スウェーデンの首都ストックホルム近郊にある美術館でありイベントスペースでもある「アルティペラーグ」に、メルセデス・ベンツが世界中から実に600人以上のゲストを招いて開催したのは、新たなサブブランドとして立ち上げた「EQ」の市販モデル第1弾となる電気自動車(BEV)のSUV、その名もメルセデス・ベンツEQCのワールドプレミアイベントであった。
電動モビリティを中心に据え、それに関連するサービスやテクノロジーなど幅広い領域を包含するEQは、2025年には販売される車両の15~20%を電動化するというメルセデス・ベンツの将来の重要な鍵を握るサブブランドとして、2016年9月のパリ サロンで大々的に発表された。EQCのスタイリングは、その時に同時にお披露目されたコンセプトカー、ジェネレーションEQのイメージを色濃く継承している。
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全長4761mm×全幅1884mm×全高1624mmというサイズのボディは全体に丸みを帯びたクーペライクなフォルムとされているが、GLCクーペほどラディカルではなく、その意味でインパクトは強くはないが、きれいにまとめられている。
メルセデス・ベンツの他のモデルとの違いを強く主張しているのは、そのフロントマスクだ。まるで液晶パネルが埋め込まれたかのようだったジェネレーションEQのようにグリルレスとはさすがにならなかったが、ライトまで一体化され、周囲にトーチ状のイルミネーションが配されたブラックパネルのフェイスは、メルセデス・ベンツのSUVラインナップの中で確かに違いをアピールしている。
車体の基本骨格はGLCやCクラスなどと共用で、ブレーメン工場の同じ生産ラインに流される。エンジンルームだった場所には非同期式電気モーターやパワーコントロールユニットが積まれるが、これは強固なフレームで守られ、また振動、騒音の低減のためにサブフレームにラバーマウントされる。電気モーターはリアにも積まれ、合わせて最高出力408ps、最大トルク765Nmを発生し、0→100km/h加速は5.1秒、最高速は180km/h。前後車軸間のフロアに、こちらも周囲をフレームで覆うかたちで敷き詰められた水冷式リチウムイオンバッテリーは容量80kWhで、最大航続距離は欧州NEDCサイクルで450km以上と謳われる。
各種走行モードが選べるのは他のメルセデス・ベンツと同様だが、“ECO”のほかに更に“MAX RANGE”が用意されているのは、BEVらしいところ。回生ブレーキの強さをパドルで調整することもでき、もっとも効きの強いモードではブレーキペダルにほぼ触れないで済む、これもBEVらしいワンペダルドライブが可能だ。さらに、走行状況と地図データ、標識などを勘案して、コースティングや回生などを最適制御するECO Assist機能も用意されている。
インテリアは、最新のメルセデス・ベンツに共通の2画面を連結させたワイドスクリーンコクピットを備え、新しいインフォテインメントシステムであるMBUXを採用する。「Hey,Mercedes」の呼びかけで起動するボイスコントロールも搭載される。ナビゲーションシステムはバッテリー残量、充電スポットなどの条件を加味した案内が可能。空調はスマートフォンを使ってあらかじめ起動しておくことができるなど、使い勝手を高める機能も満載だ。
初めて本格的なBEVを市販するにあたって、メルセデス・ベンツは実に200台もの試作車を作り、試験を行ってきた。内容は通常のメルセデス・ベンツが行うものはもちろん、高電圧系や大容量バッテリーを積むBEV専用のものも含む。もちろんデジタルテスティング、要するにシミュレーションも多用され、その割合はざっと実際の車両を用いたものが65%に対して、コンピューター上がもはや35%にも達する。
このEQC、飛び道具のようなアイテムがあるわけではないし、数値的にもことさら派手にアピールするわけではないが、一方でメルセデス・ベンツらしくクオリティへの徹底的なこだわりを感じさせる。EQだからって、あるいはBEVだからってそこは特別なわけではなく、電気モーター駆動である以外はあくまで完璧にメルセデス・ベンツなのだ。
2019年初頭に生産が開始され、ヨーロッパでは上半期にも発売開始を予定しているEQC。日本にも年の後半には導入されることとなりそうである。
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