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「えっ、ほぼ同じ!?」MotoGPライダーのヘルメットと市販品の違い。SHOEIレーシング・サービスに聞く

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「えっ、ほぼ同じ!?」MotoGPライダーのヘルメットと市販品の違い。SHOEIレーシング・サービスに聞く

トップラダーが使うヘルメットは、すでに完璧!?

 MotoGPのパドックに並ぶ大きなトレーラーの中には、ヘルメットサービスを提供するヘルメットメーカーのトレーラーがあります。日本のヘルメットメーカー、『SHOEI(ショウエイ)』もそのひとつです。

【画像】MotoGP現場で見た「SHOEIレーシング・サービス」(8枚)

 レースが行なわれる週末、トレーラーではどのような作業が行なわれているのか? ライダーからどんな「リクエスト」があるのか? そして、ライダーがMotoGPで使用するヘルメットは、どんな物なのか……。

「SHOEI EUROPE DISTRIBUTION SARL MotoGPレーシング・サービス」を務める、ミカエル・リヴォワールさんに話を伺いました。

 2024年シーズンのMotoGP第5戦フランスGPの木曜日、指定された時間にSHOEIのトレーラーに行くと、リヴォワールさんが明るく出迎えてくれました。非常に大きなトレーラーの内部は、リヴォワールさんのオフィス、作業場になっています。中に入るとサポートライダーのヘルメットが並んでいました。

 SHOEIのヘルメットを使用するのは、MotoGPクラスに参戦するマルク・マルケス選手(グレシーニ・レーシングMotoGP)、アレックス・マルケス選手(グレシーニ・レーシングMotoGP)、ファビオ・ディ・ジャンアントニオ選手(プルタミナ・エンデューロVR46・MotoGPレーシングチーム)などのライダーです。また、スーパーバイク世界選手権(SBK)ではトプラク・ラズガットリオグル選手(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)がサポートされています。

 MotoGP、SBKライダーたちが使用するのは、「X-SPR Pro」(日本の製品名は「X-Fifteen」)です。

「明日から日曜日までのわたしの仕事は、セッションが終わるたびに、ライダーから、あるいはライダーのヘルパーからヘルメットを受け取り、ヘルメットを乾かしてきれいにして、新しいティアオフを付ける、というルーティンになります。必要に応じてチークパッドなどを交換しますし、バイザーを再調整することもあります。これが、通常のレースウイークの一般的な仕事です」

 マルク・マルケス選手については、まだ彼が125ccクラス(Moto3クラスの前身)で走っていた2010年からの長い関係です。MotoGPクラスで6度のチャンピオンを獲得したマルク・マルケス選手からは、ヘルメットについてどんなリクエストがあるのでしょう?

 リヴォワールさんの回答は「マルク・マルケスはとても楽なライダーです」というものでした。

「彼はヘルメットについて考えたくないのです。彼はこのヘルメットについて、技術的なことは考えません。このヘルメットはすでに、わたしたちが手に入れられる最高のものですからね」

「ずっと前に彼がわたしたちのヘルメットを使い始めたとき、彼はまだ子供でした。彼は自分の古いヘルメットと比べ、“SHOEI(のヘルメット)は問題ない。パーフェクトだ。これ以上は必要ない”と言いました」

「あと、マルクは多くのライダーのように、デザインに関わることが好きですね。彼はみなさんに自分を知ってもらいたいんです。そのために、デザインはとても重要ですから」

「私たちはシーズンの始まりにフィッティングを行います。冬の間にライダーの体型が変わることもあるので、調整することもあります。そもそもヘルメットの性能が良いので、それで問題ありません。テレビで見ていると、ライダーが頭を上げ、ブレーキングをしてコーナーに進入するとき、風のために頭が動いているのを見ることがあると思います。そのような動きは、SHOEIのヘルメットでは見られません。SHOEIのヘルメットを被るライダーはみんな、ヘルメットに満足していますよ」

 マルク・マルケス選手が「ヘルメットについて考えたくない」という意味がわかる、リヴォワールさんの回答があります。それは、ティアオフ(ヘルメットのシールドに貼られる透明なフィルム。汚れなどで視界に影響が出た場合など、はがして捨てることで視界をクリアに保つことができる)についての話の中でのことでした。

「彼がレースに挑むときは2枚のティアオフを貼った状態で、いつもレースのスタート前に1枚目をはがしているのが確認できると思います。そのあとは、1枚のティアオフでレースを走り切ります。多くの場合、そのティアオフは、たくさんの虫や油、タイヤのゴムかすなどがびっしりとついています」

「しかし彼は……、彼はヘルメットのことを考えていないのです。ただただ、レースだけに集中しているんです」

 なるほど、マルク・マルケス選手はレースに全力で集中しており、そこではヘルメットのことを考える余地がない、ということなのでしょう。

 けれど、それはわたしたちのような一般道でバイクを走らせる、バイクを楽しむ人間にも言えることかもしれません。もしバイクで走っていてヘルメットのことを気にするときがあるとすれば、それはヘルメットや頭部に違和感があるときではないでしょうか。そう考えれば、重要な装具でありながらも「当たり前にそこにあること」がヘルメットの条件なのかもしれません。

 リヴォワールさんは、サポートするライダーたちからの要望についてこう語っていました。

「ライダーによってはフィッティングに少し時間が必要だったりしますが、それはフィッティングの問題だけです。いかに彼らにヘルメットのことを考えさせないようにするか、なのです。その後、彼らはもうヘルメットのことを気にしません」

 ちなみに、ライダーによって個性的なリクエストもあるそうです。

「ディ・ジャンアントニオはシールドの左右にオレンジのタグをバランスよくつけるために、三枚目のティアオフを反対側につけていますね。これは単に、見た目の問題です。アレックスは、FP2、Q1、Q2で毎回、新しいヘルメットを使うことを好むんですよ」

 では、雨のレースではどうでしょう。

「雨が降ったら、クリアのシールドを取り付けます。ジェイク・ディクソン(Moto2ライダー)など数名のライダーは、クリアのシールドです。その他のライダーは、少し色のついたメロー・バイザーと呼ばれるものを使用します」

「それから、多くのライダーにはエアーマスクを取り付けますね。エアーマスクは、シールドに空気が戻って曇ってしまうことを避けるためのマスクです。私たちはピンロックとエアーマスクを使って、曇り防止システムを最適化しています。ただ、全てのライダーがこれを使用しているわけではなく、マルクはエアーマスクを使いません」

 ヘルメットに関して最も興味深い点のひとつは、MotoGPライダーが使用しているヘルメットは、市販されている物と同じだということです。マルク・マルケス選手をはじめとするレーシングライダーたちは、「X-SPR Pro」(日本の製品名は「X-Fifteen」)を被っています。それは市販されているヘルメットと、基本的には同じです。

「ヘルメットでわたしが行なうことは全て、ショップにもあります」と、リヴォワールさんは語っていました。もちろん異なるところはありますが、それは塗装の部分だけです。

「このヘルメット(MotoGPライダーのヘルメット)とショップで売られているものの違いは、ライダーのためにペインターによって塗装されたもので、わたしが調整したヘルメットだということです。他のヘルメットは、工場で塗装されたものです。これが唯一の違いですね。それ以外のすべての部分、フィッティングなどは、ショップでP.F.S(パーソナル・フィッティング・システム)を使うときと同じです。シールドもピンロックも、エアーマスクも、(市販品と)同じです。わたしがここでやっている全てのことは、販売店でわたしたちが売っているパーツで行なっています」

 ここでひとつの疑問が浮かびます。なぜ、SHOEIはMotoGPの現場でプロトタイプのヘルメットを投入しないのでしょう。

「現在のFIMのルールによるものです。プロトタイプを投入しようと思ったとき、ひとつのプロトタイプのためにホモロゲーションを取得することは簡単ではないのです。レースウイークでは、FP1からレースまで、FIMによってホモロゲーションを受けたヘルメットを使用しなければならないのです。プロトタイプでホモロゲーションを取得しないのは、1つまたは2つのヘルメットだけのためにお金を使うことになるからです。ただ、時には、テスト用のものを作るときもありますよ。レース用ではなくね」

 プロトタイプマシンで争われる、2輪ロードレースの世界最高峰の選手権でライダーが被るヘルメットは、わたしたちが購入できる市販品と同じ物、という事実には、いささか驚きます。わたしたちは引き続き、マルク・マルケス選手が使っているものと同じヘルメットを買うことができるというわけです。

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みんなのコメント

25件
  • むっしゅ
    アライも、市販用の製造ラインから適当に1個取り出して、そのライダー専用のカラーリングして渡すって言ってたな。
  • むしさされ
    フィッティングも大事。自分は服のサイズがいつもLLだから、計測した頭の周囲よりワンサイズ大きめのLを買ってしまったが、ショップで係員が測ったらS〜Мサイズだった。パッドも実際に装着しないとわからないしヘルメットはネットで買うものではないなと実感した。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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