■無人のクルマが最高時速300キロで走行する!?
世界最大級のIT・家電見本市「CES 2021」オンライン開催で、無人の完全自動運転車レース「インディ・オートノーマス・チャレンジ」の決勝が2021年10月23日に開催されることが発表されました。
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開催されるコースは、伝統のインディ500開催と同じ1周2.5マイル(約4km)の長方形オーバルコース「インディアナポリス モータースポーツウェイ」で、参加マシンや開催の詳細も明らかにされています。いったいどんなレースとなるのでしょうか。
レースの周回数は20周で、平均走行速度は最低でも時速120マイル(時速192km)以上という、これまでの自動運転のイメージでは考えられない超高速走行となります。
使用する車両は、インディカーシリーズの下部クラスである、インディライツ向けマシン。車体はイタリアのダラーラ製で、ボディ寸法は全長4876mm×全幅1930mm、ホイールベースが2971mm、重量は650kgです。
エンジンは排気量2リッター直列4気筒ターボで最高出力は450馬力。また、追い越し時に一時的にパワーアップが可能で最高で500馬力を発揮するとともに、最高速度は時速210マイル(時速336km)にもおよぶ超高速レーシングカーです。ちなみに、上位クラスのインディカーは最高速度が時速380kmに達します。
今回のインディ・オートノーマス・チャレンジ用としては、カメラやレーダーなど車体各部にセンサーを装着しての使用となります。
参加するのは、欧米を中心とした各地の大学など教育機関に通う学生で編成される30チーム。レースはソフトウェアのプログラミングによる走行パフォーマンスを競います。
レース第一弾としては、2021年2月中にシミュレーターによるレースを実施するのですが、それでも優勝賞金は10万ドル(約1040万円)。
10月21日から22日に実車による1チーム10周による予選、そして23日が20周の決勝となり、優勝賞金は100万ドル(1億400万円)、2位が25万ドル(2600万円)、3位が5万ドル(520万円)という破格の設定です。
インディ・オートノーマス・チャレンジを仕切るのは、ドイツ生まれのセバスチャン・スラン氏(53歳)。彼は、自動運転の開発・研修の世界では、超有名人です。
コンピュータサイエンスの研究者だった彼の名が最初に世界の表舞台に登場したのは、アメリカ国防総省の高等研究計画局(DARPA:ダーパ)が2005年に開催した、無人ロボットカーレース。スタンフォード大学チームのリーダーとして優勝したときです。
当時の開催場所は、カリフォルニアとネバダの州境の砂漠でした。実は、2004年の第一回では完走車ゼロで、優勝賞金は翌年にプラスされ、200万ドル(約2億円)となったことも、世界で大きなニュースになりました。
DARPAによる無人ロボットカ―レースは2007年にも、今度は場所をカリフォルニア州内の空軍基地跡地を市街地に模しておこなわれています。
こうした自動運転黎明期の研究者の多くがその後、大手IT企業や自動車メーカーに引き抜かれ、現在の自動運転技術の基礎が築かれました。
スラン氏はグーグルに転じて、グーグルカーと呼ばれる自動運転車や、メガネタイプの画像機器グーグルグラスなどを研究開発するグーグルXを創設しています。
さらにスラン氏は「最新のIT系技術を、世界のどこにいても学ぶことができる場所が必要だ」という信念から、自動運転技術を筆頭に、さまざまな先端IT系技術をオンラインで学習することができる「ユーダシティ」を2012年に設立しています。
インディ・オートノーマス・チャレンジ開催について、スラン氏は「今回のような超高速での競技をおこなうことは、若手IT技術者を育成するうえで大きな意義がある」と自身の思いを語っています。
■決勝レースはどのような光景になるのか
この他、近年の自動運転車によるレースでは、一時フォーミュラeとの併催を検討してきた、英国の「ロボレース」があります。
主催者が各チームに同じ仕様のマシンを用意し、ソフトウェアのプログラミングによる競技を前提としています。
同社の開発担当者を取材すると「マシン開発は順調で、フォーミュラEと同様の高速走行によるパフォーマンスは可能」というものの、新型コロナ感染症拡大の影響もありレースのシリーズ化には至っていない状況です。
日本では、自動運転など次世代車開発の技術者を育成する目的で、自動車メーカーなど自動車業界の学会である公益社団法人 自動車技術会が「自動運転AIチャレンジ」を実施しています。こちらも、ソフトウェアのプログラミングによる競技となります。
第一回は2019年に東京大学柏キャンパス内で低速走行のゴルフカートをベースとした実車によって争いましたが、コロナ禍の2020年第二回大会は、競技、審査、そして表彰式までもオンラインでおこないました。
こうした学術的または商業的な観点での自動運転車レースは、構想を含めて世界各地に存在するのですが、そうしたなかでインディ・オートノーマス・チャレンジは、走行速度の高さで他を圧倒することになりそうです。
主催者が示すルールによると、実車による予選では、10周の平均速度は最低時速100マイル(時速160km)以上、さらに20周の決勝では平均速度は最低時速120マイル(時速192km)と規定されています。
ただし、前述のようにマシン性能としては最高時速300km超も可能なのですから、果たして優勝チームはどれほどのスピードまで達することができるのでしょうか。
むろん、スピードが上がれば、空力の影響も増えることで操縦安定性を維持することは難しくなりますし、また一般的なサーキットと違いオーバルコースはコース外側にセーフティゾーンがなく、クラッシュするとコンクリートウォールに一撃という大きなリスクがあります。
2021年10月23日の決勝が、いったいどのような光景になるのか、不安を感じる一方で若い世代の挑戦に対する世界からの大きな期待も膨らみます。
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みんなのコメント
AIの走りが楽しみです。(悪い意味で)