンは離れた! 初代の志を復活すべきクルマ3選

 それらは、時代の要請といえる。ひとつは、1990年代から強化されてきた衝突安全性能の向上だ。

 クルマが衝突した際に、人命を守るのは当然のこととはいえ、その衝突安全性能の基準速度が年を追うごとに高くなってきた。当然、衝突の衝撃は速度が高くなるほど大きくなり、より衝撃吸収能力が高く、なおかつ客室は堅牢で乗員の生存空間を守らなければならない。

 衝撃吸収構造とは、簡単にいえば車体寸法に余裕があるかが一つの指標であり、衝突した場所から客室まで距離を稼げれば、その間に衝撃を吸収しやすくなる。結果的に車体寸法は大きくならざるを得ない。ことに側面衝突に対しては、ドアや支柱から座席までの距離が短いので、5ナンバー車の幅より3ナンバー化したほうが空間を稼げる。

 ところが、車体寸法が大きくなれば、それだけ多くの鋼板が必要になり、車両重量が重くなる。そのまま車両重量が重くなるに任せていたら、加速など動力性能が落ち、出力の大きなエンジンを載せなければならなくなる。重い車体と、馬力の大きなエンジンの組み合わせは、燃費を悪化させる。すなわち、二酸化炭素(CO2)排出量を増やすことにつながり、気候変動を加速させてしまう。重くなればブレーキの制動距離も伸びる。

 そこで、薄く軽くしても剛性の高い高張力鋼板や、超高張力鋼板といった高度な技術を使った鋼板を使わざるを得なくなり、そうした高度な鋼板は、当然ながら高価格だ。原価が上がるので、新車価格も高くなる。

 加えて、電動化や自動運転化といった先進技術の搭載もある。それらによって原価がより高くなる。

 環境問題という時代の要請もあるが、そもそもクルマが大きくなる背景にあったのは、衝突安全性能の向上が目指されてきたからで、そこには、ドイツ主導の動きもある。ドイツには速度無制限区間のあるアウトバーンがあるため、超高速からの事故で人命が守られるようにするには、規制における事故時の設定速度も高くせざるを得ない。

 ブツからないクルマ完成までは最高速度を規制するしかない

 これに対し、安全なクルマとして永年親しまれてきたスウェーデンのボルボは、かねてより交通事故による死傷者ゼロを掲げてきたが、目標とした年次に達成できないことを明らかにした。原因は、速度にある。したがって、ボルボは、ドイツも含め世界で販売する新車の最高速度を時速180kmまでにすると決断した。

 速度を追い求めることは、個人の自由の範疇だ。とはいえ、度を越した速度の追求は、単独事故だけで済まず他人を巻き込む恐れも高まり、ほったらかしていい話ではない。サーキット走行なら話は別だが、公道での速度にはおのずと適正な規範が求められる。

 また電気自動車(EV)の時代を迎えるに際し、やたらな高速走行は、バッテリーを過熱させ、走行距離を極端に短くする。ドイツのメルセデス・ベンツでさえ、EQCでは最高速度を時速180kmとし、それがEVとして適切な速度だと開発責任者は語った。

 速度への夢が無用だという話ではない。しかし、必ずしも公道でなければ意味がないということではなく、たとえばドイツのポルシェは、世界にエクスペリエンスセンターを建設し、今年、日本の千葉県・木更津にも開所する。つまり、今日のポルシェのあらゆる性能を存分に堪能するには、公道以外の適切な場が必要だということを示している。

 公道での無暗な速度の追求が、クルマの大型化と高価格化をもたらした。そろそろ、それは限界に達していると考えるべきだ。

 また、自動運転が完成し、ぶつからないクルマが生まれれば、小型で快適なクルマの価値が、より人々に注目されるのではないか。

こんな記事も読まれています

スズキ 新型グローバルSUV「フロンクス」 2024年秋、日本上陸へ!先行情報HPで公開
スズキ 新型グローバルSUV「フロンクス」 2024年秋、日本上陸へ!先行情報HPで公開
グーネット
トヨタ「クラウン」vs ホンダ「アコード」日本のフラッグシップセダンはどこを目指すのか?
トヨタ「クラウン」vs ホンダ「アコード」日本のフラッグシップセダンはどこを目指すのか?
@DIME
[カーオーディオ 逸品探究]実力スピーカーブランド「モレル」の革新機『ヴィルタス ナノ カーボン』の魅力を解析!
[カーオーディオ 逸品探究]実力スピーカーブランド「モレル」の革新機『ヴィルタス ナノ カーボン』の魅力を解析!
レスポンス
竹岡圭さん率いる圭rallyproject、XCRスプリントカップ北海道に参戦!三菱自動車やトーヨータイヤ等がサポート
竹岡圭さん率いる圭rallyproject、XCRスプリントカップ北海道に参戦!三菱自動車やトーヨータイヤ等がサポート
LE VOLANT CARSMEET WEB
【F1分析】角田裕毅の”第1スティント引っ張る作戦”は失敗だった? タイヤ交換のタイミング遅らせたメリットを活かせず
【F1分析】角田裕毅の”第1スティント引っ張る作戦”は失敗だった? タイヤ交換のタイミング遅らせたメリットを活かせず
motorsport.com 日本版
内紛とライバルの追い上げに揺れるレッドブルF1。ヘルムート・マルコが「レースへの完全集中」を求める
内紛とライバルの追い上げに揺れるレッドブルF1。ヘルムート・マルコが「レースへの完全集中」を求める
AUTOSPORT web
三菱「新型“SUV”ミニバン」公開! 4.5m級ボディにMT設定あり! 約350万円の「エクスパンダー “エリート”LE」に反響 尼で登場
三菱「新型“SUV”ミニバン」公開! 4.5m級ボディにMT設定あり! 約350万円の「エクスパンダー “エリート”LE」に反響 尼で登場
くるまのニュース
フォルクスワーゲンCEOが語る「愛されるブランド」へ回帰するための戦略とは? 看板モデル「ゴルフ」の未来にも言及
フォルクスワーゲンCEOが語る「愛されるブランド」へ回帰するための戦略とは? 看板モデル「ゴルフ」の未来にも言及
VAGUE
【38台限定】アストンマーティン「ヴァリアント」登場! フェルナンド・アロンソの依頼で実現した「Q by Aston Martin」手掛ける限定モデルとは
【38台限定】アストンマーティン「ヴァリアント」登場! フェルナンド・アロンソの依頼で実現した「Q by Aston Martin」手掛ける限定モデルとは
Auto Messe Web
WRC第7戦、オジェに代わって急遽参戦のロバンペラが圧巻の走りで優勝【ラリー・ポーランド】
WRC第7戦、オジェに代わって急遽参戦のロバンペラが圧巻の走りで優勝【ラリー・ポーランド】
Webモーターマガジン
ロバンペラ、ラリー・ポーランド”代打”優勝で疲労困憊「すごいことをした実感はまだないんだ」
ロバンペラ、ラリー・ポーランド”代打”優勝で疲労困憊「すごいことをした実感はまだないんだ」
motorsport.com 日本版
BMW『M2』改良新型、「M」の名に恥じない強烈な内外装
BMW『M2』改良新型、「M」の名に恥じない強烈な内外装
レスポンス
GT500は国産車だけど左ハンドル! 全日本ラリーに出る新井敏弘のWRX S4も左に変更! モータースポーツ車両のハンドル位置の謎
GT500は国産車だけど左ハンドル! 全日本ラリーに出る新井敏弘のWRX S4も左に変更! モータースポーツ車両のハンドル位置の謎
WEB CARTOP
ペレス、予選Q3に中古タイヤで出走し8番手「新品セットを温存する余裕がなかった」/F1第11戦
ペレス、予選Q3に中古タイヤで出走し8番手「新品セットを温存する余裕がなかった」/F1第11戦
AUTOSPORT web
横転クラッシュでも乗員を守るモータースポーツ車両の「ロールケージ」! 安全をアップする装備なら市販車に採用しないのか?
横転クラッシュでも乗員を守るモータースポーツ車両の「ロールケージ」! 安全をアップする装備なら市販車に採用しないのか?
WEB CARTOP
アルピーヌF1、チーム内“交戦規定”は効果ナシ? オーストリアでまたも対峙。ガスリー「チームは気に入らないはず」
アルピーヌF1、チーム内“交戦規定”は効果ナシ? オーストリアでまたも対峙。ガスリー「チームは気に入らないはず」
motorsport.com 日本版
「エスカレード」誕生25周年を記念した日本限定モデル 「キャデラック エスカレード スポーツ 25th Anniversary Edition」発売
「エスカレード」誕生25周年を記念した日本限定モデル 「キャデラック エスカレード スポーツ 25th Anniversary Edition」発売
月刊自家用車WEB
「一級河川」ってエライの? 川の看板でなぜか書いてある「一級」「二級」の意外な“違い”
「一級河川」ってエライの? 川の看板でなぜか書いてある「一級」「二級」の意外な“違い”
乗りものニュース

みんなのコメント

183件
  • 車線キープ用のカメラが壊れたらユニット全交換で40万円
    センサーが壊れたら20万円
    走行に直接関係ない装置がどんどん搭載されて
    それらが定期的に壊れて高額な修理費ばかりかかるようになってる
  • 自動運転でしか公道走れないようになったらマイカーなど誰が買うか
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村