現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 「TOKYO 2020」の開会式に見た真夏の夜の夢とは?

ここから本文です

「TOKYO 2020」の開会式に見た真夏の夜の夢とは?

掲載 更新 8
「TOKYO 2020」の開会式に見た真夏の夜の夢とは?

「空飛ぶクルマ」に乗りたい!


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第166回

「30年前の未来のクルマ」展で改めて驚いたトヨタ4500GTの素晴らしさ


「TOKYO 2020」はなんとか無事に終わったようだ。多くの困難に直面したし、成功だったかどうかの結論が出るまでには、まだまだ時間はかかるだろう。でも、アスリートたちの戦いは素晴らしいものだった。これだけは間違いない。2週間、僕はTVの画面に釘付けにされた。

そんな TOKYO 2020の開幕式で、想像力を強く刺激された一幕があった。夜の国立競技場。その上空に浮かび上がった「市松模様のエンブレムが地球の形に変わる」シーンだ。映像技術もずいぶん高度になったなぁ、、、そんな感じでなんとなく観ていたのだが、アナウンサーのひと言で、一気に想像力に火がついた。

「1824機のドローンが描く地球が輝いています!!」、、、正確ではないかもしれないが、そんな言い回しだったと思う。

ドローンが、点検作業、農薬や肥料散布、3次元測量、空撮、、等々、多くの分野で実用化されていることはもちろん知っていた。でも、それ以上のことは知らず、2018年の平壌五輪で同様なことが行われたのも知らなかった。ちなみに、平壌五輪では1218機のドローンが使われたそうだ。

そんなことで、僕にとって、「1824機のドローンが描くキラキラした地球」は驚きだったし、衝撃でもあった。すぐにあれこれググってみたのだが、使われたドローンは、米intelの「Shooting Star」と名付けられたシステム。

「重さは330g、ローター直径が15cmの小型クアッドコプター、LEDライトの組み合わせで40億種類以上の光を表現できる、1台のPCで数千機のドローンをコントロールできる、、、」といったこともわかった。ハイテクに疎い僕は、これらを知っただけで「すごい時代がきてるんだ!!」と驚き、感激したが、同時に楽しい夢想が蠢き出した。


夢想とは「ドローン=空飛ぶクルマ」に乗り、できれば操縦もするといったことだが、夢に満ちた未来の移動手段は、世界中で静かに、しかし熱く開発競争が進められていることもわかった。

16個のプロペラが付いた二人乗り、最高速度130キロ、自動操縦、予価30万ドル、といったスペックのドローン。実際に人が乗って飛んでいる映像もあった。見ているだけでワクワク、ムズムズしてくる映像だった。

トヨタも出資するアメリカのベンチャーが開発する電動垂直離着陸機。これは、パイロットと4人の乗客を乗せて160kmの飛行が可能という。数年内に世界規模でのエアタクシーネットワーク構築を計画しているとのこと。

僕にとって、空飛ぶクルマは、今はまだ夢の世界、想像の世界でしかない。だが、早ければ3~5年先には現実の世界として、扉が開かれるかもしれないのだ。こうした計画には、各国規制当局からの承認というすごく高いだろうハードルが待ち受けているはず。そして、それを超えられるかどうかが、夢から現実に変わるまでの時間を大きく左右するのだろう。

話は少し飛ぶが、未来の移動を担わんとする空飛ぶクルマ、、、その機材やフライト映像を見ながら頭に浮かんだのは、ヘリの思い出だった。

ヘリに乗る機会がもっとも多かったのは1970年代後半から1980年代にかけて、、、。自動車メーカーの研究所やテストコースに招かれるとき、移動手段としてよくヘリが使われた。まずは本社であれこれミーティングをして、その後テストコースに、、、といったケースが多かった。

街の、山の、海の上を、200~300mほど?の高度で飛ぶヘリからの眺めが僕は好きだ。なにか大きな自由を獲得したような、高揚した気持ちになる。

ちなみに、ヘリのベストな思い出といえば、WBC ラリー・フィンランドを追いかけたときのことが挙げられる。1975年のことだ。

透明なカウルが足下まで伸びた視界抜群の小型ヘリだったが、痺れたのはパイロット。年齢は30代後半くらいで、フィンランドの上位ランカーだったという元ラリースト。ラリーコースは熟知しているし、飛び方がまた「ラリーカーのようだった!」のだ。ヘリがこれほど機敏で俊敏な身のこなしができるとは思ってもみなかった。

速いコーナー、タイトなコーナー、複合コーナー、ジャンピングスポット、、、いろいろなコーナーをいろいろなアングルと高度から存分に見せてくれた。木や電線スレスレに飛び、サービスポイントでは、「ヤバい!!」と声を上げてしまいそうな小さな空き地に降りることもあった。

彼のヘリ操縦技術には、ラリーで培った独特の動体感覚が塗り込められているのだろうと思った。二度とできない最高の経験をした。


空飛ぶクルマに話を戻すが、高度な安全性確保のため、高度な自動操縦が求められるのは当然のこと。地上を走るクルマも同様だ。安全性と快適性を高める自動運転の高度化は、今後必須の条件になる。

自動運転の高度化は、クルマ好き、運転好きにとっては面白くない未来像かもしれない。でも、なににも優先されるべき安全性を軸にした進化像としては逆らえないことだ。僕も「運転好きの権化!?」のような人間。基本的には昔も今も変わらない。しかし、歳を重ねるにつれ、視力、とくに夜間視力を中心にした感覚の衰えは認めざるを得ない。

なので、5~6年前から、「日々使うクルマは最新の運転支援システム搭載車」と決めている。運転支援システムが高度化すれば自動運転に近づくわけだが、そうなれば、僕の運転寿命も伸びるかもしれない。

自動操縦が空飛ぶクルマに高い安全性をもたらすだろうことは、理論では理解できる。だがその一方、多くが大都会上空を安全に飛び交えるということを、正面から受け容れるのには抵抗があった。「ほんとうに安全なのか?」との思いが、どうしても頭を過った。

しかし、国立競技場上空の小さな空間の中、1824機ものドローンが整然と緻密に動き、心奪う美しいシーンを演じきったことを見て、疑念は急に小さくなった。そして、空飛ぶクルマで、東京やNYやロンドンを飛びたいという気持ちが一気に強くなった。


空飛ぶクルマの安全性が、高度な自動操縦技術によって(もちろん、法整備と高度なインフラ整備も必須だが)担保されることは間違いないだろう。それはそれでいい、、、のだが、どうも引っかかるところがある。

運転好き=操縦好きとしては、すべてをシステムに委ねるだけ?、、、自分の出番はまったくない?、、、というところが引っかかる。クルマで言えば、運転支援システムは有り難い。だが、その一方で、「自分の意志、あるいは自分の腕で自由に走りたい!」という欲求を多くの人が持っているはずだ。絶対に!

当初はタクシーや貨物運搬に的は絞られるだろうから、自動操縦だけで構わない。いや、そうあるべきだろう。
しかし、自家用機が増え、大衆指向、中間指向、高級指向といった流れができる状況になったら、、、そこには必ず「趣味嗜好」の要素が入ってくるはず。

そして、いろいろなブランドが生まれ、実力を、価値を、華を競い合うようになり、趣味嗜好の要素が競争力を左右する大きなポイントになってゆくだろう、、、今と同じだ。

そうなれば、当然「スポーツカー」も作られる。、、、で、ラリー・フィンランドを追ったヘリのような、非日常的な空中体験 / 空中ドライビングもできるようになる、、、!?。

空飛ぶクルマにも、トヨタあり、VWあり、ロータスあり、フェラーリあり、、、それぞれが所有者の目的と趣味嗜好に寄り添った「佇まいと飛び」を提供するということだ。もちろん、普段は、法の下、自動操縦で秩序正しく安全に飛ぶ。しかし、しかるべき場所に行けば、室屋義秀選手が飛ぶエアレースのようなフライトにもチャレンジできる、、、。

夢想が過ぎるかもしれない、、、が、オリンピック開会式で1824機のドローンが描いた光景は、僕の頭に心に、そんなドキドキ、ワクワクする夢を運び込んでくれた。


● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト


1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

こんな記事も読まれています

【宮田莉朋F2密着】前日の好走から一転。スピードを失った車両で苦戦した日曜日/第6戦レビュー後編
【宮田莉朋F2密着】前日の好走から一転。スピードを失った車両で苦戦した日曜日/第6戦レビュー後編
AUTOSPORT web
2024年F1第10戦スペインGP決勝トップ10ドライバーコメント(1)
2024年F1第10戦スペインGP決勝トップ10ドライバーコメント(1)
AUTOSPORT web
フルチューン済み、ノイエ・クラッセのBMWの相場感は?「1800TI」のFIA公認済みの個体なら800万円程度が妥当!?
フルチューン済み、ノイエ・クラッセのBMWの相場感は?「1800TI」のFIA公認済みの個体なら800万円程度が妥当!?
Auto Messe Web
『ぽんこつジムニー』ハコ替え計画26-2「JB64のシートを移植しよう」
『ぽんこつジムニー』ハコ替え計画26-2「JB64のシートを移植しよう」
グーネット
ダ・コスタのFEミサノ優勝剥奪が正式決定。レース後車検の失格を控訴裁判所が支持
ダ・コスタのFEミサノ優勝剥奪が正式決定。レース後車検の失格を控訴裁判所が支持
motorsport.com 日本版
オットキャストとユアーショップが業務提携、販路拡大へ
オットキャストとユアーショップが業務提携、販路拡大へ
レスポンス
【ファイヤー!!!】復活は100%ありえないだろう・・・5億円超のケーニグセグ ジェスコが全焼&全損!無残な姿に・・・
【ファイヤー!!!】復活は100%ありえないだろう・・・5億円超のケーニグセグ ジェスコが全焼&全損!無残な姿に・・・
AutoBild Japan
【日本限定のビスポーク】 日本と英国からインスピレーション レンジローバーSVに限定仕様
【日本限定のビスポーク】 日本と英国からインスピレーション レンジローバーSVに限定仕様
AUTOCAR JAPAN
どこから? 三菱自動車の敷地で環境基準を超えるフッ素…使用履歴はなし 愛知県岡崎市
どこから? 三菱自動車の敷地で環境基準を超えるフッ素…使用履歴はなし 愛知県岡崎市
レスポンス
グラフィットが四輪型特定小型原動機付自転車を用いた実証実験を7月からスタート
グラフィットが四輪型特定小型原動機付自転車を用いた実証実験を7月からスタート
バイクブロス
【今日発売】BYDシールに国内最速試乗 AWDで537ps・航続およそ600kmにして実質537万円の戦略価格
【今日発売】BYDシールに国内最速試乗 AWDで537ps・航続およそ600kmにして実質537万円の戦略価格
AUTOCAR JAPAN
「感動を疑似体験」ヤマハ発動機と楽器のヤマハ、体験型インスタレーション「e-plegona」がデザイン賞
「感動を疑似体験」ヤマハ発動機と楽器のヤマハ、体験型インスタレーション「e-plegona」がデザイン賞
レスポンス
新型SUVクーペ、ハイブリッドも設定…長城汽車の「HAVAL」が南アフリカで発売
新型SUVクーペ、ハイブリッドも設定…長城汽車の「HAVAL」が南アフリカで発売
レスポンス
バス会社「待合室が落ち込んだので閉鎖中です」衝撃投稿に反響多数!? 「えらいこっちゃ」「北海道は異世界」バス停の無惨な風景が話題に
バス会社「待合室が落ち込んだので閉鎖中です」衝撃投稿に反響多数!? 「えらいこっちゃ」「北海道は異世界」バス停の無惨な風景が話題に
くるまのニュース
KTM Japanがモトクロス&クロスカントリーのMY2025モデルを発表! KTM Factory Racing譲りの進化を実現
KTM Japanがモトクロス&クロスカントリーのMY2025モデルを発表! KTM Factory Racing譲りの進化を実現
バイクのニュース
スズキの[新しい軽SUV]はワイルド&イケメンになっても176万円!! 走りも優秀なのよ!
スズキの[新しい軽SUV]はワイルド&イケメンになっても176万円!! 走りも優秀なのよ!
ベストカーWeb
20歳女子レーサーがホンダ「ビート」で軽MT初体験!「エンジン回すとめちゃくちゃ気持ちイイです!」【令和女子旧車に乗る】
20歳女子レーサーがホンダ「ビート」で軽MT初体験!「エンジン回すとめちゃくちゃ気持ちイイです!」【令和女子旧車に乗る】
Auto Messe Web
飲酒運転を絶対にしない! させない!【運転初心者ための交通ルール&運転マナー】
飲酒運転を絶対にしない! させない!【運転初心者ための交通ルール&運転マナー】
くるくら

みんなのコメント

8件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村