鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラ第3戦は、かつてないほどにタイヤが鍵となるレースだった。その理由について、タイヤサプライヤーである横浜ゴムの証言を基に考えていく。
まず、決勝日の鈴鹿は雨だった。雨脚は午前中と比べると少し弱まっていたものの、路面は完全はウエットコンディションで、各車レインタイヤを履いてスタートした。
■タイヤの空気圧、高いとどうなる? 低いとどうなる? レースにおける“正解”はひとつにあらず【タイヤのプロに聞いてみた】
最初の波乱が起きたのは10周前後。上位を走っていた山下健太(KONDO RACING)や坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)をはじめ、一部のドライバーが急激なペースダウンに見舞われ、タイヤを交換するために緊急ピットストップを強いられたのだ(レースはウエット宣言が出されていたためタイヤ交換義務はない)。特に坪井はコース上に留まるのも精一杯なくらいまでグリップが落ちており、一気に下位集団にまで飲み込まれてしまった。
横浜ゴムのタイヤ製品開発本部 MST 開発部 技術開発2グループのグループリーダーである金子武士氏は次のように語る。
「早いタイミングでタイヤ交換したチームのタイヤをレース後に見ると、そのほとんどでブローのようなものが、特に左リヤタイヤで顕著に出ていました。まるでレースを最後まで走り切った時のようなブローが出ていたんです」
“ブロー”とは、タイヤに熱が入り過ぎてしまったために表面のゴムが膨れ上がったりしてしまう現象のことで、ブリスターなどとも呼ばれる。これがレース序盤で起きてしまったという訳だ。
最後までタイヤを持たせることができたドライバーがいる一方で、10周も持たずにピットインを余儀無くされたドライバーもいるという、稀に見る難しいレースとなった鈴鹿戦。彼らの明暗を分けた要因のひとつが、雨量の読み。実はレース中の雨量は徐々に少なくなっていき、路面も次第に乾いていったのだが、坪井を担当する菅沼芳成エンジニアは「僕たちは雨が降る方に寄せ過ぎちゃったと思います」と語っている。
では、雨が降り続くと予想していたチームはなぜタイヤのブローに見舞われることになったのか? これについては、空気圧が関係していた可能性が高い。金子と同じくMST 開発部 技術開発2グループの田澤一樹はこう語る。
「ウエットタイヤにはグリップが出る“美味しい”温度領域というのがあり、そこまでタイヤを温めてあげないとグリップしません」
「だから雨量が多い時は、空気圧を高くして蓄熱してあげるんです。雨量が多ければ、タイヤはどんどん冷やされていきますから、まずは蓄熱して、その温度領域に乗せてあげることが大事なんです」
「ただ、雨量が減ってくるとタイヤが冷えなくなるのでオーバーヒートが起きてしまい、中の物質が発泡してゴムが膨れ上がったり、ゴムが飛んでいってしまったりします」
ましてや、第3戦の舞台となった鈴鹿はタイヤへの負荷が特に大きいサーキットであり、タイヤも発熱しやすい。それに加えてウエットからドライアップしていった路面がそれに拍車をかけ、ウエットタイヤが極めてオーバーヒートしやすい状況が生まれていたのだ。そんな中で、大げさなまでにレコードライン外の濡れた路面を走り、タイヤのクールダウンを終始行なっていた松下信治(B-Max Racing Team)が、タイヤに苦しむライバル達を尻目に優勝を飾ったのも納得といったところだろう。
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