15代目となる新型のクラウンが発表となって1か月、デビュー当初は驚かされたクラウンクロスオーバーのデザインも、時間が経つとともに、徐々に受け入れられ、むしろ新たなチャレンジをしたことで、歓迎されているようにも思う。
「クロスオーバー」モデルは、2000年以降によくみかけるようになった。特に、SUVと乗用車を掛け合わせたクロスオーバーSUVはこれまで、数多く登場しており、流行に乗ってよく売れたモデルもたくさんあるが、なかには失敗に終わってしまったモデルもある。
「いい」だけじゃ売れない!! 新型クラウンはどうなる!?? クロスオーバーで成功したクルマと失敗したクルマ
クロスオーバーとして成功したモデル、失敗したモデルについて、振り返ってみたいと思う。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA
成功の代表例は「ハリアー」
国内で成功したクロスオーバーSUVの代表例は、トヨタ「ハリアー」だろう。現行モデルは、2020年6月に登場した4代目。その年の登録台数は66,067台、2021年は74,575台、2022年は7月末時点で23,930台。コロナ禍による材料不足の影響で、車両生産は本調子とはいかなかったはずだが、ミドルクラスSUVの中ではダントツ売れている。
日本で乗るには適切なボディサイズ、ワイルドなRAV4のデザインとは真逆の都会派デザイン、滑らかで快適な乗り心地など、非を打つところがない完成度だ。トヨタが日本市場で求められるクロスオーバーSUV像を研究し尽くして具現化したベストなクロスオーバーSUVといえる。
それに対抗したのが、「タフギア」がキャッチコピーの日産「エクストレイル」だ。最新型は2022年7月に登場した4代目。まだデビューしたてのモデルだが、2014年にデビューした先代である3代目エクストレイルは、毎年5万台以上の登録台数を築き上げた大ヒットモデルで、2018年には国内4WD SUVランキングで第1位を獲得している。プロパイロットをはじめとした先進装備と、タフギアと都会派SUVテイストが融合されたデザイン、高い走破性と、バランスが取れた一台であった。
比較的コンパクトなクロスオーバーSUVで大ヒットしたのがホンダ「ヴェゼル」だ。2013年12月にデビューした初代ヴェゼルは、翌2014年から2016年、そして2019年も、国内SUV登録台数で第一位を達成。スタイリシュなデザインと走りの良さ、そして、価格の安さによって、日本中で売れに売れた。現行である2代目にも、その人気は引き継がれているが、コロナ禍の影響で、上級グレードの「PLaY」は受注停止、通常モデルも納期は半年から一年待ちと、厳しい状況ではある。
2013年に登場した、初代ヴェゼル。ホンダが誇る大ヒットコンパクトカー「フィット」をベースに開発された、コンパクトSUVだ
また、ヴェゼルのライバルであるC-HRも大ヒットしたクロスオーバーSUVだ。2016年に登場したC-HRは、翌2017年には11万7299台を売り上げて登録台数第一位を達成、快進撃を続けていた初代ヴェゼルを食い止めた。クロスオーバーSUVでありながら、全高の低いボディと、強化された足回り、そして低燃費で、走りに大きく振ったことで人気となったC-HR。そろそろモデル末期だが、後継モデルは登場するのか、注目だ。
また、毎年のように改良が施され、絶えず進化を続けているCX-5も、月販平均2,000~3,000台を維持しており、国内マツダで最も売れている車種になっている。ガソリンとディーゼル、2WDと4WD、さらには6速ATと6速MTまで揃えており、選択肢が広い。なかでもディーゼルエンジンは、静かで快適な乗り味であり、ロングドライブには最適のクロスオーバーSUVだ。
失敗例は「スカイラインクロスオーバー」「CR-V」
反対に、(販売の面で)失敗したクロスオーバーSUVの代表例は、日産「スカイラインクロスオーバー」だろう。もともと、日産の北米向け高級車チャンネル「インフィニティ」のクロスオーバーSUV「EX35」として開発されたモデルである、スカイラインクロスオーバーは、ベースとなったV36型スカイラインよりも、さらにプレミアムを強調した路線となっており、素材にこだわったインテリアの質感は非常によく、走りも一級品。スカイライン譲りの走行性能で、非常に評価は高かった。
しかしながら、エンジンは燃費の悪い3.5LのV6のみ、後席や荷室は狭く、SUVとしての使い勝手に欠けていた。さらに価格は420万円以上と、「スカイライン」を求める顧客層が手の届く価格帯ではなく、いいモデルではあったが、販売は失敗に終わった。
また、ホンダ「CR-V(2016年登場の5代目)」も、日本市場ではほとんど売れていない。北米市場では、月販2万~3万台と好調なCR-Vだが、日本市場では2018年6月に返り咲いて以降、大苦戦。登場翌年以降は、月販1000台に届かない状況がつづいている。
CR-Vの弱点は、アメリカナイズされたボディサイズと、最安グレードでも336万円もする価格の高さだろう。先日、日本市場へは新型のSUV「ZR-V」が発表されたが、既に北米市場では、2022年7月にフルモデルチェンジをした6代目「CR-V」が発表されている。引き続き、CR-Vが導入されるのか、注目だ。
また、マツダ「MX-30」も、現時点、販売では「失敗」といわざるを得ない状況だ。他のCXシリーズとはやや毛色の違う優しいエクステリアデザインと、コルク材を用いたインテリア、そして観音開きのフリースタイルドアが特徴のMX-30。2021年1月にはマツダ初のバッテリーEV「MX-30 EV MODEL」も登場している。同一サイズで同価格帯、使い勝手のいい後席ヒンジドアをもつCX-30へと、顧客は流れてしまうのだろう。2022年は月販200台前後と低迷している状況だ。
「いいクルマ」だけでは売れない
今回、販売が振るわなかったとして挙げた3モデルは、いずれもクルマ自体の完成度は高かったものの、価格が高かった、というところが、最大のネックになっているようだ。特に、スカイラインクロスオーバーとCR-Vは、海外向けに開発したクルマを、無理やり日本仕様へ変更して販売しているためか、品質とコスパに世界一うるさいと言われている日本人には合わなかったのだろう。
クラウンクロスオーバーがどのくらい売れるのか、予想するのは難しいが、「販売のトヨタ」としては、名門「クラウン」で失敗することは、何としても避けなければならないところ。4車種に分けたことや、チャレンジングなエクステリアの反面、やや地味なインテリアなど、気になるところも多いが、平均年齢70代というクラウンの顧客層が、引き続き新型クラウンも購入してくれるのか、そして、新たな顧客を獲得することはできるのか、名門のチャレンジだけにその動向には引き続き注目だ。
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